プロローグ~出会い~
この小説は元主人公、今は脇役願望の過去編です。
空から美少女が降ってきたときあなたならどうしますか?
俺なら絶対助ける。理由なんて特にはない。日々同じ事を繰り返し、無為に過ごしていく今の日常はもう懲り懲りなのだ。
平和なことがいいことだというのは俺も理解できる。でも理解と納得はまた別の話。
だから俺、井野宮天十は絶対に助ける。それが非日常への入り口になると思うから。
中学3年生になり、もうそろそろ高校の受験が見てくる時期に何をしているんだという話ではあるが、そんな今までと違う世界を求めて、黒髪を金髪に染めてみた。怒られただけだった。
あえて学校に遅刻し、忙しい朝の街並みを見ながらゆっくりと歩いてみた。怒られただけだった。
保健室に行って仮病を使ってベッドで爆睡してみた。結局後でバレて怒られただけだった。
いつもと違う事をしてみても非日常はやってこない。先生からのお叱りを受けて元の世界に戻されるだけ。意味の無いことをやっている自覚はある。それでも諦めきれない。
人によっては受験で追い込まれすぎておかしくなったと思われることだろう。しかし時はまだ春・・・と呼べる月で、まわりでそこまで切羽詰まっている人間もいない。
うちの中学ではそんなに頭のいい高校に行く人もいないからだとは思うが、俺もまた中堅の高校に行くつもりだった。
なにが足りないのだろうと思い、雨乞いをしてみたこともあった。雨しかふらねぇよな・・・。それは当然だ。だからといって非日常乞いなんてない。そもそも雨乞いでも雨を降らすことはできなかったし、非日常乞いがあったとしても効果はないだろう。
俺はこんな思考を、こんな生活を後どれぐらい続けていくのだろうか。そりゃ中学はこの1年間で終わりだ。高校生活という新たなステージへと上がることにはなる。
ではその高校ではまたこんな生活を続けるのか?大学でも?社会人になっても?
非日常に憧れたまま、死んでいくのか?
冷静に考えて社会人・・・いや大学生あたりですでにそういう考えとはおさらばしてしまいそうなものだが、この憧れが消えることもまた俺の中では恐れだった。
小さい頃読んだ絵本。最近になって読んだ少年漫画。そのどちらも夢の世界で、ファンタジーで、俺が憧れることに不思議はない。
十分魅力的だった。
そんな世界に憧れた。
そんな世界で英雄に、主人公になりたかった。
今の世界から誰でもいい。俺を救いあげてくれ!
その思いが通じたんだろうか。道を歩いて帰宅途中だった俺の頭上から不思議な・・・叫び声・・・に似ている?
あと風を切る音。ちょうど自転車を全速力でこいだらこんな音がしそうだ。でも今は自転車なんかない。じゃあなんで?
「・・・・・」
ふと上を見上げた。
だって当然だ。上から音がするわけだし、その音源を見てみるしかない。そもそも見えるものなのか?俺は音を聴いているだけで目で見えるものとは限らない。
混乱していたのだろうか。
普段だったらまさに非日常だなんて喜びそうなことを前に俺は頭で色々なことを考えていた。
なぜなら・・・上を見上げるとそこには・・・。
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
人間がいた。
いや、え。人?人ってあの生きてる?ていうか俺と同じ?だとしたらやばくないか?だってこの下はコンクリートで・・・落ちたらそれはもう・・・死ぬのでは?
まだ小さい。ここからかなり距離があるみたいだ。これは死ぬ。俺だってたぶんその高さから落ちたら死ぬだろうし。
「え・・・あ・・・・・」
声が出ない。
なんで空から人が降って来るんだ。いや、俺が望んだものではあるけれどそれでも・・・これは驚くだろう。
俺は混乱していた。だから気付かなかった。この近くに高いビルなどはなく、あっても一軒家程度。
人がその高さから落ちるには空から・・・何もない空高くから落ちるしかないということをに。
それでも俺は自殺か何か?飛び降り?だなんてことを考えていたけれど、正直空から落ちて来たなんてものよりも現実的だった。
どちらが馬鹿げているかなんて考えるまでもない。
このままだと死ぬ事は明らか。
もしかしたら自殺かもしれない。俺は邪魔・・・なのかもしれない。それでも死ぬことがいいことだなんて思えない。
どうせだったら満足して最後に眠るように死にたいじゃないか!
なぜ俺の死に関する自説を頭で思い浮かべているのか。
それはきっと自分のこの行動を正当化するためだ。邪魔じゃない。悪くない。ここで助けなければならないんだ。
「あの女の子何キロだろう・・・」
そんな失礼なことを考えてしまう。
このままキャッチできたとしてもその時は俺の腕が犠牲になる。かなりの高さから落ちた人間をキャッチして無傷でいられるわけがない。
よくて骨折。悪くて腕が取れる・・・とかはないよな・・・。
腕って取れるんだろうか。綺麗さっぱりすぱんって。気が付いたらなくなっていた、みたいな。痛くないやつがいい。
「とか言っている場合ではない!」
手を伸ばす。
その人はもう間近だ。やばい。怖い。腕が取れても死にはしないよな?でも血が出たら?血が出て・・・それで・・・ショック死とか?
でもやるしかない。
このまま何もしないで後悔はしたくない。
「届いてくれ・・・!」
どこに落ちるのか正確な場所は分からない。
それでも手を広げ、少しずつ位置を調節していく。上を見上げ、じっと見る。怖い。怖いけどこれが俺の待ち望んでいたものなのかもしれないのだ。
「届けええええええええええ!」
手を伸ばし前に前に駆ける。
風の影響を受けているのか落ちてくる人はふらふらと位置を変えている。だから狙いを付けにくい。
それでもやる。
ひたすら真摯に手を伸ばし続けて・・・。
その人は、その女の子は俺の手の中に落ちて来た。
痛みを覚悟したが何も感じない。
まさか本当に手が取れてしまったのかと思ったがそれはない。ちゃんと繋がっている。では、なぜ?
「ふえ~・・・」
女の子は目を回しながら、気絶しながら浮いていた。いや、一瞬だけ落ちる直前に浮いたのだ。
それで重みを感じながらもキャッチ出来た。いわゆるお姫様だっこというやつではあったが、それどころではない。
「な、なんだこの子は・・・」
黒髪で可愛らしい顔立ちをしているその女の子。浮いたということも不思議ではあるが、まずなぜ空から降って来たのか。
俺は女の子に悪いが興味津々だった。
今思えばやめておけばよかったのかもしれない。
俺の非日常との邂逅がこれだったのだから。
大幅に加筆・・・というか全て書きなおしました。
かなり間があいてしまいましたが、少しの間、お付き合いください。




