81話 様々な話
和やかな会話は続いていた。
「ちなみにルリはどれぐらいでリヒトさんを呼び捨てする様になったんだ?」
「ルクス。ルリは数ヶ月もさん付けで敬語もとってくれなかったんだよ。」
「え?そうなの?セピオライトに着いた時には呼び捨てしてわよね?」
「はい。シュハイト大陸からエヴァンジル大陸に渡る船の中でやっとですよ。扉を通ってすぐに呼び捨てがいいって言ったんですけど、すぐには無理だと‥‥その後もなかなか呼び捨てにしてくれる気配がなかったので、もう一回言ってみたらやっとですよ。長かったですね‥‥。」
「「「ルリ‥‥。」」」
「だ、だって歳上ですよ?私達の身分も何も知らない状態で、しかもこんな綺麗な顔してる人の名前を呼び捨てにするとか‥‥半端じゃなく勇気がいったんですよ!」
「ああ~確かにな。」
「納得するのか!?ルクス。」
「はい。」
「即答された‥‥」
「じゃあ、ルリはリヒトの顔に慣れたから呼び捨てに変えたとか?」
「そんな感じです。姉様。」
《ルリ様。ありがとうございます。》
「ふふっ。いいよ。」
《ルリ様~私もスヴェートと話してみたいです。》
《私もユリと話したいです!》
「え?い、いいよ。おいで。」
また私が手を差し出すと精霊達が降りてきた。
「えっと、スヴェート殿下は土ですか?」
「え?ああ。そうだよ。」
「じゃあこの茶色の子ですね。」
「へ~。この子が俺に力を貸してくれてるのか?」
《そうだよ~!》
「姉様は火と光ですか?」
「うん。」
「じゃあこの赤色の子が火、黄色の子が光ですよ。」
《ユリ、見えてる?》
「ええ。見えてるし、聞こえるわ。」
《わ~!やった!ユリと話せる!あ、ユリ。私は光だけど、アスカ様みたいにそこまで怪我の治癒できないの。ちょっとした怪我なら治せるんだけど‥‥大怪我とかはアスカ様とルリ様じゃないと駄目なんだ。ごめんね。》
「ふふっ。なんで謝るのよ?少しぐらいならルリを手伝えるってことでしょ?十分よ。」
《うん。》
そうしてしばらく各々、精霊達との会話を楽しんでいると。
「皆様。」
「あ、イリス。どうしたの?」
「ふふっ。そろそろ昼食のお時間ですよ。」
「「「「「え!?」」」」」
「そんなに話してたの?私達。」
「その様です。」
「ありがとう。イリス。」
と言いつつ私達が立ち上がると、イリスの後ろから現れたメイドさん達がお茶会したあとを片付け始めてくれた。
私達が話しやすい様に声の届かない位置で待機していてくれていた人達だ。
「いえ。あ、そうだ。ルリ姫様、ルクス殿下。」
「「ん?」」
「元誘拐犯の方々、釈放になりましたよ。そろそろ城を出る頃です。お二人に会いたいそうですが、どうなさいますか?」
「え?会っていいの?」
「ええ。陛下の許可は出てますよ。」
「なら会いたい。」
「俺も。」
「では、玄関口に参りましょうか。」
「うん。」
「ルリ、ルクス。私達は先に行ってるわね。」
「はい。姉様。」
そして、私とルクスがイリスと共に玄関口に行くと。
「お!姫さん来てくれたか。大丈夫なのか?倒れたって聞いたが‥‥。」
「はい。もう大丈夫ですよ。すみません。私が寝てたばかりに釈放が遅くなってしまって。」
「いや。むしろ釈放されるとは思ってなかったからな。だから、改めて。」
と言うと、お頭さんが跪いた。
「セピオライトの第二王女殿下、並びにフローライトの第二公子殿下。この度の我々の不敬を見逃して頂けたそのご温情、有り難く存じます。しかも我々の不躾な願いも叶えて頂いた王女殿下には感謝しかございません。このご恩、一生忘れません。」
「「!!」」
「‥‥‥あなたの気持ち、確かに受け取りました。話辛いので立って頂けますか?」
そう言うと立ってちゃんと私の目を見てくれた。
「お頭さん。今度は気軽に話し掛けてくださいね。」
「!!‥‥‥ふっ。ああ、そうさせてもらうよ。」
