第3話 初めまして!我が両親よ!
「…わいいなぁ…名前は…」
ぼんやりとする中で、誰かの声がボソボソと聞こえる。段々と意識が冴えてきた。
…あっ、そうだ!俺、今赤ん坊なんだ!
…まったくあの女神ったら、もう少し教えてくれたって良いじゃないか!
まあ、怒っていても仕方ない…
よし!新しい人生だ!頑張って生きてやるぜ!
うん。まずは、新しい両親に会いたいな。何せ、これから世話になるんだから、今後が決まると言っても過言ではない!
新しい両親はどんな人かなぁ~!
優しい人だったら嬉しいなぁ!
期待に胸を踊らせて、目を開ける。
「ほぅ…」
思わずため息が漏れた。
「あ、目が覚めたみたいよ!」
母親のヘルガさんは、30代前半くらいだ。とびきり美しいというわけでもないが、それなりに顔は良かった。
そこはかとない母性が感じられた。まるで、聖母マリアの様な優しさが溢れている。
「本当だ!ああ、可愛いなぁ」
こっちは父親のグランさんか。年は、母親と同じくらいだろう。しかし、それでいて貫禄がある。民衆の先頭に立って、引っ張っていけるようなイメージだ。
さすがは貴族なだけあるなぁ。
父親も、負けず劣らず優しさが溢れて出ている。
「可愛いなぁ」
「貴方、さっきから可愛いしか言ってないじゃない」
「だってこの子を可愛い、としか言い表せる言葉がないんだよ」
「まあ、確かにそうね」
そう言って、俺を見て二人は微笑んだ。
…うん。良い両親に出会えて良かった。
なんか、感動したよ…
そして、今いうことではないのかもしれないけど、一番感動したことがある。
アイリスは言った。俺の作った小説の設定を基にした、と。
小説の設定は、3次元での生活を基にして作ったが、その世界を表す手段は2次元である。そしてもちろん、俺も2次元のヒロイン達を作りたかった訳で…
ここまで言ったら、もう分かるだろ?
…そうだよ!長年のオタクの夢が叶ったんだよ!
2次元だ!この世界は、2次元なんだ!
よぉぉぉぉっしゃぁぁぁぁ!!!!
俺、真面目に生きて頑張ってやるぜ!
ふぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!
…しかし、俺の名前はどうなったんだ?
気になって仕方がないんだが。
普通に聞くとするか…
「これで、2人目の子供ね…」
「ああ、ラガルもお兄ちゃんになったって喜んでいたよ」
「フフフ、あの子も4歳だけど、とてもしっかり者だもの。きっといいお兄ちゃんになれるわ。」
「この子も、お兄ちゃんみたいになるだろうね」
「あのー、僕の名前って、なんていうんですか?」
「えっ?あら、ごめんなさいね。まだ教えてなかったかしら。貴方の名前は、アズベル」
「僕達の2人目の息子だよ」
微笑みながら、質問に答えた二人は、
その後、そのまま固まってしまった。
あっ!
…しまったぁぁぁ!!!二次元という事実に浮かれすぎて、冷静な判断ができなかった!クソがぁぁ!!
「お、おい!ヘルガ!」
「え、ええ!貴方!今、この子喋ったわ!」
「いや、喋るどころじゃないだろう!普通に会話が成り立っていたぞ!?」
「ちょっと!シルフィ、急いで来て!」
やべぇ。何とかしてこの場を収めないと!メイド長まで呼ばれたら、余計にややこしくなる!
え、え、えーと!!
「あ、あのー、落ち着いて下さい。これから、宜しくお願いします、お父さん、お母さん。だから、取り敢えず落ち着いて!」
「なっ?!は、は、ははは…」
「貴方ぁー!大変だわ!グランが気絶しちゃったわ!早く、シルフィ来て!」
あっ!ブッフォォォ!!
…あー、本気で終わったちゃったわー。
これからどうなるんだろ、俺。