第7話 Ability Ⅲ
職業とは生まれた時から持っている才能によるものと、努力によるものに分かれている。
この世界には1つ1つの行動に職業が存在しており、例えば目玉焼きをつくる時にも火を起こす職業がいて、フライパンなどを作る職業によって作られたフライパンを使用し、農業系職業によるタマゴを使い作るように。
この世は職で溢れている。
だからこそ大体の人が何らかの職に就くのが普通となっていた。あまりはしない。それこそ今でもまだ足りないのではないかというぐらいに職業を募集し続けている。
だから余程のことがない限り大体なんらかの職についているのが普通であるのだが、終ノ一語呂子は違った。何もなく、何もしない。
唯一することは誰かから依頼されてやる人殺しのみ。
そんな日常生活をおくっていく間に得たスキル。
恐ろしいスキル。
今回もまた正義軍に雇われ邪魔するものを殺すよう命じられた彼ではあったが、きっと雇われた理由はそれだけではない。
彼が他の誰かに雇われ、正義軍の敵となることを恐れたのだ。それぐらいこの男の異常さは異常なのである。
対人戦最強の男。
それが終ノ一語呂子であった。
○
「終ノ一語呂子・・・趣味の悪い名前・・・」
イメリアが呟く。
しかしそんな言葉にも相手、終ノは動じない。動じないどころかそういう非難の言葉を受けて嬉しそうに笑うのだった。
ルナが感じた第一印象はイメリアとは違い、自分達ではなく名前の感じがどこか井野宮天十の住む世界のものに似ているという感覚。
「まあ、僕が付けたんじゃなくてまわりが付けた名前だからね。僕も正直この名前はどうかと思うんだけど・・・他に名乗る名前もなくてさ」
両手に包丁を持ち、そしてそれを投げた。
会話をしながらの攻撃。ルナは咄嗟にイメリアを抱きかかえ、高速移動でその攻撃をかわす。所詮ただの人間の攻撃、かわせる攻撃だ。
しかし・・・。
(あれが無職・・・すなわちジョブ持ちではない・・・ということ・・・。的確に人を殺すかのような攻撃に殺気もなにもない攻撃・・・その全てがあの人自身によるものだとでも言うのですか・・・?)
ルナは驚く。
今まで見せられてきた数々の攻撃は全てジョブによるものではなく、相手の、それこそ生身の体に染みついたスキルだという。
あの挨拶のついでみたいに攻撃してくるあの感覚も。
どうしたら、ただの人間がああいう攻撃を可能にするのか。
想像もしたくない。
「よっと」
またしても投げられた包丁。
高速移動は一度使ってしまったのでもう少しの間は使えない。それでもかわせるぐらいのスピード。ルナはかわそうとした。
が、あまりにも普通で、まるでゴミ箱にゴミを投げるかのようなとるに足らない行動のように思えて、思わず、動けなくなってしまった。
「しまっ・・・!」
またしてもあの攻撃。危機感を相手に抱かせず、相手の行動始めを遅らせる一撃。
ルナの足に包丁が刺さる。
「・・・・・ッ!」
苦痛で顔が歪む。
それでもイメリアはあくまで冷静に静かに薬を出し、それを使用する。包丁の刺さった跡は完全に消えている。とはいえ、完治したわけではないのだが。
「嬲り殺し。今のはそういう技だよ。すぐには殺さず、まわりから埋めていく。綺麗にね」
なんにせよ、近づかなければこちらの攻撃も当たらない。
確実に一撃でしとめ、反撃を許さないほどの攻撃を。
そのためにはルナだけでは駄目だ。イメリアによる援護も必要なのである。
イメリアはそれを理解し、手に持つはまたしても注射器。それを思いっきり相手に投げつけた。終ノはそれをじっくりと眺めてそして、横に避けた。
普通の回避。別にそこに異常さはない。
だから8本のうち、2本の注射器は足に刺さってしまった。
その瞬間訪れるのは眩暈。いや、眠気。このまま眠ってしまいそうなほどの眠気が終ノを襲う。麻酔。そして毒。これで終わりだというレベルの攻撃ではあるが。
「なるほど」
即座に自分の足を斬り、体内から薬を排出。
麻酔は効いているようだが、毒はまわりきる前に外へと出されてしまった。
「自分で自分を斬るって楽しくないし、痛いからあんまりやりたくないんだよね」
躊躇せず、自分の足をきった目の前の男にイメリアは同様するも、その間にルナがかなり終ノに近付いている。だが、気付かれた。
終ノは笑顔のまま、手元に包丁を装備してルナを迎え撃とうするが。
高速移動。
今までためていた分をここで解放した。
攻撃しようとしていたのはフェイント。すぐさま高速で移動し、相手の背面へとまわる。その位置から呪いの刀で急所を一突きに・・・。
それでも終ノはその攻撃を包丁で防いだ。
「さっきもいったけど、その刀、僕と似てるんだ。急所を攻撃するというのなら、そこを事前に守っておけば簡単に防げるでしょ」
「くっ・・・」
確実に相手を仕留める武器故の弱点。
それを似ている終ノはしっかりと把握していたらしい。
「なら・・・」
もう一度注射器で、そう思ったイメリアの攻撃は軽く防がれてしまった。
今度は回避しながら、包丁自体で注射器を叩き落としたのだ。
「策殺し。僕にそれはもう効かないかな。人一倍殺気には敏感だし、君がいつ攻撃してくるかももう分かる。君はどうにも僕と同じで戦闘には向かないらしいね」
実際イメリアは医師だ。
こうして薬によっては戦うことも可能ではあるが、それでも限度がある。相手を仕留めるのならばやはりルナにその全てがかかっているのだ。
「で、君はいつまで僕の近くにいるのかな」
「え・・・」
またしても分からなかった。
その一撃が攻撃なのかどうか判断のつかない恐ろしい攻撃。それが至近距離で放たれる。突き刺し。包丁による一突き。
それがルナを襲った。
「が・・・」
心臓の位置。
刺されたら確実に死ぬその位置に包丁が突き刺さる。
「ただ殺し。僕はどうにも戦いを長引かせるのは苦手なんだ。だからこうしてすぐに終わってしまう」
そう言った終ノは次にイメリアを狙おうとして・・・初めて驚いた顔を見せた。
「・・・・・・なんだい、君。死んでないのかな」
「はっ・・・はっ・・・」
そこには胸を一突きされたルナがまだ立っていた。
血を流しながらもしっかりと足には力が入っているようだ。
「なるほどね、君、そこに心臓がないってことか。すなわち君は人間ではない。まんまと騙されてしまった。僕とした事が殺し損ねてしまった」
いや、一度区切る。
「これは君に興味が湧いた。最初は正義軍の狂った理念に興味があったけど今ではもうそれもどうでもいい。君の方が大事だ」
男は包丁を持ち直し、ルナを見据える。
「次こそ君を殺して見せよう」
少し間があいてしまいました。
かなり内容的には端折っているようですが、元からこのぐらいの長さにしようと思っていたので。
次回もよろしくお願いします。