「私は特に被害はなかったが、私にもこれからは気軽に話し掛けてくれ。」
「ありがとうございます、殿下。あ、そうだ。姫さん。俺の名前、言ってなかったよな?」
「はい。教えてくれるんですか?」
「ああ。リデルっていうんだ。」
「おお。なかなか格好いい感じの名前ですね。」
「そうか?名前でもいいし、そのままお頭さんでもいいし、好きに呼んでくれ。」
「はい。分かりました。と言っても明日帰りますのでまた遊びにきますね。」
「ああ。じゃあそろそろ行くな、姫さん。殿下は会うことがあるだろうからまたな。」
「はい。」「ああ。」
そしてお頭さんは仲間と共に帰っていった。
その後、昼食の席に合流したルリとルクス。
そこには両国の王もいた。
「ルリ、ルクス。会えたのか?」
「はい。簡潔に申し上げますと、ありがとうと言われてまたねって話してきました。」
「ははは!そうか。」
「実はルリが寝てる間に事情聴取は終わっててな。犯人達全員が素直に話してくれたんだ。あのお頭って呼ばれてたやつ、リデルが素直に話せって部下達に言ってたそうなんだ。」
「そうなんですか?私を信じるとは言ってくれましたが、そこまでとは‥‥。」
「ルリ。今回は優しいやつだったってだけだ。命を狙われてもおかしくないのは忘れるなよ。」
「はい。父様。」
そして昼食後。
「で、みんな。今からはどうする?」
「う~ん‥‥‥あ、ルリ。前に案内した時に行こうとしてた所、行くか?」
「ん?‥‥あ。広場?」
「そうそう。」
「行きたい!あ、誘拐現場の公園もまた行きたい。」
「変わってるな‥‥普通行きたがらないぞ。」
「そう?だってみんなで行くんでしょ?なら、今度はリヒトも一緒だから安心できるし、大丈夫かなと。」
「それでもイリスは連れて行くからな。」
「分かってるよ。」
「ん?ルリ、ルクスに敬語やめたのか?」
「はい。本人の希望でしたし、姉様もスヴェート殿下もリヒトにまでそうしてやれって言われたので、じゃあと。」
「そうか。良かったじゃないか、ルクス。」
「ええ。今までは俺が一番歳下でしたからね。一人でも敬語無しで気安く喋れる人がいてくれた方が嬉しいですから。」
「え?私の為?」
「ああ。リヒトさんは別としても他は姉と将来の兄。俺が一番中途半端だろ?ならいっそ呼び捨てとかの方が話しやすいかなって思ってな。俺がそうしてほしかったってのもあるけど。」
「優しいじゃないか。ルクス。」
「一目惚れした弱みかしら?」
「ルクス‥‥‥そういえばお前も一目惚れって言ってたな‥‥‥気持ちは分かるが、改めて言う。ルリは渡さないぞ。」
「分かってますって。」
「前から仲が悪かった訳じゃないが、この短時間で随分仲良くなったよな。お前達。」
「それはそうですよ。父様。みんなルリが大好きですもの。」
「え?私ですか?姉様。」
「そうよ~?私も命の恩人でもある可愛い妹のルリが大好きだもの。リヒトにあげたくないぐらい。」
「え!?いやいや‥‥ユリ姉?」
「確かにそうね~。ルリ、お嫁に行くのやめる?」
「叔母上!?」
「ふふっ。母様、姉様。私が嫁き遅れてもいいんですか?」
「いいわよ?私がルリの面倒見てあげる。」
「え‥‥いやいや‥‥え?私、お嫁に行きますよ?」
「ふふっ。私も母様も冗談よ。ルリならたまに帰ってきてくれるでしょ?」
「はい。それは勿論。もしリヒトと喧嘩する様なことがあったら真っ先に帰ります。」
「え!?」
「ふふっ。喧嘩しなければいいじゃない。」
「リヒトを弄るのはこれぐらいにして、そろそろ行かないか?」
「そうですね。兄上。ユリ姉とルリも。」
「「うん。」」
「俺‥‥疲れる為に来たのか‥‥?」
「ふふっ。ほら、行こ。リヒト。」
と言って私がリヒトの手をとると、嬉しそうにふわっと笑った。
「ああ。」
‥‥‥そういえば、王子と王女が揃って街を歩いて大丈夫なんだろうか‥‥?




