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≪D:mode それぞれの縁ある対象 ≫


状況は聞きました。

「他人」のAIが言うにはこのクエストにはキーアイテムと言うものがあって、

それを見つけ出しキャラクターに渡し、使用しなければクリアできないとか。

しかもそれは私にできればしてほしいというのです。

白い部屋。緑のソファーに座り込み、私は鼻で笑いました。

司馬というお爺ちゃんはボケが始まっていてこのゲームを解っていません。

AIの佐助も完全に連絡が不能状態です。

なんだか似たようなことを思い起こしながら、

私は鶴姫と名乗る司馬お爺ちゃんのAIに言いました。

「貴方を信用できません」

≪真穂さん!?≫

だってそうでしょう。

こうやって分断状態にされたプレイヤーは不安がって同じ役割のAIの言葉を

確かにうのみにしやすいでしょう。

でも、もしもこの通信不全が鶴姫とかいう人の仕業だとしたらどうだというのですか。

第一,

私は「他人」のためになにかするなんて自分にとって得にならない事、

ごめんです。

( どうかしましたか?お嬢様 )

尋ねてくるケイに私は平然と応えます。

「…キーアイテムがないとこのクエストクリアできないんですって」

(…そうですか。まぁ信ぴょう性はありますね。押されていますしそれに…)

「それに?」

(プレイヤーの負傷が起きています…前私が言った事を覚えていますよね)

ケイが言ったのはこのクエスト開始前。

たくさんの人が集まる場所は必ず思惑を巡らせたものが何か出来事を引き起こす。

だとしたら全員が集まるこの防衛クエストは絶好の仕掛ける機会です。

そこで選択を言われたのでした。

関わるか、傍観するか、どうしますかと。


私は傍観を選びました。それをケイは了承しました。


だから与六君と違って私はここにいて、物事を観測と指示だししかしないのです。

体感?迫力?そんなのなんだって言うのですか。

もうゲームはこりごりなんです。


早く終わりたい。

もういっそのことこんなゲーム消えてしまえばいいのに。


(わかりました。でもまぁ、ついでがてらに探してきて差し上げます。

では。視界共有はお切りになる方をおすすめしますね)


