85話 王女姉妹の発散
ルリ達が話していると、ラウルと共に一人の女性がやってきた。
その女性はルリとユリの間に座る女の子を見ると、
「リアーナ!!」
「‥‥あ、お母さん!!」
女の子ーリアーナちゃんーの母親が来たらしく、ベンチからぴょんっと降りて駆けていった。
「あ。あの子、リアーナちゃんって名前だったんだ。」
と私が呟くと、ガクッとなる周囲。
「聞いてなかったのか‥‥。」
「聞く機会逃してた。」
そして母親と共にリアーナちゃんが戻ってきた。
「あの、娘のリアーナを助けて頂きありがとうございました。」
と真っ直ぐ私に向かってそう告げたあと、一礼した。
「いいえ。偶々居合わせただけですから。お気になさらないで下さい。」
「いえ。一国の王女殿下にこの様なこと‥‥しかも私が来るまで娘の面倒まで‥‥。」
その母親の様子をみていたリアーナはきょとんとしていたが、
「ルリお姉ちゃんってすごい人なの?」
「!!!」
母親が「何を言い出すんだこの子は!?」と言いたそうな顔をしていたが、
「えっと‥‥立場はすごい人だね。‥‥ってさっきも言ったな、これ。」
「ふふっ。そうね。‥‥えっと、リアーナちゃん?」
「なに?」
「私も、ここにいるお兄ちゃん達も立場はすごい人達なのよ?」
「そうなの?」
「ええ。そうよ。でも変わらず、お姉ちゃんって呼んでいいからね。あ、私の名前はユリよ。」
「ユリお姉ちゃん?」
「ええ。」
「俺の名前はリヒトって言うんだ。」
「私はルクスだ。私はこの国の公子だからまた遊べるぞ?」
「俺の名前はスヴェートだ。俺もこの国の公子だから街に来たらまた話し掛けてくれると嬉しい。」
「リヒトお兄ちゃんと、ルクスお兄ちゃんと、スヴェートお兄ちゃん?」
「「「ああ。」」」
「‥‥‥」
リアーナの母親が完全に固まってしまっていた。
「リアーナちゃんのお母様。」
「!!‥‥は、はい!なんでしょうか?」
「ふふっ。そんなにびくびくしなくても私達は咎めたりしませんよ?」
「え?」
「ああ。私達が咎めるつもりなら最初から名乗ったりしない。」
「あ。‥‥‥重ね重ねありがとうございます。」
「お母さん。帰ろ?」
「え、ええ。そうね。‥‥では皆様。失礼致します。」
「はい。またね、リアーナちゃん。」
「うん。またね!お姉ちゃん達。」
そして去っていく親子を見送ったあと。
「ラウルさん。」
「はい。なんでしょうか?ルリ姫様。」
「リアーナちゃんを人質にしたやつ、何か喋りました?」
「はい。宝石店の物を盗んだ後、逃げる途中で追いかけてきた店の者に捕まりそうになった様です。そして偶々その時側にいたあの子を人質に逃げようとしたそうです。」
「強盗か‥‥あと、恐喝に誘拐未遂‥‥暴行未遂‥‥」
「誘拐と暴行が未遂で終わったのはルリ姫様のお陰ですね。」
「リアーナちゃん、女の子だから跡が残る様な傷ができたら可哀想ですから。間に合って良かったです。‥‥そう考えると、犯人にちゃんと一撃入れとけば良かったかもしれませんね‥‥?」
ちょ~っと怒りが再びこみ上げてきましたよ~?
元から子供を人質になんてって怒ってたけど。
「そうね‥‥今からいく?ルリ。」
「行きますか。姉様。女の怒り、ぶつけてやらないと気が済まないですね。」
「そうね!」
「「「いやいや!まてまて!」」」
「何よ?」「何ですか?」
ジトッとした目を王子達に向ける王女姉妹。
「リヒト。子供を人質する様なやつ、許せるの?一撃入れてやらないと気が済まないとか思わない?」
「いや、確かに許せないが‥‥」
「スヴェン。女の怒り、発散させてくれないの?」
「いや、怒りは分かるが‥‥」
「「ならいいよね?」」
「「どうぞ‥‥。」」
「いやいや!二人共、なに負けてるんですか!駄目ですよ!」
「「なんでよ?」」
「ゆ、ユリ姉、ルリ。王女の二人を犯人に会わせられる訳ないでしょう?」
「「だから、なんで?」」
ずっとジトッとした目を向ける姉妹に一瞬たじろぐが、
「今、ルリが言った罪状だけで十分重罪人です。そんな危険なやつに会わせられる訳ないでしょう!?」
「「‥‥‥」」
「なら、ルクス。この怒り、どうしてくれる?」
「え?」
「そうよ。どうしてくれるのよ?」
「‥‥‥どうしましょう?兄上、リヒトさん。」
「「俺に聞くのか!?」」
「ふふっ。では、ちょっと移動した先に空き地がございますので、そこで鬱憤を晴らしますか?」
「「はい!」」
「ラウルさん。どこですか?」
「ご案内致します。」
「「「助かった‥‥。」」」
王子達3人がそんなホッとした声を出していたが、気にせずラウルの後について行く王女姉妹だった。
そして城壁の検問を通り、公都を出て空き地に到着すると。
「姫様方。ここなら好きに打って構いませんので、どうぞ。」
「ありがとうございます。ラウルさん。ただ、目標物がいりますね‥‥しかも今更ですが、鬱憤晴らしに精霊達を巻き込んでいいんでしょうか?」
「あ。それもそうね。」
《構いませんよ~!精霊術の練習にもなりますし、私達もあいつ許せなかったので、気持ちは同じです!》
《やり過ぎない程度までなら喜んで協力しますよ~!》
「「やった!!」」
「じゃあ、まずは目標物ですね。」
「そうね。ルリ、できる?」
《ルリ様ならできますよ~!》
「ふふっ。やってみます!ー我等を守りし壁を築け。【アースウォール】ー」
するとゴゴゴゴゴという音と共に目の前に土壁が出来上がった。
「さあ、ちょっと離れてあれに撃ちましょう!姉様。」
「ええ!」
「じゃあ、まずはやってみたかった弾からいこうかな。ー土よ。彼の者を撃つ弾丸となれ!【アースバレット】ー」
ドガッ
「私も。ー火よ。彼の者を撃つ弾丸となれ!【ファイアバレット】ー」
ドゴッ
「あ。ねぇねぇ。球と弾以外に何かある?」
《あとは矢とか槍でしょうか?》
「光は攻撃系ないの?」
《ありますよ~!それこそ矢や槍ですね。》
「「やってみたい!!」」
《いいですよ~!》
「「やった!!」」
「じゃあ、まずは私がやってみますね。ー光よ。彼の者を貫く刃となれ。【ライトスピア】ー」
ドスッ
「私も。ー光よ。彼の者を貫く刃となれ。【ライトスピア】ー」
ドスッ
「できたわ!ルリ!」
「やりましたね!姉様。」
いつの間にか鬱憤晴らしが精霊術の練習に変わっていた二人。
周囲は『まだまだ続きそうだ。』と気が済むまで見守ることにするのだった。
そろそろ思いっきり攻撃系を撃たせてあげたかったので書きましたが、まだ続きます。
最後は派手にいきます。




