薪割り
翌日の朝もエイミーはキラリを迎えに来た。
「…薪割りは全身の筋肉を使うのよ」
言いながら薪割り台の前に立つように促す。
「…足は肩幅に開いて。
背筋は伸ばす。
慣れるまでは乾燥したものから
割ると割りやすいわ。
膝の力を使って、
腰からは落とすように振り下ろす。」
一回やってみてと斧を持たされ、
思っていたより重いことにまず驚く。
軽々と持っているように見えたのに…。
深呼吸して、強く握り、
膝の力を使って…と思いながら振り下ろす。
キラリの思っていた音とは全く違う、
鈍い音がして跳ね返された。
思っていたよりも硬く、割れない。
「…力み過ぎね。
斧で切る、
というイメージでなく、
刃を木に入れて、割るという
イメージでやってみて」
ゆっくりでいいから、と促されるが
イメージが湧かない、
おそらく不思議そうな顔をしてたのだろう。
貸してちょうだい、と
エイミーに手を差し出された。
おずおずと渡すとやはり羽根でも
持っているかのように軽く持ち、
薪割り台の中心に立つと
「…初心者バージョンでいくわね」
と呟かれ、
え?と思っているうちに
かこーんと良い音をさせて薪が割れる。
「いやごめん。
見惚れてる間に終わってた。
もう一回見せてくれないか?」
正直振り下ろした手すら
見えてなかったかもしれない。
そのくらいの神速だった。
「…超初心者用
超ゆっくり
バージョンでいくわね」
付け足された。
そこから文字通り
手取り足取りの
講座になることを。
そして結構な時間の薪割りになることを
この時のキラリはまだ知らない。