ケイの声は本当にいつも通りで、

まるで私のことなど欠片とも気を遣うことなどせず、

一方的に言い捨ててゆきました。

私はケイに言われるまでも無く、共有をオフにしました。


***


「…探してきますか」

ぼやいたあと、ケイは腰元の短刀を抜く。

それから塔の見張り台の柵を、身軽に飛び越えると、後は飛び降りて

どこかに行くような体勢になる。

「お前何するんだよ」

そのケイの腕を俺は掴む。

優男に腕の筋肉ががっちりしていた。

鬱陶しそうにケイはこちらを見ると、手早く説明した。

「このクエストきりがないので…キーアイテムがあるらしいのです。

それを探そうと思ってますが着き従ってくるのですか?与六君」

「だれが!お前なんぞに従うかよ」

「でしょ?あ、あと、一度助けましたがもう助ける気なんて私にはありません。

だからもしも気持ち悪いやつが襲いかかっても私、知りませんから。

不安でしたらトラントの傍にでもいたらどうでしょうか」

「…あぁ、そうだな。言われなくてもそうするよ」

と俺はケイから離れる。

が、次の瞬間、俺の身体は宙に抱えられていた。

驚いている間もなく、ケイは物見台から飛び降りる。

まて、10メートル以上あるし、着地地点は石畳だ。

「ぎょえぇぇぇぇぇぇぇえぇ」

「ははははははっははっ」

ふたつの異質な心情からくる叫び声が唱和された後、

華麗に着地したケイは面白そうに爆笑しながら、俺を解放する。

「ぎょ…って。くくくくっ、情けない…くくくっ」

「うっせぇよ!俺は絶叫系が大の苦手なんだよ」

ジェットコースターに乗った時とかの、

あの大きな巨大な斜面をゆっくり登る時なんか

絶対にどうして俺はこのジェットコースターなんかにのりたいと思ったんだろうって、

必ず後悔する男だった。

「そんなんじゃモテませんよ」

「お、男だってこわくてやばいもんだっていくらでもあるんだよ!!」

「私はなかったけどな」

「お前を苦手そうなやつは大勢いそうだよな」

と我ながら見事な返しで口答えしてやる。

すると、ケイは面白そうに笑いながら小刀を投げる。

それは真っ直ぐ俺の方に向かって来た。

眉間にあたると思ったら、突然足払いされて俺はこかされる。

起き上がったら俺の背後に、小刀が刺さった化粧面の蒼白い男が倒れ動きもしない。

「…助けてくれてんじゃねぇよ」

「きまぐれです。楽しい叫びを拝聴しましたので」

埃を払う仕草をして、ケイは「では」と走っていく。

その後ろ姿を、俺は呼びとめる。

「なんですか?」

と尋ねてくるので俺は特に別に目的も無く呼びとめたわけでもない。

でも素直に言うのが癪だから多分気分が悪くなるだろうと思う言い方でしか言えなかった。

「お前って案外良い奴か?」

「本気で言ってます?トラントがあぁなった原因は私作の仕掛けですよ」

思い出して、敵意が吹き荒れる。

睨みつけて「だよな」と乱暴に言い捨てると、俺はトラントの方へ走る。

「…ですよ、私は」

背後であいつは何か言ったような気がした。

でももう一度振り向く頃には、ケイの姿は全くさっぱりなくなっていた。


***


≪マリア、聞こえますか?≫

金髪の髪が泥と汗で汚れています。

その顔も汚れ、ただ眼だけが敵を厳しく見つめる眼光を保っています。

≪ケイさんについてください。彼、何か探すようですから≫

「探すって?…マスターの指示か」

指示と言っても今はただ真穂さんのことを「和子」と喜んでいるだけです。

あとは太郎を探しているくらいですか。

指示なんてありません。

けれども彼女は本当に上の命令しか受け付けないのです。

≪えぇ、ケイの追跡をとのことです≫

「了解…」

マリアはライフルをしまうと、マシンガンを手に砦の塀を降りました。

内側にもすでに侵入者が多く、それらを駆逐しながらもケイの姿を探します。

途中トラントを見かけました。

彼に声をかけ、どうするかと尋ねましたが「防衛と言われたので」と言い、

愚直なまでにトラントはその場を離れません。

無数の傷、血を流していますが尚も振るう剣を止めず、

その俊敏さも衰えません。

真の名も開かされていない本領発揮でもない状態にも関わらず、

それでもこの実力。騎士というクラスは伊達じゃないのでしょう。

マリアは残念そうに頷くと、ケイを探す為に走ります。

目星は着いている為、私は誘導します。右折左折、上へ。

もちろんマリアの前にはいくつもの敵が襲いかかって来ました。

爪がマリアの髪を薙ぎ、刃がマリアの肌を切り裂こうとします。

けれど鋭利などれもがマリアに触れる前に、彼女は敵の命を刈り取っていました。

銃が硝煙をのぼらせ、銃剣が敵の喉元を刺し貫きます。

噴き上げる紫色の血を浴びながらも、マリアは顔色一つ変えることない。

乙女と呼ぶにはあまりにも戦場慣れをしている様子。

≪…マリアは怖くないの?≫

「実に平和ボケした言葉ですね」

≪…えっ?≫

「怖いなんて言えなかった。退けば仲間の命が危ない。なれば殺す。それしかない」

