王子様とわたし
たった一人の心に決めた相手を、ずっと思い続ける。
どんな女の子も一度は夢に見るような、一途な恋物語。
「きっかちゃん、きっかちゃん」
わたしがそう呼ばれていたのは、もう随分と前のことに思う。
わたしが彼を「りょうちゃん」と呼んでいたのもそれと同じくらい前だ。
中学三年間着続けた見慣れた制服を横目に、今日から新しい制服に袖を通す。
今日から高校生。
りょうちゃんと呼ばれた彼は、ここ数年で遠く離れた世界の住人みたいに手の届かない存在になってしまった。
中学の頃と比べたら、幾分か丈の短くなったチェックのスカート。
紺のハイソックス
清潔感のある白シャツに、ベスト。その上からブレザーを羽織れば準備は完了だ。
昨日寝る前に散々どんなふうにしようか悩んだ髪形は結局いつものようにただ下ろしただけだ。
鏡を見れば、うかない顔の自分がうつっていた。
(美香みたいだったら良かったのに・・・)
「きっかー!美香ちゃん迎えに来たよー!」
下からママの大きな声が聞こえてきて、あたしは部屋を後にした。