終結
魔獣を魔族に変更しました。
「社長のもとへと向かうから援護頼む!」
兵士達へ援護を頼みながら戦場を駆ける。
走りながら平行して戦場の砂鉄を回収していく。
大量の鉄の矢が降り注いだ戦場だ。砂鉄はたくさんある。
黒い砂嵐が巻き起こり、戦場を包み込んだ。
勢いよく拳を前に突き出すと砂鉄が小嵐となって魔剣を握り、喚いている子鬼達を切り刻む。
社長までの道は直線にして100m。距離は短いが邪魔が多い。
道中、できるだけたくさんの敵を巻き込むようにと砂鉄で大剣を四本作成。
磁力で浮いた大剣はくるくると俺の周りを回転させ近寄ってくる子鬼、逃げていく子鬼を切り裂いていく。
「アハハハ!」
前方から笑い声。
社長だ。
社長との合流を阻止するかのように豚の形をした兜をかぶった豚鬼が道を遮った。
綺麗に磨き上げられた斧槍の切っ先が光を反射した。
「ーーーッ!」
勢いよく振り下ろされた斧槍が俺を真っ二つに切り裂き、アスファルトを割った。
激痛が全身を襲うが、我慢。どうせすぐに直る。
不死者の不死性は回復力からくる。
多少の”切り傷”は怪我のうちに入らない。
だけど凍傷と火傷だけはかんべんな!
あの二つは傷が直るのに時間がかかるからな。
俺を殺したと思ったのか豚鬼は社長のほうへ向かいだした。
チャンスだ。
未だ形を保っている大剣を射出。
砂鉄は潤沢にある。どんどん使おう。
「ブモオオ!」
大剣があたる寸前、飛来物に気がついた豚鬼が体をひねり回避した。
殺りそこねたか……。
悪鬼が振り向き地面に寝転がっている俺に焦点を合わせる。
死んだ振り死んだ振り。
俺はまだ寝てますよーっと。
豚鬼は斧槍で俺を指しまわりの豚鬼、犬鬼、子鬼達に何かを命じた。
命じられた鬼達の魔武器の切っ先には術式陣が展開され光る。
兜を被っている豚鬼、奴は部隊長なのか?
すこし様子を伺いたいがこのままだと子鬼達の術式に串刺しにされる。
串刺しにされることはかまわないが服が駄目になる。すでに上着が真っ二つに裂かれているからこれ以上の衣服の損耗は避けたい。
反撃するか。
「吹き飛べ!【電磁砂鉄豪腕】!」
起き上がると同時に砂鉄で巨大な腕を作り出し一閃。
魔剣を振りかぶり術式を撃とうとしている子鬼達をはじき飛ばした。
巨椀にはじかれた衝撃でつぶれたトマトのように体液を撒き散らしながら大地に転がる子鬼に向かって鉄矢を投擲。とどめをさす。
部隊長がアスファルトを削りつつ斧槍の鋭い一撃を放ってきた。
体を回転させて回避。
砂鉄で再度大剣をつくり切りかかる。
大剣と斧槍が激突。金属音と共に紫電が散る。
電気を纏った大剣は打ち合うごとに大剣が溶け金属が雫を作った。
溶けた雫が部隊長の斧槍を伝い、積層甲冑に張り付き白煙をあげた。
溶けて固まった大剣を投げ捨て、社長から貰った長苦無に持ち変える。
今度は長苦無で斧槍と打ち合う。
ナイフを扱う要領で斧槍の突きや払いをさばいて行く。
敵の攻撃は堅実で槍さばきは熟練した戦士の動きだ。
俺は苦無に紫電を纏わせて部隊長の動きに対応する。
この長苦無はとても丈夫だ。電撃を纏わせても溶けない。
何度打ち合っても刃こぼれ一つ起こさない。
こんなものをポンとくれるとは社長も太っ腹だ。
あくまでも護身用と言っていたが十分メインとしてやっていける。
俺が今まで使っていたどの武器よりも魔力が通る。
術式の展開速度も上がっている。
コレなら多少無理してでもいけそうだ。
苦無を投げた。部隊長は避けたが背後にいる豚鬼に命中。分厚い胸板を突き破り絶命させる。
磁力で手元に引き寄せ再び射出。電磁加速した刃先が部隊長を狙う。
