90話 空の精霊
話は続いて。
「あ。ねぇねぇ、クレア。」
《なんですか?》
「このブレスレットに貯める量は増やせるの?」
《う~ん。やったことないですが、可能じゃないかと。増やしたいですか?》
「いや、すぐにどうこうしたい訳じゃないの。とりあえず私はこれの容量の限界値を知らないからさ、様子見て増やした方がいいと思ったらまた相談させて。」
《はい。勿論です。》
《ちなみにルリ。さっきからクレアを可愛いって言ってるが、クレアは最初からここにいた、この大陸の長だからな?》
「え!?長?‥‥クレアが?」
《ああ。俺達がこの大陸に渡って来た時は既にこの御神木のところにいたんだ。》
《ちなみに雷・氷・空・海の子達を生み出したのもクレアなのよ。》
《歴代の巫女と協力はしましたけどね。》
「うそ!?」
『本当。』
この場にいる精霊全員の声が揃った。
「クレア‥‥すごいね‥‥あ、だからウラノス達は上位精霊?」
《そういうことだ。》
「だったら生み出した時に名前つけてあげれば良かったのに‥‥。」
《いい名前が浮かばなかったんです‥‥。》
「で、迷ってる内に本人達が諦めたの?」
《そうです。》
《だってずっと悩ますのも可哀想かなって思ってさ。いつかどこかの代の巫女がつけてくれるか。って諦めた。》
クレアの代わりにセルシウスとウラノスが答えた。
「で、私?」
《うん。ルリならいい名前つけてくれそうって思ったからさ。》
「へ~!‥‥じゃあ、あと名前ないの雷の精霊だけ?」
《だな。》
《ねぇねぇ、ルリの話は終わり?》
《ああ。大丈夫だよな?》
「うん。また何か疑問出てきたら聞きにくるよ。‥‥あ、ここにはゲートで来れる?」
《ええ。可能ですよ。ルリ様だけしか通れませんが。》
「通ろうとしても私以外弾かれる?」
《はい。》
「へ~!徹底してるね。で、ウラノス。なに?」
《僕ができること話そうかなって。ルリは空って聞いて何ができると思う?》
「え?う~ん‥‥‥空のイメージって天気の移り変わりとか鳥が飛んでるとかしか浮かばないかな。」
《うん。天気の移り変わりはちょっと影響させるぐらいならできるよ。大きく天候を変えるならウンディーネ様やシルフ様かな。》
「う~ん‥‥‥‥まさか鳥みたいに空飛べるとか?」
《!! 正解!!》
「え‥‥マジで?」
《マジで!!》
「本当!?私、空飛べるの!?」
《飛べるよ~!飛びたい?》
「飛びたい!!!」
《僕を生み出した理由もね、最初は巫女が空を飛んでみたいって言ったからなんだって。》
「え?そうなの?クレア。」
《はい。そう言ってました。ただその子、高いところが苦手だと飛んだ時に初めて気付いたらしくて‥‥。》
「‥‥‥‥馬鹿なの?」
《あの子は馬鹿だったね!》
《良く言ったら天真爛漫?》
ウラノスとウンディーネは正直な感想を躊躇なく言い放っていた。
「あ、だからその巫女も名前つけてくれなかった?」
《そ。まあ、僕は自由に飛べて楽しかったからいいんだけどね。》
「意外な誕生秘話だね‥‥。」
《で、ルリ。早速飛んでみる?》
「いいの!?」
《うん。失敗して墜ちそうになったらシルフ様が助けてくれるから大丈夫。》
《私任せですか‥‥まあ、いいですけど。》
「やった!どうやったらいい?」
《さっきルリが言った通り、鳥みたいに飛ぶイメージしたらいいよ。僕も勿論手助けするし。ほら。》
と言ってウラノスが私の手をとった。
そしてウラノスは私の手をしっかり握ってくれて、
《詠唱、浮かんできた?》
「‥‥‥‥‥うん。」
《やってみて。》
「ー我が身に天を駆ける翼を。【フライ】ー」
すると、本当に背中に翼が生えたので
「わっ!翼が生えた!で、どうするの?」
《このまままずは浮くイメージしてみて。》
浮く‥‥‥
と言われた通り、漠然とではあるがイメージしてみるとフワッと浮き始めた。
「おお‥‥浮いた‥‥。」
《ルリ、そのままもう少し浮いてみようか。》
「うん。」
そして御神木よりも高く浮き上がったところで。
《ルリ。周り見てみなよ。》
「え?うわっ!‥‥‥‥‥きれい‥‥‥。」
そこには城と城下の街が一望できる絶景が広がっていた。
《ルリ。見る方向変えたら他の国のも見えるよ。》
と言われて違う方向を見ると、
「わ!本当だ。ラズライトだ‥‥」
そしてまた違う方向を見ると、
「こっちはフローライトだね。」
《どう?》
「すっごく綺麗。そして何より楽しい!」
《本当!?怖くない?》
「うん。ウラノス、これからは一緒に飛んだりできるね!」
《!!!‥‥‥うん!》
ウラノスは最初、ちょっと泣きそうな感じだったけど、にっこりと嬉しそうに笑った。
やっぱり折角産まれてきたなら一緒に飛びたかったよね‥‥。
《ルリ、浮くだけじゃなくて動いてみようよ!》
「うん!」
それから私はウラノスにコツを聞きながら翼を羽ばたかせて山の周囲を少しの間飛んでみた。
「楽しいね。ウラノス。」
《うん!》
「あ。そうだ!折角だから誰か驚かせに行ってみようかな。」
《いいね!誰のところに行く?》
「そりゃあ、ここはやっぱり婚約者でしょ!反応を楽しんでも怒られない人だし。」
《面白そう!行こ!ルリ。》
「ちょっと待って。精霊達に言ってから行こ。」
《大丈夫だよ。この会話、聞こえてる筈だから。》
「え?そうなの?」
《うん。》
「ならいっか。よし、リヒトのところに行くよ~!」
《お~!》
山に残っていた精霊達は、そんな二人を微笑ましく思いながら見ていた。




