表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/19

今朝の夢ー3

私は古代中国の世界にいる。

朝早くから、竹林の中で兄弟子と剣の稽古をし、気を緩めた瞬間、彼からの一撃をくらい、私の剣は地面に落ちた。

「まだまだだな!俺がいない間も、ちゃんと稽古をしておくんだ」

髪を頭上で纏め、黒装束を着た中肉中背の兄弟子が言う。

「はーい。今回はどこへ?いつお戻りですか?」

「それは任務だから、教えられない。だが、3日後には戻って来れるだろう」

「分かりました。鍛錬しておきます。帰って来たら、また、手合わせをお願い致します」

「ああ、いいだろう。楽しみにしているぞ」


その日の午後に、旅支度をして出立する兄弟子を見送った。




兄弟子は旅をしていた。

黒装束だと異様な者に見えるので、木綿の動きやすい衣を着て、剣は麻袋の中に隠し持ち、大師匠の館を目指していた。

ふと立ち寄った酒楼で、中央の席についていた男に声をかけられた。高級絹で作られた貴族風の水色の衣を着て、座っていても彼のすらりとした体つきは分かった。その見目麗しい彼と食事を共にすることになり、話をしていると妙に気が合った。

「どこまで行かれるのです?」

満腹で上機嫌だったこともあり、兄弟子はそう聞いていた。

「ああ、この先の岩屋の洞窟にある大師匠の家だ」

「ええー、偶然ですね。実は私もそこへ行くのです。ご一緒しませんか?」

「いいね、では、共に参ろう」

話はとんとん拍子に進み、帰りに行く美味しいと評判の酒楼まで決まった。


二人は少しだけ酒が入っていて、いつもは重い口も軽くなり、林や森を抜ける間もずっと思い出話や自分達の宗派のことなど話しながら、海辺の近くまでやって来た。

松の木の林の向こうにゴツゴツとした岩が見え、その先に岩屋はあった。

岩屋の中へ入って行くと、白木造りの大きな御殿が見えてきて、二人はそこの中へと足を踏み入れた。

しかしだ、彼らが何度大師匠の名を呼んでも、応答はない。

「様子がおかしくないか?」

麗しい男が言う。

「確かに、人の気配が全くしませんね」

すると、先ほど入って来た岩屋の入り口の方から大津波が押し寄せ、彼らを水の中に閉じ込めようとした。

「やばい」

麗しい男がそう言ったかと思うと、彼は青龍に変化(へんげ)し、兄弟子を海水ごと飲み込んだ。


一方の兄弟子は、いきなり現れた青龍のパックリと開いた口に吸い込まれ、気が動転していた。咄嗟のことで、何が何だか分からずに、桃色のお腹の中を海水と共に龍の長細い身体を漂い、呟いていた。


「俺って、食べられたのか・・・?・・・」



兄弟子の帰りを待つ私は、小銭を稼ぐため、大きなお屋敷の掃除係として働いていた。

今日は兄弟子が帰って来る約束の日、朝からウキウキしながらお嬢様の部屋を片付けていた。お嬢様の部屋は、白や桃色を基調として淡い色調でまとめられ、鏡台に寝台、飾り棚に可愛らしいものがたくさん詰まっていた。奥の書棚には、古い本に新しい本、大小さまざまな本が並び、所々の空いた空間に珍しいものが置いてあった。水晶玉、望遠鏡、砂時計、羅針盤など、何に使うのかよく分からないものまでごちゃごちゃと。

その書棚がすごく気になり、整理整頓していると、見たこともないような美しい衣を纏ったお嬢様が入って来た。

「あら、まだ掃除は終わっていないの?」

「あと、この書棚を片付けましたら終わりです」

「そう。じゃあ、早めにお願いね。どうやらお兄様が帰ってくるようなの」

「かしこまりました」

本を並べ、綺麗に整って見える位置を考え、配置していった。と、水晶玉を動かそうと、手にした時だった。水晶玉の中に、青龍が見え、その龍の中に兄弟子がいるのだ。

これはいったいどういうこと?

私は水晶玉を凝視した。すると、今度は龍のお腹の中らしきものが映り、兄弟子が泡のようなものに包まれて眠っている。


「お兄様、おかえりなさい」

お嬢様の声が背後で響いた。

「元気にしていたかい?」

「はい。お兄様の言いつけどおりに、書とお花の稽古もしたわ。それから頂いた本も読みました」

「そうか、では今回のお土産だ」


その声を聞いて、私は振り向いた。


そこには水色の衣を着た美男子がお嬢様と向かい合って立っていた。

彼は妹に、へんてこな木の棒のようなものを渡している。途端に私の手にある水晶玉が震え出し、泡の中にいた兄弟子が目を覚まし、騒いでいる。

すると、彼は土産物を落とし、お腹を押さえている。

「どうしたの?お兄様、腹痛がするの?」

「いや、なんでもない。ただの持病の癪だ」

だが、一向に治まる気配はない。とうとう床に倒れ、苦しんでいる。

「お兄様、侍医を呼んでくるわ」

お嬢様が立ち去ると、私は彼のもとに近づいて行った。


「お前は誰だ?」

苦しみながら尋ねて来る。

「私はここの召使いです」

「すまぬが、背中をさすってくれぬか」

「わかりました」

私は彼の背中を優しく上下に撫でた。


「うっつ・・・ぐはっつ・・・」

と、嘔吐した。

そうして・・・彼は一つの泡を吐き出した。


「これは・・・」

私は叫んで、急いで出てきた泡を手に取り、逃げ出した。

重い足を一生懸命動かして、走って走って走った・・・・。





*ここで私は目が覚めた。

この夢は三日連続で、場面が切り替わりしながら、見たものです。夢に続きがあることはよくあることで、同じ夢もみるし、同じような場所で違う話が展開されることもあります。(笑)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