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【AIはただの案内人でそれ以上でもそれ以下でもありません】



煉獄山の風景を話せば、荒涼とした山肌が一言でしょう。

草木もなく、禿げ山というには険しい岩肌の目立つ険しい斜面。

登山でいえば上級者級というようなものでした。

私はクエストといったらいつものように、プレイヤーはプレイヤーの道。

キャラクターはキャラクターの道があると思ったのです。

けれどもどういうわけか同じ道を歩んでいます。


【ストーリーモードでは、より臨場感を味わって貰う為にぎりぎりまでキャラと別はしないんですよぉ。通常の討伐クエスト、採取クエストとは違いますぅ。どうですぅ?

私がいない間ちょー寂しかったでしょ!!?寂しかったでしょ!!?

でも煉獄山の入り口に入って暫く立っただけ……はわぁ長いクエストですねぇ。

デート終わって帰ってきたらもうクリアしてるって思ってました】

「時間かかるクエスト……早く言ってください」

【だって訊かなかったじゃないですかぁ】

「はい?気を遣って下さい」

ケイがあんな状態でもう頼れるのはAIくらいしかいないんですから。

【真穂様ぁ、勘違いしていません?】

「なにがですか」

【私はあくまでAIですぅ。だ・か・ら、説明を求められたり、

道案内はしても相談事には役立ちませんし機転も回しません(笑)お・わ・か・りぃ?】

「・・・わかったからそのむかつく喋り方どうにもならないんですか」

【えぇ!!ひっどーい!!これ私の素なんですぅ。ありのままの私を、見て☆】

「……クエストの種類とその長所短所を説明して下さい」

【あ、スルースキル発生??ひっどーい、冷血ぅ】

AIの言うことは全無視して説明に耳をやります。

簡単にかいつまんで説明すると以下の通りです。


私が最初に受けた「サーチェスティンの花大量発注」のようなクエストは依頼系。

他にも調合、調達、交易というものが存在します。

調合は錬金術スキルがある者が材料を調合して個数をおさめるクエスト。

場合によってはその為の材料をキャラに託して冒険にでかけさせることもあります。

プレイヤーは調合の分野に重点をおくというわけです。


調達は私が最初に受けたようなものです。

大量に確保、確保したら依頼主に次々と届けていくというものです。

この場合最低限必要なものは依頼主が用意してくれますがあくまで最低限。

他にいるものがあれば自分たちで手に入れるという無茶な仕組みです。

私が受けたサーチェスティンの花の場合は資金でした。

交易というものは通信ラインをつかったやりとりです。

これは国々の企業がこぞって試作しているクエストが多いのです。

例えばフィリピンのバナナとかを電子伝票で発注し、より高いところでそれを売買。

利潤を一定値異常上げれば依頼達成です。資金も渡されますがこれは時期を見逃すと大損してしまい、

借金というハイリスクを負うようです。

ネットでの法律がだいぶ整ってきた現代。

ですがまだ抜け穴がたくさんあるから、少しでも税が安い方へと商売を目論むのが人の心。

あまり関わり合いたくないクエストです。

危険度は少ないですが、期日と依頼主との連絡を密にしなくてはなりません。

これができないとクエスト失敗は確定といっていいほどなのです。

AIと連携して、プレイヤーはこなしていかなくてはなりません。


次に、危険度は高いけれど賞金がいいクエストです。

討伐クエスト、狩猟クエスト、大会クエストといい、まとめて戦功系クエストといいます。

討伐クエストは特定モンスターを成敗すればいいのです。

それが種族何十頭から大型のモンスター討伐という差はあります。

同じように差はありますが、討伐ではなく捕獲しなくてはならないクエストも存在します。

そして大会クエストは、他でもないオンラインキャラクターを打ち倒す勝ち抜き戦です。

これらのクエストでプレイヤーは危険なし。

でもオンラインキャラクターが負傷し、クエストが受けられない場合があります。

最悪の場合、オンラインキャラクターは消滅します。

キャラクターは言わばこのゲームにおけるゲーム側の分身です。

彼等が何もできない場合、生計は現実側でプレイヤーが工面しなくてはなりません。

このクエストたちに共通するのは、プレイヤーはキャラクターに指示を出すということ。

プレイヤーはキャラクターと別行動というところです。

私が誤作動で仕組んでしまった「深緑の咆吼」という乱入クエスト。

与六君に破格の討伐金額を稼がせ、トラントを失わせてしまったもの。

乱入クエストというのはこの系統が多いと言えます。


最後に特殊クエストというものがあります。

ストーリークエスト、防衛戦クエスト、レジェンドディアというのがこれだといいます。

ストーリーモードは柔軟性に伴ってストーリーを楽しみながら、キャラと登場固定キャラと楽しんで達成するものです。

