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自己紹介

前話ちょっと編集しました。

 「採用」


 その声で俺は我に返った。

 目の前には物を言わなくなった竜の死骸。

 熱せられて生じた風が頬を撫でた。

 

 『ミチヒデ、聞いていますか?』

 「あぁ、聞いてる聞いてる」

 『じゃあ顔を上げてください。先ほどの女性が来ていますよ』

 

 振り返ると女が歩いてくるのが見えた

 女は手を差し出して自己紹介を始める。


  

 「私の名前は伏姫。歓迎しよう。ようこそ我が魔術結社へ」

 「魔術結社?」

 「会社のようなものだ。たびたび現れる魔獣を討伐し、金を得る」

 「傭兵のようなものか」

 「まぁそうだな」


 なるほど。さっき言っていた入社試験とはある程度の武力を示すために必要だったわけだな。


 納得。


 とりあえず死骸から取れる物資は全て取っておこう。

 まずは角…折れているがまぁいいか。

 牙。これもぐちゃぐちゃだが大丈夫大丈夫。

 心臓。若い固体のせいか小さい。

 甲殻と爪は全て剥ぐ。魔獣の中でも竜は捨てる所がないからいい獲物だ。

 


 竜の戦闘に使われる硬い部分はドラグタイトという金属で出来ている。

 この金属は魔力伝導率が非常に高く戦闘において大きな助けとなる。

 少なくとも俺が前にいた世界では重要な金属だった。

 

 竜は巨大な魔力をその身に宿し、扱うことに長けている種族だ。

 角と爪で獲物を捕らえ強力なブレスでなぎ払う。

 

 術式構築も非常に早く、長く生き、老成した竜ほど強い。

 今回は若い竜だったから良かった。

 

 


 「剥ぎ取りは終ったか?」

 「終ったよ」

 「んじゃあついて来い」


 ついていった先には一台の車が停まっていた。

 四輪駆動のバギーがアイドリング状態で低いエンジン音を鳴らしている。

 車の後部座席に乗り込んだのを確認して前に発進。

 車の中で伏姫社長が振り向き言った。


 「自己紹介の途中だったなお前ら二人(・・)の」

 「俺の名前は菅原道秀。雷使いだ。んでコッチが”イナバ”だ」


 俺が差し出した端末の画面には兎のアバターが狭い画面の中を跳ね回っていた。

 兎はは跳ね回ることを止めぺこりとお辞儀をして自己紹介を兼ねた挨拶を行う。

 

 『初めまして。私の名前はイナバといいます。種族は電子妖精です。』

 「電子妖精?」

 『自我を獲得したAIです』

 「何ができる?」

 『事務仕事なら任せてください』

 「なるほど了解した。お前には事務を任せるとしよう」

 

 「私の隣で運転しているのがアヤサキ・ロッカだ。お前の先輩にあたる」

 「ロッカよ。種族は鬼。よろしくね」

 「菅原道秀です。よろしくお願いしますロッカ先輩」

 

 自己紹介が終わり車の中が静かになった。

 ロッカ先輩は車の運転に集中し、伏姫社長は弾丸を取り出してにやにやと笑っていた。



 さっきからずっと笑ってるなこの人…。

 

 「お前は竜と戦うのが初めてではないな?」


 弾丸を中に浮かべ人差し指を中心に回転させながら社長が聞いてきた。 


 「なぜそう思ったんです?」

 「ブレスを警戒し、対処法も知っていたからな。」

 

 ブレスは強力な攻撃だが対処法は簡単だ。何か別のもので口をふさげばいい。

 いつもなら雷を口にぶち込み内臓を焼いて終わりだが、今回はそれができなかった。


 「でもあんな力技を取らなくてもいけたはずだ。魔術を行使する武器はどうした?」

 「あー…全部壊れちゃいました」 


 魔術を行うにはそれ専用の器具が必要だ。

 

 魔術式を保持する柄、柄に紡がれた術式を宝珠が暗号化し、暗号化した術式を刀身が増幅させる。


 これらの一連の要素を含んだ武器のことを魔武器という。

  

 俺は手持ちの魔武器をすべて失っていた。

 だから強力な雷を撃つことができず手持ちの砂鉄を動かして戦った。

 

