表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/12

第4話 救出

 



(……あまりのショックに、何も出来なかった…。)

 立ち上がりは、ベリクの言うほど遅くはなかった。しかしながら少々弱い復帰だったが。


 だが、返って冷静さを戻らせる事になるのは、皮肉も中々だった。


 改めて見ると、

 いや、改めて見ても、すごい威力だ。魔力抵抗に弱い草花は、萎れ始めている。(もっとも、墜落でそんなに残っていないが)


 さっき放った魔玉は綺麗さっぱり無くなったいるから、自分の魔力がどこまで通るか、分からない。

 そもそも、まともに戦えないんじゃ…

 思わずそんな考えが浮かぶ。


 が、しかしだ。

 暴走を始めてから観察して、違和感があった。


 魔力に放出の妖気に対し、


 …魔法が少ない。


 絶対値から比較すると、無いにも等しい。



 ……少し光明が見えてきたかも。

 よし、早速試すか…


 まず始めに腰差した二つある得物、ーそれは《魔銃(まじゅう)》と呼ばれる物ー その内の一つを素早く抜く。その動作には一片の無駄が省け、一瞬で終わる。当然だ。長きに渡り旅を共にした相棒だ。その動作中に装弾している弾をマガジンごと排出。攻撃弾はこの作業に向かないと、判断したからだ。


 そうしている間にも妖気を放出することによって彼女の体には多大な負荷がかかる。

 彼女の存在を受けて心の底に秘めていた決意が顕になった。

 悟ったからには彼女の救出が第一目標だ。必ずやらねば確かなものにすることだって…


 しかしそこで彼女の体が悲鳴を上げ出した。傷口から傷が広がり、血が滲み出した。

「っ!何をしている!考える前にっ!」

 やるんだ!!


 幾重のも魔法を展開する。妖気に魔法を散らされないようにするための対策用魔法陣も一瞬で構築した。

(やっぱり…か。魔法陣が無効化されなかった…)

 基本的に魔法陣は持続性があるが、魔力や物でガードしないと意外と簡単に壊れる。魔力にやられる事はないが、今みたいにわざとガードせず相手の魔法効力領域に描くのは、無意味になるはずだった。


 しかし、一向に無効化される気配はなかった。

 それはつまり、彼女が魔法陣の無効化の仕方、即ち魔法を展開できない


 これが違和感の正体だ。

 さっきからの強風や、彼女から飛び散る火の粉は、どちらかと言うと、周りが膨大な魔力に負けて魔法現象が起きている感じだった。


 こうなれば此方の一方戦闘だ。


 多重化した魔法陣は妖気だけでは破れない。むしろこちらの魔法陣の維持に協力してくれるほどだ。

 妖気や魔法現象は、こちらの魔法で押し退ける。

 まだ余裕はあるが、これは、魔法を放たれてないからで、あの魔力を魔法に変換された時は、もっと対応が大変だった。


 魔法陣の維持が確立したのを感じて、歩き出すと同時に銃を構える。撃つ弾は『魔弾(マジックバレット)』、計六発。

 ほぼ同時、並ぶように飛翔する六連星は、僕を囲む多重魔法陣を抜いた先、数メートルずつで、爆ける。爆ぜる事によって、魔法効力領域を無効化させる。

 この隙に距離を縮めようと歩みを早める。


 もう少し…

 あともう少しだけ…



 手を伸ばせば届きそうな距離に来た瞬間、

 妖気の出力が上がる。

「っう!何!?」

 同時に彼女の出血量も増える。

 くずくずしてると、どちらも…


(死にかねないっ!)

 根競べでは絶対に勝てない。

 だとすれば取るべき行動はただ一つ…

 覚悟を決めて最終フェーズに移行するため、彼女へと駆けた。



 その後の約1秒間は[バイス林]に置ける過去最高魔力濃度を遥かに超える魔力狂いに晒されて、許容範囲を超え、動植物の生態系を変化させる瞬間になった。










「ふうぅ〜〜…」

 疲れた。

 ぎりぎりだった、少しでも手元が狂えば、僕の方が無事でなかったかもしれない。とはいえ体の至る所に浅いが傷が無数にある。特に最後差し出した左手は見るも無惨だ。凄くイタイデス。周りも吹き曝しに会いぐちゃぐちゃに散乱している。



 …でも


「それでもこのくらい差し出したさ…」


 最後の一秒は最低限の防御以外全てを彼女の救出へ使った。魔弾を彼女周辺にばら撒き魔法陣を付与させる為に左手を伸ばした。

 その結果がこのザマだ。魔力も九割強使い果たした。ぐうぅ…。


 だけど最後触れる瞬間、彼女の妖気がさらに増した。恐らく本能で僕を止めようとしたからだが、単に出力が上がるだけでなく、こちらに向けて放っていた。魔法が使えない代わりの対処、

 だろうが、後コンマ一秒タイミングが遅かったら押し負けていた。

「魔法を覚えたらどうなんだろう、な…」

 そう言って視線を落とす。

 そこには、魔法陣によって魔力が安定したことによって力尽き、再び昏睡に至った少女の寝顔があった。


 この子の治療をしなくちゃいけない。これほどの進度だと薬が必要だ。

「よいしょッ!」

 景気良く声を上げ彼女を抱き上げる。

 奴隷生活で痩せて細くて軽い体は、それでもしっかりとその重さを、腕に伝える。


 その重さを受け止めて、ある決意とともに連れ立つ。



 最後の魔法陣が付与し終わり、倒れゆく彼女はまた、瞼を閉じた。その数瞬前に彼はしっかりと見た。

 真紅だった右眼が、魔力の流れが無くなったことで、瑠璃色に変わっていた事を。



 彼の予感は確信に変わりつつあった。




 あの『夢』に出てくる狐子と似通う所がある事。




 そして、彼女は右眼を魔力で色が変化する体質だと言う事。







 生まれて此の方十七年間探していた《探し人》。






 生まれつき不思議な『夢』を持ち、その『夢』に悩まされて、振り回される、


 ()()()()()



精霊種(フェアリーズ)

 だと言う事。


















ベリク:「とはいえ人違いかもしれない。しっかり裏を取らなきゃ、いかんな!!」

(コイツポンコツですね)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