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猫は魔女に魅入られた

作者: あめんぼ

ホラー企画に参加して書いた短編です、怖いかどうかわかりませんが……暇つぶし程度にどうぞ。

――俺はとある新聞社で働いているカメラマンだ……。


オカルト系の雑誌のページに乗せる廃墟などの写真を撮っている。

俺は正直こういうものを信じないタイプだ、信じる方が馬鹿馬鹿しいと思うしこういうのを信じて買うやつは物好きだなとは思う。


でもそれで食っていけるなら、それはそれでいいとは思った。


ある日の事だった……。


「デヴィット君、廃園になった遊園地を知っているかい?」


編集長に呼び出されると編集長はそう俺に問いかけてきた、俺は正直に「噂だけは」と答えた。


「あそこのドリームキャッスルには隠し部屋に拷問部屋があるって噂があるんだって……」


遠回しに俺に確認して来いってことなんだろう、人使いが荒くて困ったもんだ。

だが俺は雇われている廃墟及び心霊カメラマン、断る訳にもいかなかった。


「分かりました、行ってきます」

「いい写真を頼むよ♪」


両省の返事を俺が返すと編集長はご機嫌にそう返事を返してきた、まったく呑気なもんだ……。


――数時間後、


「一体そこで何があるんだろうねぇ」


俺はしぶしぶその廃墟になっている遊園地に行くことになった。廃園になった遊園地はもちろん立ち入り禁止になっている、だが無茶ぶりされたとはいえ大きな仕事だし行かない訳にもいかなかった。


しかしそこには不思議な雰囲気をまとった少女がいた。


「んだぁ? お嬢ちゃん……ここは君みたいな子供が来ていい場所じゃねえんだぞ?」


俺は少女を追っ払おうとしたが少女は一向に去る気配がなかった、そして少女は口を開き……、


「伯父さん何処に向かおうとしているの、止めた方がいいよ?」


忠告のつもりなのだろうか。意味深な言葉で少女は俺に行くことを止めるように言ってくる。


「おじさんは仕事なんだ、邪魔しないでくれ」


俺はその少女の言葉を鬱陶しく思い、忠告を無視して立ち入り禁止のテープをくぐって噂の遊園地のドリームキャッスルに向かった。


ドリームキャッスルは廃れてはいるがまだ現状は維持したまま残っている。

薄気味悪い雰囲気に固唾をのみつつも俺はドリームキャッスルに入ることにした。


扉は鍵を掛けられてるかと思ったがすぐ開き、戸が開いたまま中に入ると……、


――バタン!


「――!?」


急に出入り口のドアが閉められ、俺は開けようとするがドアは一向に開かない。


――ドンドン!


「おい! 君か……!? 変な悪ふざけは止めろよ!!」


俺はてっきりあの少女が忠告を聞かなかった嫌がらせで閉じ込めたと思って怒鳴るようにドアを叩いたが、返事はない。


「まじかよ……」


不審には思ったが俺はその少女が嫌がらせでやったと思い込んだまま舌打ちしつつ、ドリームキャッスルの中を探索することにした。


「――てか、何で遊園地なんかに拷問部屋なんかあるんだっつの、可笑しいだろが」


ぶつぶつ文句を言いながら、俺はドリームキャッスルの中を探検する。


しかしどの部屋もこれと思わしきものはなかった、しかもカビやほこりの臭いが鼻について早くここから出たいとも思う。


「くそ……覚えてろ」


こんな無茶ぶりをした編集長の愚痴を言いながらも探索するがやはりそれらしきものはない。


――カタンカタンカタン


「――!?」


しかし、地下に続く階段から階段を下りるような音が鳴って不審に思って階段を覗いたがそこには誰もいない。気のせいかと思ったが、だがあの少女が俺の様子を見に来たのかもしれないと思ったし確かめてみようと思った。


それに、地下の探索はまだだったし、ちょうどいいと思った。


「おーい、お嬢ちゃんかい? さっきは悪かった、だからご機嫌治して俺を出してくれよ」


足音の正体があの少女だと思い込んでいた俺は、地下に続く階段を下りながら大声で少女に呼びかけるが地下は静まり返ったままで返事はない。


「あぁ、くそ……」


まだ怒っているのか、と俺は頭を掻き毟りながら地下へと降りて行く。


地下まで来ると部屋はいくつもあり、カビと埃の臭いが上の階よりより強くなって具合悪くなりそうだった。


「あーもう、なんだっつの……」


俺は文句を垂れながらも足音の正体を探ろうとする。


しかしめぼしいものは見つからない上に少女の姿は見当たらない。


「だぁー、くそ!!」


イライラして俺は古臭い木のテーブルを蹴って八つ当たりする。


しかし俺はふと壁を見ると何かの異変があることに気付いた、何もない棚で隠されているがちらっとドアのような物が見えた。


「…………」


俺はそのドアの正体が気になって棚を避けてドアを出したのだった、廃れていたことも物が置いていなかったこともあっていとも簡単に退けることが出来た。


ドアの雰囲気はいかにも怪しそうだった、ドアノブに触れて開けようとドアノブを見てみると血の跡のような物がべったりついているように見える。


最初は躊躇したが、ここで帰ってはせっかくの仕事に支障が出てしまう。


意を決してドアノブに触れると……


――ガッ!