 その砂鉄も竜のブレスのおかげで大半が使い物にならなくなってしまったからどうにか集めないと。

 

 「確かに俺は竜と、魔獣と戦うのは初めてじゃありません。故郷で何十匹と戦っていました。」

 頑張って戦ったんだけど滅びちゃったんだけどね。


 「お前、前の世界では何してたんだ?」

 「戦士を、していました。右をみても左を見ても敵ばかりで、非戦闘民を守りつつ竜をぶん殴っていた」

 「敬語は使わなくていいぞ。私達はもう仲間なんだからな」

 「わかりまし、わかった」

 「竜に肩を抉られたとき、瞬時に再生してたがあの回復力は大体いつごろ身に着けた?」

 「それは―」


 信じてもらえるだろうか。

 俺は1度死んで、生き返ったときに身に着いていた。などと。

 前の世界では恐れられたこの力、この世界でも恐れられるのだろうか。

  

 「もしかしてだけどさ、お前、1度死んでる?」

 「えっ、あっはい。死んでます」


 思わず返事を返してしまった。


 『ミチヒデ、』

 「あぁ、分かってる」

 『信じてもらえるか心配ですが正直に話しましょう』


 そんな俺達の心配をよそに伏姫は楽しそうに笑っていた。 


 「やっぱりなーそう思ったんだよー術式を使わずに傷口を治癒するなんてマネが出来る奴はそうそういないからな!この世界ではそういった存在のことを不死者と呼ぶ。」

 

 不死者を拾うとはなかなかに運がいいな!と笑う伏姫社長。

 前の世界では恐れられたこの体質もこの世界では”便利なもの”扱いなのか。ちょっと安心した。

 

 不死者…と、言うのか。

 故郷では俺以外にそんな存在はいなかったから名前なんて知らなかった。

 

 「不死者とは一度死んで、何らかの要因で生き返った者達のことをいう。21gの魂を失い、それでもなお動き続ける。獲得した強靭な再生能力はそれだけで定命者の脅威だ。」


 たしかに俺は頭を吹き飛ばされようが熱光線を浴びて炭化しようが数十秒後には元気に動き回っていた。


 「不死者になった時、一つ、魔法を手に入れたはずだ。魔法とは魔術で再現できない固有能力を得たはずだ」

 『死んだ後と死ぬ前で変わったことって何かありますか?』


 変わったこと……。


 「雷が白い輝きを放つようになりましたね」

 「雷が白く……ちょっと出してみろ」


 両手を出し雷を出す。

 指と指の間をバチバチと白雷が通る。


 その雷に向かって社長は無造作に手を突っ込んだ。

 

 「あっちょっと、危ないですよ!」

 「平気平気。ふむふむ。うーん?もうちょっと強く出来ないか?」

 「OK。こんな感じですか?」


 白い輝きが強くなる。両手間に走る雷の出す音もよりいっそう激しくなった。

 

 「あー…うん。分かったぞ。お前が何の魔法を得たのか」

 「そんな簡単に分かるものなのか?」

 「私の魔法と分野が同じだからな。お前の魔法は【裁きの雷】という。魔法としては比較的ポピュラーな部類だ。」

 「具体的にはどんな能力なんです?」

 「雷に”破壊属性”がつく。破壊属性は便利だぞ。よかったな」


 具体的にどんなことが出来るのか知りたいんだが…。

 

 『前の世界で道秀様の雷は竜の鱗を砕いたりブレスに穴を空けたりと大変活躍してましたよね』

 「なるほど、”破壊”か!」

 「”当たったものを破壊する”そう考えてくれてかまわない」


 なるほどなー。

 まぁたしかに困ったときにはすぐ雷をだして敵を蹴散らしていたな俺。

 

 雷はいい。

 早いし派手だ。轟く雷鳴も腹に響いてぐっとくる。 

 土壁等、硬い物質には弱いが生物には抜群に効果がある。

 仮に硬い甲殻を身に纏っていても砂鉄で殴り壊せばいい。 


 「目的地はどこなんです?」

 「ニュートーキョーって場所だ。ココからだと半日くらいかかるな」

  

 半日かぁ。


 『半日も車の上だと暇ですねぇ』

 「お前に暇を感じる機能ってあったっけ?」

 『必要とならば作成します』


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