表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/49

1【ゲームを遊ぶ前に説明書を読んで下さい】

勉強すれば特に落ちこぼれることもなかったし、

家族は厳格だったからゲームなんて世界を余り知りません。

ただ、姉がはまっていました。

私もいつしか一緒に並んで遊ぶようになりました。

最初はクリア後のイベントを集めたいと言うだけの理由で、姉より時間の融通がきく

私が手を貸すようになりました。これが私の拙いゲーム歴の始まりです。


ゲーム熱中時期から5年。


今ではすっかりゲーム熱も冷め、時間に追われるだけの日々を送っていた私に、

その自宅に一通の招待状が送られてきたのはちょうど四日前です。

上質紙の封筒に、印字が並ぶその封をあければ招待状でした。

事柄と、日時と場所が記されたそれと、重い何かが掌に落ちました。

見てみれば金色の懐中時計です。

裏には「MAHO NAOE」というローマ字の名前彫りがされていて、

行を変えて次に何かの番号が刻まれています。

詐欺の類か何かかと思い、始めは気にも留めなかったのですが。


翌日の夜半のこと。

「真穂、あんた・・・どうして選ばれたの」

実家より母から電話がかかってきたので、詐欺師だよ、簡単に説明しました。


金曜日の定時頃。

「あ、直江君。君、月曜から無制限の有給休みだから」

職場で最初、課長の言ってる意味がわからず、もう一度聞き直しました。

しかし、彼は何度も言うんです。

「君、招待状が来ただろう?これはそこの運営委員会からの要請だよ」

有給というわけで、私が休んでいる間だの給料は定休より三万マイナスですが、

説明によれば十七万が毎月入ってくるようです。

けれどもまだ真剣に考えていなかったのです。



翌日の土曜日。

インターホンと共に現れたのはにこやかな営業スマイルの女性と、数人の男性。


「今日から私、直江様の部屋の管理人と赴任いたします。

部屋の掃除や郵便物の通知などいたしますのでどうかよろしくお願いします」


彼女の名前は「藤子」という名前の人で、女子アナ系の美人さんでした。

横にいる男二人組もサングラスはかけているけれどどこか礼儀正しく、

きちんとした身なりのひとです。

私は目を白黒させて、足をガタガタ震わせていました。

恐いでしょう?普通に考えて誰かと思ったのだけれど、

あれよあれよときちんとした説明後に、荷物整理をされ、

他に必要があれば藤子さんが郵送してくれると保証してはくれました。

大きめの鞄と、温度調節のしやすい動きやすい格好に、茶色のローファー。

携帯と手帳を持ち、招待状と懐中時計を持つように指示され、

追加で渡されるものは現地でということになる。

パスポートが必要だと言われ、さすがに私も説明を求めましたが

それは既にしてあると言われてしまいます。

拒否権はないそうです。なんとも乱暴なことだと思いました。




とにもかくにも私は半ば強制的にこのゲームに参加を要請されました。

ゲームの内容は簡単に言えばこうです。



「アヴァロン」は国際政府がよりすぐりのゲーム会社と連動し、25年プログラムで設立させたものだそうです。

出資企業も多く、みんなオンラインゲーム世界を何か商業的に利用できないか。

政府も、このプログラムを利用して何か効率的に税徴収が出来ないかなど考えたのでしょう。

まぁ、そんなことはどうでもいいのです。

協議の結果試験運用をしてみないといけないと結論づけ、

これを「ファンタジア試案」というような名称で議論を繰り返し、机上で吟味され実施に移ったと言うことです。

壮大で発想が実に残念な計画だというのが私の感想です。

モデルを小規模で10カ所実施し、試験プレイヤーをランダムで選び出し、

目的を達成すること。目的は「陰陽の虚現」というもの手にしたらクリア。

それができたプレイヤーが20名出たらゲームはお開きだそうです。


じゃあ、私は他のプレイヤーがクリアするのを待てばいいのかと楽観していました。

ですが、話はそう簡単にはいかないようです。


招待状が届いて三日目の時間。

私は飛行機の機内ファーストクラスで客室乗務員の心づくしのもてなしに満足しながら眠り更けていました。


ゲーム開始前に誰が予想できたのでしょうか。


向かう土地で待ち受けていたのは、馬鹿げた計画の為のゲームではありませんでした。

所詮は娯楽の延長だと思っていました。でも違いました。


これは、自分が紡ぐ自分のだけのファンタジアだったなんてこと。

誰も予想なんか出来るわけ在りませんでした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