表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水爆霊術≒禿  作者: つむろ.〈CANA.〉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/1

【1 ≒ 1】











―――渋谷維新(七年前)・東京都渋谷区













「この世に生を受けて十年と3ヶ月か。蓮殿よ、今日まで妾を宿し、誓約に本当によう耐え忍んだ。

尊敬に値しまする。彼女を自死させてしまった事には悔いが残る事かと存じます。

しかし」


「大丈夫だ。こいつの中にいるあやつの存在や記憶は全て消える。

あやつに寄生していた俺からすれば少々癪だが、自分の為に死を選んでくれたことすら分からねぇよ。

……こいつは、な。

今まで俺らに寄生された奴はすぐに死んだ。

はっ、まさかこの2XXX年に再び不動明王()が血盟を交わせる奴があやつ以外に現れるとはな。

霊気を奪われて、家や瀬織に呪われるだけの生活は今日で終わりだ。

お前ら氷室家と俺と瀬織が結んだ誓約は3つ。

少なくとも十年、お前が霊によって殺され、一度死ぬその瞬間までは俺らに霊気を献上し、術も使えず、憑いた霊は一度の守護もしない事と、言葉を封じられる事。

まぁ、つまり一度死ぬまではただの呪われた人間だ」


基方(そなた)はいつまで経っても蓮殿の事が嫌いなのでございまするね。

……故に、盟約は果たされ申した。妾と誓約を結んだ者しかこの力は与えられぬのです。

異能力者が覚醒する種別は3つありまする。その中でもこれは異質中の異質。

本来なら術を与えられる前後に術者が誓約に耐えきれず二度死亡する故、結局妾らはこうして宿主のもとに顕現(馳せ参じる事が)出来ないのでございまする。

しかし、これは極々僅かな例外であります。

血縁者や他者が対象者の為に自ら死を選び、かつ対象者も一度だけ滅びねば得られない氷室家の血統でもある覚醒種別。

―――盟滅種閻。

氷室蓮。貴方(そなた)は死して初めて、舌の霊印を手にし蘇生するのです―――……」



















―――2XXX年現在・五月二十一日―――国家霊鎮圧部隊(G.E.O.)養成所学院東京校・訓練所















【四月十ニ日、PM.03:24。杉並区、ショッピングモール・EMAC、死霊発生。発生源:六級の寄生体による暴走。被害:一般市民八人死亡】












【同日PM.04:56。国道1号線。死霊による人身事故発生。発生源:三級の寄生体による事故現場にて暴走。被害:一般市民二十一人死亡及び負傷】












【五月二十一日、PM.05:43。G.E.O.養成所学院東京校、死霊発生。発生源:災害級、一級の寄生体による襲撃及び未完の憑依系、地縛系の拘束。被害:詳細は不明】
















「……!」




言葉を口にするだけで、舌にある牙の霊印が微かに熱を持つ。

元々人と関わる事や喋ることは得意な方ではなかったし、口数も少ないので別に問題はない。

俺は、G.E.O.養成所学院二年・氷室蓮。

霊・瀬織津姫と不動明王を身体に宿し、世界を壊す言霊を封じられた―――G.E.O.の欠陥エリート地縛系二級術者だ。


人や俺達術者の肺を喰らう人間の脅威となる存在、死霊から日本を、この国を守る為に設立されたG.E.O.、そして養成所学院の座学や実戦授業が終わった1日の終わりに無機質な体育館に似た訓練所で、俺は後輩の一年生相手と特訓をしていた。


術者の系統は三種類の覚醒種別とは別にに六種類存在する。


自分の身体に宿した霊とは別の仲の良い霊を憑依させる事で、その霊の霊気を扱って身体に宿した霊の術を使う攻撃特化の憑依系。

風や大気を術や霊気に変換して展開する浮遊系。

霊壁(シールド)や治癒能力を得意とするが、霊壁で圧死させる事も出来る守護系。

宿した霊が持つ系統特有の千式の術を扱える悪霊系。

光に呑まれた悪霊系の真裏で闇に沈んだのが、まだこの世に数人しか術者がいない生命を蝕む怨霊系。

そして、寄生した霊を術者が亡くなるまで自分の身体に留め、共存、共生する事で系統特有の霊葬顕現等を扱え爆発的な進化を遂げるとされる、憑依系と同じく攻撃特化の地縛系。




