39話
「お前を攻めるのは間違っているんだろうな。ただ操られていただけなんだから」
俺は金に物を言わせる剣を握って言った。
ブラックドラゴンはそんな俺にも臆さずに口からこれまでで最も巨大な炎を吐き出す。
「だが、お前を許すことはできない。解放されたあと、お前は俺の町を壊した。多くの人を傷つけた。そしてなにより――」
俺の剣はその炎を切り裂いた。
金に物を言わせる剣に切れないものはない。それは形のない炎でも同じだ。
そして、俺は――その剣を振り上げ、
「お前のためにかかった経費、合計1億とんで4万ゴールド、その体で弁済しやがれっ!」
ブラックドラゴンの眉間に突き刺した。
残りの力を、剣に力を込める。
剣が消えた。
1億ゴールドが僅か三分で消えた。
コスパ悪すぎるだろ――これでブラックドラゴンが倒せていなかったら――
俺はブラックドラゴンの目を見た。
一瞬――本当に一瞬だが、ブラックドラゴンが笑ったような気がした。
そして、その目から生気が失われた。
「死んだのか?」
次の瞬間、ブラックドラゴンの姿が消えた。
――インベントリへと収納することができた。
終わった――全部終わったのか。
残ったのは壊れた金庫と、ボロボロのキーゲン男爵の屋敷。
そして――ひとつの卵だった。
ダチョウの卵みたいな大きさの卵。
これは、まさか。
ブラックドラゴンの卵――転生したのか。
「ははっ、こいつは高く売れそうだ」
俺は目の前にある確かな生命の温かみを感じ、そう言って笑ったのだった。




