第2話 初めての女神
「頼み事を聞いてくれてありがとう。」
…あれ?俺、死んだんじゃなかったのか?
俺は、真っ暗闇の中にいた。
「あれ?聞こえてないのかな?」
そういえば、地面にぶつかる時に、一切痛みを感じなかったなぁ。
「ねぇ、起きてるんでしょ?」
もしかしたら、意識だけが、どこかへ飛んでいったのかもしれない。
「ねぇ、ねぇ、聞こえてるんでしょ?」
ラノベでは、「ねぇ」この後、神様にあって「ねぇ」異世界にチートスキルとともに「ねぇ」転生、っていうの「ねえってば!」が一般的だけど、「いーかげん、返事しーてーよー!!ねぇ。ねぇ。ねぇ。ねぇ」…まさかね。
「だー!うるっさい!いったいさっきから誰だよ!?こっちは突然のことでびっくりしてるんだよ!!」
「あっ!やっと返事してくれたー!まったく、いつまでたっても反応がないから、聞こえてないのかと思ってたよ-。」
「あー、ごめんなさい。てか、誰だよ!?」
「やだなー、この姿を見てまだ分かんないの?」
姿?相変わらず周りは真っ暗闇で、何も見えやしない。
「いや、暗くて何も見えないんだが。」「えっ?あっちゃー。ごめんねー。そういえば、灯りをまだつけていなかったよ。」
いや馬鹿ですか?
「うーん、どうせなら僕達と同じように暗いところでも見えるようにしてあげるよ。」
「は?おい、お前何言ってんだよ!」
いきなり、光が満ちてきた。
「っ?!」
目をとっさに瞑り、ゆっくりと開いてゆく。
そこには、肌は透き通るように白く、グラビアアイドル顔負けの身体をした、美少女がいた。
…胸はある!決して幼女ではない!
そう!例えるならば、ロリ巨乳だ!
「僕は女神だよ。名前はアイリス。よろしくね。」
ラノベのテンプレ展開来たんじゃない?
しかも僕っ娘ってヤバいわー。
◆◆◆
「お礼を言わせて貰うよ。僕の頼みを聞いてくれてありがとう。」
「あー、いや礼なんていいよ。それより、
頼みごとって何なんだ?」
勇者として転生してほしいとか?
それとも、他に何かあるのか?
どうあるにしても、早く言って欲しい。
女子との関係を限りなく絶ってきた俺は、こんな会話だけでも久しぶりなんだ。しかも、美少女だなんて…
俺のリビドーが荒れ狂っているぜ…
「うん。その事なんだけど…まあ、まずは世界の出来方について教えるよ。」
説明が来てしまった!やばいぞ!
俺の超電磁砲よ!抑えるんだ!
アイリス曰く、
「僕達神々は、何も無い場所から独りでに生まれるんだ。そして、それと同時に新しい世界が創られるんだよ。」
そして、
「僕達はその出来た世界を管理するのが仕事なんだ。出来たばかりの世界はまだグチャグチャだから、最初の頃に自由に創り上げていく。」
とのこと。
「…僕はそんな風には言わないよ…」
アイリスが俺に近づいてジト眼で睨んできた。
どうも、俺がアイリスの真似をしたのが、しゃくに障ったらしい。
「へっ?俺、何か言ってた?」
「声に思いっ切り出てたよ…」
マジかよ!で、でも!
可愛い!少し怒った女神も良い!
しかも、アイリスの方が背が低いから、睨まれる時に胸元が丸見えになるのだ。
あぁ!「隊長!超電磁砲への電力供給が完了しました!」ヤバいぞ!
「あ…ああ、悪かったな」
照れて、胸元から目を背けながら謝る。
「もう!ちゃんと目を見て謝ってよ!」
そう言って、アイリスは俺の頬に手を当て、目を合わせてきた。
あぁ!クッソ!なんなんだよ、この女神は!女神が全員こうなのか?
エロすぎるだろ!
「ふぇ、ご、ごめんなさい…」
「分かれば良いんだよ。僕は優しいからね!」
そう言い、胸を張るアイリス。元々目立つモノがこれでもかと、自己主張している。いや、し過ぎている。
もう、終わりだ…俺の負けだ…
マイレールガンよ、好きに暴れるが良い!うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
「そんなことより、本題に入るよ。君には、君の書いた小説の設定を基にして創られた、この世界の創造主になって欲しいんだ。」
うぉぉぉぉお、お、お…え?
「なんて?もっかい言ってくれ」
「だから、君には僕の世界の創造主になって欲しいんだよ。」
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!
暴発寸前の超電磁砲が動きを止めた。
「な、なんで俺が?!いや、そもそも俺の書いた小説の設定!?なんで…なんでそんな事お前が知ってるんだよ!後…」
「まあまあ、気持ちは分かるけど落ち着いて。詳しく説明するから。」
◆◆◆
アイリスの説明を聞いて、分かった事をまとめると、
・世界は神の誕生と共に創られる
・新しい世界は同じ時に生まれた神が管理する
・新しい世界は神が最初の頃に自由に創り上げる事ができる
・他の世界から一人を創造主として選び、神は自分の世界を安定させる役目を与える。
と、いったところだ。
そして、どうして俺が選ばれたかというと…
遥か昔から生命体の記憶は、神々の中で俺の世界で言う、小説と同じ様なモノであった。
そして、俺の記憶を読んでいたアイリスは小説の設定を見て、ちょうど自分の世界の設定に困っていた所だったので、モロパクリする事にした。
そして、創造主を選ぼうとするのだが、俺の記憶からパクったので、もちろん俺を任命する事にした。
ということらしい。
「なるほどな…」
「分かってくれたみたいだね」
「ああ。前世ではマトモな人生すら送れなかったからな。せっかく与えられたチャンスなんだ。しっかりモノにしてやる!」
「良い心構えだね!その調子だよ!」
意気込みはバッチリなんだが、俺はどんな風にしてその世界へ行くんだ?
転生か?召喚か?
「あのさ、アイリス。俺ってどうやってその世界へ行くんだ?」
「あー。その説明がまだだったね。君は普通に赤ん坊として転生するんだ。ちなみに、君の父親はマルトス王国の貴族で、名をグラン・フォスター。母親は、有名な魔術師の家系の出で、名をヘルガというよ。あ、後、言語理解についてなんだけど、僕の力で強制的に解決しておいたから大丈夫だよ。」
「ほぅ…そうなのか。あ、そうだ!特殊能力とかはないのか?俺Tueee系のやつとか!」
やっぱり転生といえば、だいたい最強の能力とかがあるだろ?
「うーん、今は無いなあ。まあ、子供の頃は特に頼むこともないから、好きにしていいよ。頃合いになったらこっちから話し掛けるから!」
「な、無いだって?!いや、ちょっと待…」
「まあ、細かいことは大丈夫だから。取り敢えず、新しい人生へレッツゴーだよ!」
「え、おい!アイリス!」
叫びも虚しく、俺の意識は遠のいていった。