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幼い頃に、好きだった彼を好きじゃないと言ってしまって疎遠になったけれど大学で再会した彼からデートに誘われましたが私はただ復讐されていただけでした。

作者: 来留美

楽しくお読みいただけましたら幸いです。

 私の名前はサラ。

 私が小学生の頃、足の速い男の子がいた。

 男の子の名前はリュウ君。


 リュウ君の走る姿を見て、私は一目惚れをした。

 リュウ君と同じクラスになったけれど、私は恥ずかしくて話しかけることもできなかった。


 そんなある日、友達と何人かで好きな人の話題になった。

 私はリュウ君のことは言えなくて、何も言わなかったら、友達がリュウ君の名前を出した。


 リュウ君は足が速くて格好良いが、顔は普通だから、隣のクラスの頭が良い男の子の方が格好良いと、クラスで一番可愛い女の子が言った。


 みんなはそうだよねと言うけれど、私は言わない。

 だって私は足の速いリュウ君が好きだから。

 リュウ君以外、他に格好良い人なんていないから。


「あれ? サラちゃんはそう思わないの?」


 クラスで一番可愛い女の子にそう訊かれた。

 彼女の機嫌を悪くさせたら、私はこのクラスで一人になってしまう。

 だから、今の私の居場所を守るために仕方なく嘘をついた。


「そうだね。リュウ君よりも隣のクラスの頭が良い男の子の方が格好良いよね?」


「あっ、リュウ君。どうしたの?」


 私が言った後、すぐにクラスで一番可愛い女の子が教室のドアの前に立っているリュウ君に言う。

 リュウ君に聞かれてしまった。


 この時、気付いた。

 彼女はリュウ君が好きだ。

 だからこそ、女子にリュウ君は自分のモノだと言うつもりで、みんなに言わせたんだって。


 彼女の作戦勝ちだった。

 私は彼女に負けた。


「リュウ君、私はリュウ君の方が格好良いと思ってるよ。足が速いし」

「うざ!」


 リュウ君はそう言って自分の机の引き出しからノートを取って、出ていった。

 すごく怒っているようだった。


 そんなの当たり前に決まっている。

 自分がいないところで、勝手に隣の男の子と比べられていたのだから。


 私だって嫌だ。

 私、そんな最低なことをしている人達の中にいる。

 本当に私って最低だ。



 それから中学生になって、またリュウ君と同じクラスになった。

 そしてなんと、リュウ君と同じ委員会になった。


 あの日がなかったかのように、普通に会話をした。

 でも、委員会のことについてだけの会話。

 リュウ君からすれば、私は同じ委員会の女の子ってだけだった。


 リュウ君とは仲良くなることもなく、私達は卒業した。

 高校はお互いに違う高校だった。

 たまに、朝の電車でリュウ君を見る。


 大人に近付いていくリュウ君は、男らしく身長も伸び、もっと格好良くなっていく。

 私にはもう、手が届かない相手になっていた。




 それから、私は大学生になった。

 リュウ君のことは忘れて大学生活を楽しもうと思った。


 それなのに、私はリュウ君を見つけてしまった。

 リュウ君はイケメンで、女の子達の注目の的になっていたから、目立っていた。


 私は、嬉しくてリュウ君を近くで見たくて近付く。

 女の子達の隙間からリュウ君を見る。

 キラキラ輝くリュウ君はやっぱり格好良い。


 するとリュウ君は私に気付いて手招きをした。

 私は近付くと、リュウ君は私の手を取って走り出した。


 足が速いのは変わらないようで、私はついて行くのに必死だった。

 後ろでは女の子達が、彼女がいるんだ、残念と言っていた。


 その言葉が嬉しくて、この時間が続けばいいなって思った。

 でもそれは無理で、疲れて足が重くなり、遅くなる。


 リュウ君に引っ張られる私はついて行けず、転けそうになる。

 そんな私に気付いたリュウ君は、止まって倒れそうになる私を支えた。


「俺のこと覚えてる?」

「うん。リュウ君でしょう?」

「覚えてるんだ。良かった」

「懐かしいね。大きくなったね? 足が速いのは変わらないね?」

「サラは、、、」


 リュウ君にサラって言われて驚いた。

 名前で呼ばれるなんて思わなかった。


「呼び捨てでいい?」

「あっ、うん。いいよ」

「サラは、変わらないね。いつまでも子供だ」


 そうリュウ君は言って笑う。


「バカにしてんの? 私だって成長したのよ? あの時は話せなかったけど、今はちゃんと話せるようになったんだからね」

「時間が経てば忘れるさ」

「忘れる?」

「あっ、うん。あの日の恥ずかしいと思う気持ちだよ」

「そうだね。あの時は子供で全てが恥ずかしかった気がするわ」

「そうだろう? 俺もそうだった」


 リュウ君に嫌われていたわけじゃない。

 ただ話すことが恥ずかしかっただけなんだって思ったら、なんだかホッとした。


