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 世界はある一人の行いによって播種の過渡を辿った。

 天使や龍/竜、をはじめとした数多の架空の生物が人の想いの元に、願望、欲望、切望、希望そして業によってこの世に生を受け、ともに育み、暮らし、そして争った。

 そんな世界線の、その《片隅》でのお話。




 「死地に踏み込んでいるぞ」

 声の主、黒毛で艶のある猫が一匹、塀の上からこちらを睨んでいた。

 高校の正門を出る、隣には大学があって角を曲がると銀杏並木の大きな道と平行して車1台がやっと通れるせまい路地がまっすぐに伸びている。ここでやつらが襲ってきたとしたら……、彼はいつも妄想/夢想していた。

 しかし猫がしゃべるはずがなく、それは時々ある幻聴、妄想、突然異界の異形の生物が襲ってくることもなければ、猫はただの猫である。


 ――波のある草原を彼女のとろこまでたどり着くのは難しい。彼女が眼の届くところにいても一歩踏みだすと場面は変わり物語は続く。

 カレハナミ、サラを殺して彼に笑う。彼は僕を憎むでもなくただ泣き崩れた。

 珈琲と牛乳が混ざったらもとに戻すことはできない。僕の好きな君と僕の知らない男が混ざったら僕はもう君を好きではいられない。

 最近何度も同じ夢を見る。世界の片隅で僕と女の子が一緒に戦っている夢、女の子は消えて僕はそこから外の世界へと彼女を探しに冒険に出る夢、空を飛んでいる夢、そして……。

 目が覚めると虚しさと悲しさが込み上げて夢の詳細を思い出そうと必死に考えるけれど、どれもおぼろげで曖昧。今度はその夢の続きを考える、女の子は現実にいるのではないか、彼女を探そう。彼女に会う準備をいまからしておこう。

 本当に信じればそれが現実になる。ずっと思ってた意思の力があればどうにでもなると。

 世界は彼以前にはなかったかもしれない、波のように移ろいでいろいろな生命を作りだした。その物語はやさしい物語でそれを待ち望んでいたのに、たしかにやつらはやってきたけど。

 ――こんなはずではなかった。


 「おいでほら」差し伸べる手を一瞥して真っ黒な猫は走り去っていった。

 まっすぐの路地を出ると大きな幹線道路に突き当たる、右へ曲がって駅を目指す。遠くに煙が見えた。遠くから緊急車両の喧騒が鳴り響く、よく耳を澄ませる。その音は全方位から聞こえるようだった。

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