「――!?」


血まみれの女の手が俺を掴んできた、俺は慌てて手を引っ込み女の正体を見ようとしたが何処にもいない。


――疲れているのか……?


そう思って改めてドアノブをひねって、ドアを開けた。


ドアを開けるとさらに地下に続いており、嫌な臭いもした。

意を決し、俺は懐中電灯を片手に下に降りて行く。


辺りを見渡してみると牢獄のようなところがずらりと並んで、鉄格子には血の跡のような物がべったりついている気がする。


さすがにここまでくると寒気がする……。


『あ……しは、ま……じゃな、い』


「……?」


牢獄の方から声が聞こえて俺はふと牢獄の方を見た、すると女が俺を見つけるなりこちらに寄ってきた。


「――!?」


女の容姿に俺は驚愕した、女は血まみれで性器が見えない顔だった。そして俺に縋るように鉄格子を握りしめ……


『あたしは“魔女”じゃないい――!!』


と泣きながら訴えてきた。


「ひっ、うっ、うああああ――!」


俺は叫んで逃げようとすると足を誰かに引っ張られ、ふと見てみると……


『ダシテ……』

『おねがい……』


俺に縋って来た女と同じような血まみれの女の手が俺の足を引っ張っていた。


「やっ、やめろおおお――!!」


女たちの手を片方の足で払い、すぐ近くにある部屋に逃げ込んだ。


「はぁっ、はぁっ……何なんだよこれ!!」


噂は本当だったのかと思い、俺は混乱する頭を整理しようとする。

しかし二元込んだ部屋を見て俺は驚愕した……。


「こっ、こいつは……」


底は広い部屋で西洋の拷問器具がたくさん並んでいた、拘束具や大きな車輪やら鉄の処女などが血に濡れてあちこちに設置してあるのだ。


「――っ」


俺はその部屋にいたくなくて逃げようとした、しかし……


『ぎゃああああ――っ』


「――!?」


女の苦痛の悲鳴があちこちに響いて来た、ここにいては気が狂いそうだ。

早く開けて逃げようとするがドアがなかなか開かない。


――カチャッ


「――ひぃ!!」


この地下から逃げようと必死で走った、ここにいてはいけない、ここに長居してはいけないと本能が言う。


写真なんてどうでもいい、編集長には申し訳ないがこの話はなかったことにしてもらおうと必死で出口のドアを捻ろうとしたが開く様子が一向にない。


「頼む、開いてくれよ……!!」


扉を叩いて訴えたり、体当たりしてドアを叩いていると……


『どこに、いくの……?』


「――!?」


女の声が聞こえ俺は恐る恐る声がする方向を振り向くと……


『ニガサナイヨ……』


「うっ、うああああ――!」


あの女たちが俺の後ろにいた、行かなきゃよかったなんて言ってももう遅かった。



外にはデヴィットに忠告した少女がドリームキャッスルの前に立って、ため息をついていた。


そして少女はある家に向かう、そこにはロッキングチェアに座った老婆が編み物をしていた。


「お祖母ちゃん、カメラマンがさっきあの廃園になった遊園地に入ってあの女幽霊たちに魅入られちゃった」


少女は老婆にデヴィットが女幽霊たちに魅入られたことを報告する。


「あそこは駄目だって言ってあげないと……」

「忠告しようとしたけど最後まで聞かないんだもの、馬鹿なお兄ちゃんだわ」


老婆は忠告してあげなかったからだと言うと少女はその前に忠告しようとしたがデヴィットが最後まで話を聞こうとしなかったのが悪いと弁解する。


その弁解に老婆は「おや、そうかい」と納得する。


「あそこは昔、魔女裁判で魔女と理不尽に断定されて拷問死した女の幽霊で一杯だと言うのにねえ……園長もあの女幽霊たちに呪われて体調を崩して廃園にまで追い込まれたってのに……」


老婆は最後まで忠告を聞かなかったデヴィットにもさすがに呆れた顔をしてあのドリームキャッスルの惨劇を明かす。


実はあのドリームキャッスルはまだ形が綺麗だった城を再利用して作られたものだったのだ、いわくつきだから残ったのに自分の忠告を聞いたものは誰もいなかった為老婆は悲しそうにため息をつく。


「あーあ、だから言ったのに行かない方がいいって。よく言うじゃない……“好奇心は猫を殺す”ってね」


少女の言葉が老婆のいた部屋に響いていた……。


END



たまにはバッドエンド物を……(笑)


この少女と老婆の正体やデヴィットがどうなったかは想像にお任せします、“好奇心は猫を殺す”という諺はイギリス発祥らしいですね。

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