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妖精の森のリューン  作者: YOH.
1/9

プロローグ

 降りしきる雨の中を、彼らは村に帰って来た。

 誰もが無言だった。帰って来た者も、それを迎える者も。

 重苦しい空気が周囲を包んでいた。

 部隊の先頭に立っていた戦士は、絞り出すような声で報告をする。

「被害は戦死者5名、重傷4名、軽傷3名……」

 事務的に報告すると、また戦士は沈黙する。

「御苦労だった。ゆっくり休んでくれ」

 出迎えにでた初老の士官(おそらく司令官なのだろう)は戦士に労いの言葉をかけ、そしてゆっくり、無言の帰還をした5名の戦士の亡骸(なきがら)を見つめる。

「まさか、ゲイルまで……」

「ゲイル隊長は撤退の最中に敵の毒矢を背中に受け、それがもとで……」

 老人の視線は5人の中でも特に立派な武装をしていた、銀髪の戦士の遺骸に注がれていた。

 立派なバスタードソードに上質の革鎧を着用しており、肩に付いていた腕章は彼が隊長であった事を示していた。

 その物言わぬ亡骸の傍らに少年が立ちすくんでいた。

 年の頃はまだ10才くらいと言ったところであろうか。足元に横たわる亡骸と同じ銀髪が、ふりしきる雨に濡れそぼっている。

 彼は矢を握り締めて、声も出さずに泣いていた。

 矢は先端が紫に変色している。恐らくは毒矢なのであろう。

「兄ちゃん……」

 少年の手に力が入り、握っていた矢が折れる。

「許さない……許さないぞ、エルフども……!」


 雨が振り続いていた。

 戦士達の死を、天が悲しんでいるかのようだった。


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