 小学生の頃のあの日の事は訊けなかった。

 リュウ君も訊かないから、忘れているのだと思った。


「色々話をしたいからさ、今週の土曜日、遊ばないか?」

「えっ、私でいいの?」

「何でそんなことを訊くんだよ?」

「だって、リュウ君が格好良くて私、女の子に嫉妬されちゃうから」

「サラは可愛いよ」


 さらっとそんなことを言うリュウ君はやっぱり格好良い。

 やっぱりリュウ君が好き。


「行く!」

「そう。それなら大学に一番近い駅に十時に待ち合わせで」

「うん」


 私、リュウ君とデートだ。

 どうしよう。

 可愛いお洋服あったかな?



 朝になり、私は完璧に準備をした。

 メイクはナチュラルに、お洋服はお気に入りを着て。


 少し早く着いてしまった。

 ワクワクしながら待つから、時間はあっという間に過ぎる。

 しかし、十時を過ぎてもリュウ君は来ない。


 リュウ君と連絡先を交換していなかったから、私は来るまで待った。

 リュウ君は十二時頃に来た。

 隣には女の子がいた。


「ごめん、少し遅れたかな?」


 リュウ君は、私を見つけて悪びれる様子もなく、言った。


「今日、十時からじゃなかったの?」

「えっ、十二時からって言ったよね?」


 その後リュウ君は、私の聞き間違いだと言って、ごめんとだけ言った。 

 ごめんだけなの?

 私、二時間も待ったんだよ?


「あっ、ごめん遅くなったかな?」


 男の子が私達に声をかけてきた。

 その男の子にリュウ君の隣にいる女の子は仲良さそうに話しかけている。


 私は理解できなかった。

 何が起こっているの?


「それじゃあ、行こうか」


 リュウ君が言うと歩き出す。

 何処へ行くのかな?

 私の隣には男の子がいる。


 男の子はリュウ君の隣にいる女の子の友達で、みんな同じ大学みたい。

 男の子の話を適当に聞きながら、おしゃれなカフェに来た。


 薄暗い店内には洋楽が小さな音で流れている。

 私達は奥の個室へと案内された。

 このカフェは個室もあるみたい。


 私の隣には男の子が座り、距離が異常に近く感じる。


 リュウ君とは会話ができなくて、隣の男の子とばかり話す。

 リュウ君も女の子とばかり話す。

 リュウ君、何がしたいの?


 私はリュウ君を見た。

 リュウ君は私が見ていることに気付き、私を一瞬見たが、女の子に視線を戻す。


 この場所から離れたくてトイレに行くことにした。

 帰ろうかなって思った。

 楽しくないし。


 トイレから出ると男の子が待っていた。

 いつからいたの?

 待ち伏せ?

 嫌な気分になった。


「ねぇ、この後、二人でカラオケでも行かない?」

「私は、用事があるので帰ります」

「そうなんだ。それなら連絡先教えてよ」

「えっ、あっ、それはちょっと」

「何で?」

「私、リュウ君が好きなの」

「だから来たわけ?」


 男の子は不機嫌になる。


「だるっ! そんなの先に言えよ」

「私だって、こんなことになるなんて知らなかったのよ」

「分かった!」


 そして男の子は、私の手を取る。

 手を繋いできたの。

 私は振り払おうとしたけど、力が強過ぎる。


 私はそのまま引っ張られ、二人の元へ戻る。

 私達の様子を見てリュウ君は目を見開いた後、スッと無表情になる。


 感情が読み取れない。

 綺麗な顔に何の感情も無い。


「俺達、この後は二人で行動するから」

「えっ、何で?」


 男の子の言葉に驚きながら私が言った後、男の子に引っ張られながらカフェを出た。

 リュウ君、助けてよ。

 振り向いてもリュウ君は追いかけて来ない。


「何処に行こうか?」

「えっ?」


 男の子はすぐに手を離して、私の手は自由になる。


「帰る?」

「えっと、どういうことでしょうか?」

「アイツが好きなんだろう?」

「はい」

「アイツの反応を見たか?」

「反応?」

「何も気にしていないように見えたけど?」

「あっ、はい。そうですね」

「これで諦められるか? 俺のアシスト良かっただろう?」

「えっと」

「俺に感謝しろよ」

「えっと、あなたはどちら様でしょうか?」

「俺は、恋のキューピットなのかも?」

「自分で言うの?」


 私は笑ってしまった。

 それにつられて男の子も笑う。

 私達、友達になれるかも。

 この人、案外良い人だ。


 その時、私は足元にある縁石に躓いて倒れそうになる。

 そんな私を支えようと男の子が手を差し出したけど、間に合わない。


 私は目を閉じる。

 痛みを覚悟する。


「あっぶな!」


 私は耳元で聞こえた声に驚いて目を開けた。

 綺麗な顔のリュウ君がホッとした顔をして私の目の前にいた。


 私はリュウ君に腕を引っ張られて抱き寄せられていた。

 すぐそこにいた男の子が間に合わなかったのに、どうして?