銃の弾を詰め直し、自身の傷を適当な布で止血して止める。

厳しい顔色には本当に少女らしさなどなく、一人の戦士としてしか在りはしない。

壁を背に、彼女は走り抜けるルートの敵数を数え、その戦力を予測し、

対する攻撃を考えています。その繰り返し。

決して余念はなく、絶対に妥協も無い判断を続けていました。

「でもマスターは違う」

≪…えっ≫

「あれは、戦地に生き抜いた者の目をしてる…私と同じ」

言葉を切り、彼女は走る。

マシンガンを連射しながらその目標に近づき、敵の身体にぶつかる。

よろけもしない敵のその顎先に違うハンドガンを片手に引き金をひく。

弾が脳天から抜き抜け、その対象は倒れます。

他残像三体。

片方が槍をなげてきますが、その槍をハンドガンで撃ち返し、

地面に落とします。すかさず敵の足をマシンガンでうちぬくと、

屈む対象の頬から串刺しのように銃剣を抉り射しました。

弾がなくなったそうだからその銃はそのまま、火薬部位のところに、照準をあてて

背のショットガンで撃ち抜くと部品が飛び散り、魔物の口の中は銃の部位が散らばりました。

倒れると、次の対象はマリアの背から掴みかかって来ます。

両腕を塞がれますが、マリアはそのまま思いっきり地面を蹴り、

ちょうど逆上がりのように身を上げます。

顔の向かい合った魔物とマリア。緩んだ拘束から左手を救い出し、

襟から取り出すとなにか小さな物をマリアは口に含みます。

それから魔物の唇にマリアがそのままキスをすると、

小さな物をねじ込ませました。

肢体を柔らかく曲げて宙に上がった脚を魔物の両肩に叩きつけた後、

背後に綺麗に着地します。

それから数秒後、魔物の頭は砕け飛び、脳の破片や血が飛び散りました。

マリアにふりおろされた大剣を、彼女は避け避け、次の対象の胸に銃弾を撃ち込みます。

倒れた敵を倒した時間はもの数分。

僅かな時間。

たいして肩で息をするわけでもなく、何事も無かったように走っていきます。

「見つけました!」

ケイの姿を瞳で捉えると、マリアはその襟首めがけて短剣を抜きます。

≪ちょ、マリア!≫

言い止めるのもきかず、マリアはケイに飛びかかります。

首を狙った剣はケイの小剣の鞘に綺麗に納めなおされます。

体術に切り替えたマリアですが、その腹に見事にケイの蹴りが決まり、

地面に転がりますが、体勢を整えます。

「けほっ」

血痰を吐き、口元をぬぐったマリアの顔色は嬉々としていました。

「マリアって…聖母の名前が聞いてあきれますね。

テリーとか男らしい名前の方がお似合いなのでは?

あぁどうして私の周りには淑女が現れないのか、真に嘆かわしいですね」

ケイは言いながら、短剣を地面に滑り寄こします。

「すみません。戦場にいると血がわきみなぎって…無差別になりますね」

「怖い傾向ですよ。全く困った限りです」

肩をすくめて、首を左右に軽く振りながら彼は言います

≪見つかったのでしょうか≫

私の問いに、マリアは察してケイに尋ねます。

「なにを探している。見つかったのか?」

「どうしてトラントには敬語なのに私にはそうなんです?」

「お前がへらへらしているから」

特別顔色を変えず、ケイの視線はマリアをすでに見ていません。

興味はただ、ある対象に向けられています。

「…まぁそう言わず、みつかりました。でも相手が悪い。邪魔者がいます」

注視されるのは黒い飛龍に乗った男でした。

身ぶるいのする声響きをあげながら、寡黙にも状況を静観する姿。

隙を二人は探していますが対象にはそれがありません。

顔はなく、空洞の中にあるのは闇のみ。

ナグソールとよばれるそれは、歴代の暴王達の怨念が集約された異形の魔。

しかし、もとより人だったからこそその形は盤石であり、

その思いも、確固たるものです。

恨みも、嫉みも、憎悪も全て、色づき或る敵。

「意志の或る敵は厄介です…。今までの押し寄せてる魔物やあの化粧面よりも達が悪い。

しかし私達がこのクエストを打開できるものはあれの向こうに在る」

「どうしてそれが貴方にわかる。…私と違ってマスターとの仲もよくない。AIとも連絡がとれないんじゃないのか」

「なるほどキーアイテムの情報が私にはもたらされることはない。なのになぜ断言する、とのことでしょうか。レディ」

私も思います。マリア、ぐっとな質問です。

「さぁ、わかりません。私に縁のあるアイテムなのかもしれませんね」

苦笑しながら、ナグサールを見つめるケイ。

マリアも銃を構えその弾薬を装填して彼に倣います。


「懐かしいですね」

「なにが」


彼らしくない物言いに、私もマリアも不可思議な心地でケイの様子をうかがいます。


「失礼…では参りましょうか」


ナグサ―ルが咆哮をあげます。

私はプレイヤーでもないAIです。

ですからマリアとケイの戦闘をただ、モニターごしに見守ることしかできないのでした。




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