満、可、不可という三段階評価があり、満だとアイテムがもらえるというのです。

私は千代ちゃんが現れなければ危うく、可判定だったと思います。

防衛クエストは、侵攻するモンスターから一定箇所を守り抜くクエストです。

プレイヤーとキャラクターが一緒になって、一定時間死力防衛につくさねばなりません。

非常に面倒そうですが、大型の為に他クエストは休止する場合が多いらしいです。

つまりは強制です。勘弁願いたいですが難しいのでしょう。


「レジェンディア……?」

【あ、やっぱりなんか運命かんじますぅ?】


運命も何もクエストがつかないですし、それも「伝説」なんでたいそうな名前がついてます。

ということはおそらくは。


【ご明察ぅ。オンラインキャラクターの正体が判明した時に、このゲームエンディングのラストクエストになるんですぅ】


AIの説明によると。例えば、もし私のオンラインキャラクターが織田信長だとしたら。

桶狭間という起点から本能寺の変までの流れを共に体感するということになるみたいです。

そして叶うことならIfの物語を生むように行動するとベストだというのです。

記載された通りの物語ならクリア。しかしもしもIfを生むのであれば多大な危険を得るというのです。


「冗談じゃないです……誰がそんなこと」


ケイの正体を曝いてやりたい気持ちはあります。

でも、もしレジェンディアがあっても私がそのIfの物語を作り出してなんになるのですか。


【真穂さま~、人はどんな話が好きだと思いますか?】

「え、楽しいのでしょ?」

【違います。切なくも悲しく、けれど美しい物語。オンラインキャラクター達の多くはね、

そんな物語の中で生きている登場人物なんですぅ。その結末はほとんどが、悲劇なんです】

「だからって……ありもしない話がなんでベストだというのです?何が言いの?」

【わかりませーん。佐助、頭悪いんですぅ】


肝心なところは本当に何にも教えてくれません。

説明に戻ります。特別なのは他のプレイヤーが自由に参加できることでしょう。

他のクエストも協力はもちろんできますが、メンバーの規制ができないというのが大きな点でしょう。

例えば、与六君が私とはくれぐれも同じクエストにいたくないのに、

この特殊クエストだと一緒になる可能性が望まずともあるというわけです。

そして、ゲームクリア条件である陰陽の虚現の何かしらのヒントが得られるクエストでもあります。


「私に面倒でリスキーなクエストを紹介したのは嫌がらせですか」

【えぇ!!他のプレイヤーと協力できるんですよぉ~。好きでしょ?協力】


なるほど、また美味しいところをかっ攫えというのでしょう。

冗談じゃありません。まっぴら御免被りますと言えば、佐助は言いました。


【真穂様ぁ!駄目ですって。陰陽の虚現を手に入れる為にそのヒント、方法を血眼で探している連中は

多いんです。だから、こういう特殊クエストって現実知る良い勉強ぉ】

「どういう意味です」

【真穂様が騙す気も出し抜く気もなければ、搾取されるのみってことですぅ。ゲームでも同じですぅ。

真面目にしていればぁ?堅実であればぁ?そんなの綺麗事さんですぅ。

燃えるゴミの日にポイして下さいね。真穂様ってぇちょっと甘いですぅ】

「たかがゲームでしょう?何を躍起になってるのですか」

【でもこのゲーム運営にはお金がかかってます。そして、莫大な賞金もあります。

 人の心を狂わせるのは愛と黄金と闘争である。そう思いませんかぁ?】


笑って言う佐助の言葉を耳にしながら、私は思います。

だったら優しい人は生きられないんじゃないでしょうか。

与六君のように、信用し信頼し、虚実だろうが現実だろうが公平に接する少年。

千代ちゃんのように、虚構であってもあれほど真摯に動き、協力を嬉々する少女。

学校という社会と家庭という社会、地域という社会しか知らない子供達。

でも教えられるのでしょう。

私のように、騙すことなどよくあることだと嗤って言われるのでしょうか。


「私達大人って、たいしたことを子供に教えていないのかもしれないですね」


この箱庭にすぎないゲームの世界。時に珍しく、私は考えていました。

「直江様!!真穂さーん!来て下さい!!着きましたよ」

着いたと言っても入り口でした。

ヤコブとかかれた羽根のついた天使がにこやかに私達を迎えてくれました。

そして剣を抜くと、突然ダンテの額に何か傷をつけたのです。

「罪を浄め、至高天へと続く道。悔い改めよ。さぁ、浄罪へ」

ダンテと同じ傷が私の掌にも、千代ちゃんの掌に光る文字で浮かび上がります。

何か知らない文字でしたが、消し飛んで浮かびあがりました。

その時、AIの佐助が言います。


【それに必要だと思ったんです。自分の傷を癒せた人であるならば、他人の傷を理解することだってできるんじゃないかって。真穂様……どうかご健闘を】



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