第7話 取り敢えず理性を
更新遅くなりました。すみません。今話もお読みいただきありがとうございます。
町の商店街で買い物を済ませたベリクは早速少女の治療に取り掛かることにした。
しかしこの少女、魔力暴走を引き起こした事により、魔法の治療ができなくなっている。
その理由が彼女自身が暴走時に喰い荒らした『門』によるものだ。
そもそも魔法で治療出来る条件がある。
一つが症状。
症状が外傷、および内傷、の内、体の自己再生機能が治せる範囲であることが前提としている。
その機能を促進させ、傷を癒す。
故に治せる範囲は大体、単純な骨折や内臓の小規模破損、擦り傷や切り傷といった再生することを前提の怪我、などにしか効果が無い。
もう一つが、『門』がある程度機能している事。
他者の治療は、主に相手の『門』に干渉して、相手の再生機能を促進させる。
つまり『門』が無いと、もしくは使えないと、効かないのが魔法での治療、巷で言う
『治療魔法』
である。
この子は先程と、取り扱い書に書いてあったおおよそ一年前の、合計二回の魔力暴走の所為で、『門』は全てズタズタに壊れて使い物にならなくなっていて、詰まる所『治療魔法』が使えない状態だった。
故に町で買い物、ー特に怪我や火傷などは薬に頼るしかないのでーをしてきたのだった。
自分の部屋のベットに少女を寝かせる。
「さて、さっそく始めますかっ。」
まず、外傷の治療から始める。
と言っても僕は医者では無い。故に体を洗浄することから入る、という所で、重大な事に気付いた。いかに自分が消耗しているか、知覚した、というか、消耗しているから気づかなかった事だが、
「彼女……女の子だった……」
当然のことだが治療するにあたって彼女の皮膚に、触らないといけない。
さて問題です!
彼女の怪我は全身に渡ります。
治療をするのはピチピチの少年です。
少年の理性はどうなるでしょう〜か?
答えは、バラバラに吹き飛ぶでしょう。
更に悪い(人によって"良い")事に彼女は痩せていながらも、身体つきがいいのだ。その事が余計に少年の理性を保つのを妨げていた。
(どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようドウシヨウーあああああああああああ治療しなくちゃするからでもそれは変態扱いされるいやそれは嫌だ嫌われるやだあああああああ〜〜〜どうしよう……)
思考がおかしくなっていく。特に脈絡がなくなっていく。
と同時に
(いい女がそこに寝てるゾ〜〜今ならなんでも出来るゾ〜〜。)悪魔が囁いてくる。
確か彼女は、今は痩せている上に顔まで怪我をしている。が、それでもとても、美人で、可愛くて、、愛らしくて、、、、、
(嫌われチャウヨ。)天使が冷静に呟く。
っは!?今僕は何をっ!伸ばしかけた手を素早く引っ込める。
(…危ない危ない。)
一人で勝手に葛藤していた僕だったが、名案を思いついた!(簡単なことです)
用意していたお湯と治療キット、これらを自分の、そして彼女の近くに置いてあるテーブルに乗せる。そこから、
「『解析』『操作系:水流操作』!」
二つの魔法を発動させる。
一つ目の『解析』は、習得するには時間のかかる魔法で、汎用性が高いものである。
効果は『対象(非生物に限られるが)の構成する物質の本質が見える』、というもの。しかしその対象を構成する物質が見えても、それに対する知識が無ければ分からずじまいになる、という融通の利かなさがネックで、更に複数同時の解析が難しい、地味極まり無い魔法で不人気魔法の栄冠を欲しいままにしている魔法の一つに数えられる代物だ。
二つ目の『操作系:水流操作』は物体を操作する魔法である、操作系。その中の水に関する操作を可能とする魔法が水流操作となっている。
この『操作系』は『解析』と違いとても簡単かつ低コストで発動出来る。そもそもこれが出来ないと魔法適正値が無いと言われるまでのものだ。
そして僕十八番、でもある。
温水と医療キットの塗り薬を空に浮かせる。小さな水滴が数珠繋ぎで並び部屋の中を神秘的な空間に仕立て上げる。彼女の着ているボディースーツは切れ切れの部分があるが、逆にそこ以外、つまり無事である部分は怪我は少ない。元が防御力の高い物だったのだろう。
今回はその切れ目を使い治療していく。
浮かした水滴を患部に運ぶ。先に温水で洗浄し、その後塗り薬を塗っていく。大変器用かつ回りくどい遣り方ではあるが、彼の理性を保つには効果的であった。
自分でも、
(気遣うトコそこかよっ!)
そう思うベリクであった。
それから彼女が目覚めるまで、丸一日を要した。
皆さんは年末をどうお過ごしでしょうか?自分は例年通り、ばたばたしています。来年もまたよろしくお願いします。良いお年をお迎えくださ〜い。