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3話 神族召喚

 あぁ……いてぇ……。


 俺は少し水滴が付いている岩にもたれかかりながら、地面に座り込んでいる。

 

 体中から血が流れて、指先の感覚など無くなってきてしまった。

 これは……もうだめだ……。

 腹にくらったナイフの傷は、もしかしたら内臓を傷つけているかもしれない。

 もうこの傷は治しようがないだろう。


 「その辺にしておけ。レイン」


 さらに俺に向けてナイフを投げようとするレインを、気絶しているハーシュを担いだドラウロは止めるよう声をかけた。


 「なんで?」

 「そいつの傷は結構深い。もう、どれだけ腕のいい魔法使いでもその傷は治せんさ。だから、そいつはそのままにしておいても死ぬ」


 ドラウロにそう説明されると、投げようとしていたナイフを服の中にしまい、俺を上から見下ろした。

 

 レインの服には、俺の返り血が付いていてもうその姿は勇者のものではない。


 「そうだね。このまま死ぬより、苦しんで死んでくれた方がいい。よし、このまま放置して帰ろ」

 「お前たち、早く荷物をまとめろ。冒険者の奴らが来たら困るから早く帰るぞ」


 血まみれにななった俺の姿を見ながら、ウドとリエンも笑っている。

 実に楽しそうだ。


 はぁ……。

 俺はこんなところに死ぬのか。

 それも、同じ国のやつに殺されて。

 

 右腕の感覚が完全になくなり、地面にだらっと垂れる。


 ハーシュに何も出来なかったな……。

 数え切れないほどの恩がハーシュにあるのに、何一つ返すことが出来なかった。

 ハーシュには迷惑しかかけていなかった。

 本当に何をやってんだ俺は……。

 勇者に選ばれたのに……情けない……!


 すでに左腕の感覚もなくなり、全く動かせなくなった。


 どうやら荷物をまとめ終わったらしい。


 「行くぞ。じゃあなライ。お前の人生はここで終わりだ」

 

 4人は笑い声を洞窟内に響き渡らせながら、俺の視界から消えていった。


 本当に俺は弱いな……。

 

 ハーシュ……今までありがとう。

 これからは……俺のことを気にせずに生きていってくれ……。


 体の力がどんどん抜けていき、うまく座ることさえ出来なくなっていってしまった。

 はは……俺って本当に死ぬんだ……。

 人間って……死ぬのこんなにもあっけないんだな……。


 俺は本当に死を覚悟し、目を瞑った。

 

 「あ……れ……」


 なんだこれは……?


 目を閉じたことにより、暗くなった視界に文字が浮かび上がった。

 

 何て書いてあるんだ……?


 俺は消滅してしまいそうな意識を必死に保ち、その文字を頭の中で読み上げる。


 スキル《神族召喚》。


 俺の視界にはそう書いていった。


 なんだこれ……?

 死ぬ直前にスキルなんて……いらねぇよ……。


 そう思いながらも、俺は心の中で笑う。

 

 死ぬ直前に得たスキル、記念に使ってやろうじゃないか。


 俺はもう全く動かない口を、なんとか開けて小さな声で呟く。


 「神族……召……喚……」


 だが、俺の体や身の回りには一切変化が起こらなかった。


 はは……ゴミスキルじゃねぇか……。

 まぁいいか。

 死ぬ直前に……面白い体験ができたことだし……。


 俺の意識が消えていく。

 その時だった。


 正面に突然強い金の光を現れ、細長い洞窟内を照らす。

 これでは、消える意識も消えることができない。


 俺は瞑った目をもう一度開き、目の前を見る。


 「マジか……こりゃ……すげぇ……」


 そこはすでに誰も居なくなった洞窟……だった。


 俺の目の前には、神らしい金髪を頭の横で縛り、琥珀の瞳を持った女が立っていた。

 


 

 

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