ピンチの続き
動かなくなった狼を見下ろしながら
キラリはぼぅっと剣を見つめた。
伝う赤黒い血が、
これは現実だと物語っている。
そうだ、エイミー…!
彼女の無事を確認しないとと
辺りを見渡そうとしたキラリの耳元で
「…血を拭って鞘に入れないと
剣が切れなくなるわよ」
エイミーが囁いた。
「うわぁぁ…!
え、エイミー起きて大丈夫なのか?」
「…吐血なんて道で転ぶのと大差ないわ」
まだ口の端の血がついたままの
エイミーが無表情にのたまった。
ここにリョウがいたなら
そんなわけあるかーい!
と盛大にツッコんだと思うが、
善人キラリは、
日頃のエイミーの
吐血の量を考えたら、
本人の認識はそうなのかも
しれないと思い受け入れた。
「…狼の血の匂いで魔物が寄って来るかもしれないわ。用心しないと」
「え?そんなに魔物が出る山なのか?」
「…え?」
「え?」
エイミーがキラリの顔をまじまじと見た後、
「…あら。伝えるのを忘れてたわ。」
同じくリョウが居たなら
堂々と嘘つくんやないわー!
とツッコんだであろう一言を真顔で呟いた。
「…実は宿屋の主人から、魔物に襲撃されて被害が出てると相談されたから、
ここには討伐の目的もあってきたのよ」
討伐の目的も、ではない。
討伐の目的しか、ない。
が、疑うことを知らないキラリは
話を真剣に聞いてエイミーに微笑んだ。
「そうだったんだ…。
エイミー頼りにされてたんだな。
どれだけ俺があてになるかはわからないけど、
やれることは頑張るようにするよ」
あんな魔物がたくさん出てくるなら、
猛者のエイミーも手こずる時が
あるかもしれない。
そう思うキラリの肩に手を置いて、
エイミーは一部訂正した。
「…討伐対象は、
さっきの魔物より凶暴なやつよ」
「そうなの?」
「…あの狼痩せてたでしょう?
あのランクの魔物が食べる物にも
困るくらいの強さってことよ」
えー…
俺助けになんかならないかも…と
言うキラリにエイミーは大丈夫、と呟いた。
「…私を背負って逃げる脚力さえあればいいわ。もしくは助けを呼べる声さえ無事なら」
…無理かも~とキラリは脳内で思った。