「リュウ君? どうして?」

「俺が足が速くて良かったな。頭は良くないけどな」

「何? どういうこと?」

「あの日のことを忘れたわけ?」


 リュウ君が言っていることは分かる。

 やっぱり忘れてなんかなかったんだ。


「まって、あれは、、、ううん。ごめんなさい」


 私はあの時の女の子のせいにしようとしたけど、それは間違っていると思ったから、素直に謝った。


「待って、人の目が気になるから、さっきの店に戻ろうか?」

「うん。そうだね」


 通行人がリュウ君の動きを見ていたようで、驚きながら小さく拍手をしていた。

 私は見ていなかったけど、凄い速さだったと思う。


「ねぇ、連絡先を教えてよ」


 私はお店に戻る前に男の子に言う。


「えっ、何でだよ?」

「だって、私のキューピット様だからだよ」

「今日はやめとくよ」

「えっ、どうして?」

「隣のイケメン君が怖いから」

「えっ」


 私はリュウ君の顔を見ると、涼しい顔をしている。

 全然怖くないけどな?

 いつ見ても格好良いよ。


「イケメン君は目立つから、その隣にサラちゃんがいるよね? 見つけたら声をかけるよ」

「うん。ありがとう」


 そして男の子は帰っていった。

 男の子の名前を覚えていない。

 今度訊こう。


 薄暗いカフェに戻って来た。

 また奥の同じ個室に入った。

 女の子はいない。


「あれ? 女の子は?」

「アイツはうざいから帰ってもらった」

「どうして私を誘ったの?」

「サラが悪い」

「私?」

「あの日、俺じゃなくて隣のクラスの奴を選んだから」

「あれは、仕方がなかったの。でもそれを理由にリュウ君を傷付けるのは間違っていると思うの。だからごめんなさい」


 私は頭を下げた。


「それ、何で今なわけ? 何度も言うチャンスはあったと思うけど?」

「言えなかったの。怖かったの。リュウ君に嫌われていることをハッキリ聞きたくなかったの」

「俺は、何度も嘘だと言ってくれと思っていたよ。何度も、チャンスがある度に、サラが嘘だと言ってくれるのを待っていたのに、何で今なんだよ」


 リュウ君は悔しそうに言う。

 リュウ君には、他に好きな人がいるのかもしれない。

 もう、遅いんだ。

 リュウ君への気持ちは言っちゃいけないんだ。


「リュウ君、好きだったよ」


 私はリュウ君を真っ直ぐ見て言った。

 リュウ君は目を見開いて驚く。

 ごめんね、困らせないから。

 ちゃんと過去形で言ったから。


 本当は今も好き。

 ずっと好きだよ。


「本当は、サラに復讐をしたかった」

「えっ、何? 復讐?」

「俺をずっと苦しめているサラに、何か嫌がらせがしたかった。でも、やっぱり無理だった」

「仕返し? 何それ?」

「大学でサラを見た時、一緒に走って疲れさせてやろうと思ったけど、転けそうになって助けてしまったし」


 あの、走らされたのは嫌がらせだったの?


「サラを二時間待たせたけど、心配でサラと同じ時間には来て、ナンパされないか見てたし」


 えっ、どこかで見てたの?


「二人だけだと思わせて、ダブルデートにしてみたり」


 えっ、ダブルデートだったの?


「男に連れていかれて、どうにでもなれって思ったけど、やっぱり無理で、足が勝手に動いてた」


 これって復讐なの?


「リュウ君、本当にごめんなさい。だから私のことは忘れて。もう近付かないから」

「俺の話をちゃんと聞いてる?」

「聞いてるよ。私が嫌いで復讐がしたかったんでしょう?」

「違う。俺は、、、」


 リュウ君は私の目を真っ直ぐ見つめる。


「俺はサラが好きなんだ」


 リュウ君の言葉に驚く。

 好きにも驚いたけど、過去形じゃなかった。


「彼女いるんでしょう?」

「いない。俺はずっとサラを憎むフリをして好きでいた。忘れないでいたんだ。今も」


 信じられない。

 私、幸せ過ぎだ。


「私もリュウ君が大好き」


 嬉しすぎて笑っちゃう。

 リュウ君も嬉しそうに笑ってる。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。

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