部隊長は横に跳んで回避。
回避の着地と同時に振られた斧槍の刃先には術式陣。弾丸が刃先から射出し俺の頭を狙う。
そのまま避けずに受け止める。
不死者の治癒能力の前では大抵の物理攻撃は無意味だ。
頭に着弾。
視界が一瞬暗くなるがすぐに回復。
手繰り寄せた苦無に術式を紡ぐ。
部隊長に向けた刃先に一粒の光球がともる。
光りから白光を放つ雷の蛇が出現し部隊長に襲い掛かった。
500万ボルトの電撃が豚鬼たちを襲う。
プラズマを起こし空気が赤熱する。
雷が斧槍をかすっただけで刃は溶解し液体となって地面に滴り落ちた。
部隊長は冷静に武器を手放し距離をとる。が、それは悪手だ。
さらにもう一度雷を放つ。
雷が部隊長の胸を直撃。一瞬にして鎧を貫き、肉を焼く。
焦げて黒ずんだ血を全身から流し部隊長は絶命。
周りの豚鬼たちも雷で焼却。
集団の核を潰したことにより集団は烏合の衆と化した。
社長の下へと急いで走る。
社長は積み上げられた鬼達の上で休んでいた。
「おぉ、ミチヒデ!見ていたぞ。なかなかやるじゃん」
「社長のくれた武器のおかげです」
そういうと社長は嬉しそうに頷いた。
「のこり5分で爆撃が開始されるようです」
「なるほど。私のことは気にせず爆撃してくれ。まだやる事があるからな」
「何をやるんだ?」
「重層領域の入り口を壊す」
「乗り込んで殲滅はしないのか?」
「やだよめんどくさい。入り口を潰せば乗り込んでこれなくなるんだからそれでいいんだよ」
社長は死体の山から立ち上がり何も無い空間を殴った。
二発、三発と打撃を重ねるたびに透明な破片が宙を舞う。
「私の魔法は『破壊』だ。ありとあらゆるものを破壊できる。認識できる物に限るがな」
社長の腰に下げられている脇差が淡く光り輝いていた。
殴るたびにその輝きが強くなっていく。
「お前に上げた苦無や私の持つ刀には特殊な魔術式が封入されている」
俺の視線を感じたのか社長がそう教えてくれた。
俺に上げた苦無にも術式があるのか。
「お前の苦無には『無音』という術式が込められている。自分が起こす音を無くす。ただそれだけの術式だが轟音轟く雷術式をあつかうお前にはきっといい効果になるはずだ。発動キーワードは『音無しさんは今日も静か』だ。『おしゃべり開始』で効果をオフにできる」
「音無しさんは今日も静か」
そう言ってためしに雷を出してみる。いまだ動揺している豚鬼たちの頭めがけて雷をドーン!
確かに音がしない。
「気に入ったか?」
「―――――――(気に入りました)」
効果が発動しているからか声が出ない。
社長は苦笑いしている。
社長の拳が殴っていた空間にガラスが割れた後のような大きな亀裂が走った。
向こう側に広がる光景を見て愕然とした。
入り口の近くを埋め尽くす子鬼、犬鬼、豚鬼の群れが目を光らせて俺を見ていた。
なるほど確かにこの量はめんどうだ。
今、出てる分でもいっぱいいっぱいなのにこれ以上の量が来たらとても耐えられないだろう。
それは、俺だけじゃなくて兵士達にも言えることだろう。
「これで、お仕舞い!」
社長の気合入りの一撃で入り口が完全に破壊された。砕けた空間を補填するかのように靄が亀裂を埋めていった。
「さて、五分たったな。」
上を見れば鏃のような形をした戦闘機が編隊を組んで飛んでいた。
「近くに寄れ」
「はい」
戦闘機から光弾が降り注いだ。
光りだと思っていたのは巨大な金属の槍。
シャワーのように金属の雨が降り注ぐ。
槍は豚鬼の頭を吹き飛ばし、犬鬼を大地に縫いとめた。
高高度で展開された術式陣が星の輝きに見える。
何千本もの槍が墓標のように地面に突き立った。