「異能力・轟霊流、千式の五・會!……そして、ただの……キーックとパーンチ!」


「……異能力・水霊術、第一ステージ、(しるべ)。〝貫け〟」




おちゃらけていて陽気な後輩、悪霊系術者・鳴神 牙(なりかみ がお)が俺の側面に向かって、黒く染まった右手と右足に霊気を込めて周囲に風が舞う様な蹴りと拳をぶつけてくる前に俺は、黒く染まった左手をそれに差し出し、霊気と水に乗せて壁に撃った。

もちろん後輩相手なので手加減はしているつもりだ。


壁が崩れた音が聞こえた気がしたが、気の所為だろう。

うん、絶対に気の所為だ。

鳴神は纏っていた霊気を解放し、崩れたと思われる壁に近づくと声を張り上げてこう言った。




「おぉ……!すげぇっす!・・・。

……壁も壊れちゃった……手加減してこれか……。センセーに怒られそ……。

これどうするのせんぱ―――って、あっちに逃げた……!」


「あぁー!氷室先輩また鳴神相手に標使ってた!禿見たいのに!

何で使わないんですか?」




鳴神に絡まれる前に他二人の後輩の元へと行くはずだった俺の前に、人差し指を指してくるボブスタイルの女の子と、その子を宥めている短髪の男の子が現れた。

明るく、でも何処か怒りながら俺を問い詰めてくるのは、後輩の浮遊系術者・瀬戸 結菜(せと ゆな)だ。

その隣にいるもう一人の後輩が守護系術者・鞘 竪海(さや たつみ)

二人とも、俺や鳴神と同じく養成所学院の赤い制服を着ている。

男はウエストがシェイプされたコートパンツスタイル。

女はスカートスタイルだ。

特徴的なのは左袖にG.E.O.のロゴ、右袖に一年生だと一本、二年生だと二本、三年生だと三本、四年生だと四本の紺色の線が入っている所。


瀬戸の言う第二ステージの禿(かむろ)は展開したサークルを使って、その中に入った霊の霊気を吸収(ドレイン)して迎撃する爆霊術。

だから術としては非常に強いが、その分吸収した相手や自分に返ってくる反動が激しいから簡単には使えない。


禿の説明をしていると、訓練所の重苦しい扉が開かれた。




「みんな、戻ったよ」


「……!暦先輩!呼び出しお疲れ様です!こちら、先輩のお飲み物です!

良かったら……」


「あ、ありがとう、結菜。頂きます」


「いえいえ!暦先輩のためなら火の中水の中です!因みに何の呼び出しだったんですか?」


「明後日の任務の事でね。女と男二人で行くか、男は男と、女は女と行くかって聞かれて。

私と天命は別にどっちでもいいですって答えたんだけどね」




扉の先には事務長に呼び出されたらしい同級生、怨霊系術者・依 天命(より てんめい)と、憑依系術者・厄李 暦(やくい こよみ)が立っていた。

俺と話をしていた瀬戸は透明のペットボトルを手に目を輝かせて暦の元へと駆けていった。

暦と瀬戸が話している隣でポツンと空気より薄く突っ立っている天命の前に立って声を掛ける。

少し開けられた扉の向こうからオレンジ色の暖かい光が伸びている。




「天命」


「あ、蓮!どうだった?上手くやれた?怪我はない?

暦に振り回されちゃって……来るの遅くなってごめんね」


「おう」


「じゃあ、そろそろ特訓終わります?

もうこんな時間ですし、暦先輩も戻ってきてくれましたし」


「そうだな!早く寮に帰って夕飯食べてー!」


鳴神(あんた)さっきも牛丼五杯食べてたじゃない……」


「え?あれはおやつだぞ?」


「うっそぉ……」



















「ほぅ、彼処が我々の息の根を狩ろうとしている輩の本拠地か」


「寧々様と唸葉様の言うとおりだと、あそこに〝未完の地縛系と憑依系〟それから、未だかつて記録や文献にも残されていない異端中の異端……〝怨霊系〟何てレア個体が三つもいるらしいが……そいつらから霊気は感じないな……未完だからか?」


「まぁ、何でも良い。その未完とやらを捕獲し寧々様の元へ持ち帰る。

ハハハッ、数分後にはすべてが血の海となろうぞ―――!」
















【九月十八日、PM.06:51。関東全域で死霊災害が渋谷維新、日本事変以来初発生。被害範囲:およそ二千二百万人、または未知数。発生源:DISASTERによる人体(寄生体)実験。後談:東京または日本滅亡、国家転覆】


【また、これら全てにG.E.O.養成所学院の生徒及びG.E.O.の隊長、副隊長または隊員が派遣されている模様。

死霊災害に派遣された全生徒、隊員、副隊長、隊長も安否不明、未確認】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