77話 再び口戦
ルリが言い出した我が儘。
それは「誘拐犯全員、無罪放免で。」だ。
「いや、さすがに無罪放免は駄目だ。ルリ。」
「何故ですか?父様。私が王女で、殿下が公子だからですか?」
「ああ。そうだ。」
「この誘拐事件事態がこの私達の立場が原因だとしてもですか?」
『え?』
「どういうことだ?ルリ。」
「誘拐された後、犯人が何人いるか、どんな人なのか。目的も含めて不明なまま私は殿下と共に拘束されてました。これは殿下から伺ってますよね?」
コクンと全員が頷いた。
やっぱり私が寝てる間に殿下に分かる範囲で話を聞いてたんだな。
「殿下を逃がした後、犯人達と話したのは例の頼まれ事だけではありません。頼みを聞いた後で何故すぐに声を掛けてくれなかった?と問い質してたんです。」
『え!?』
「犯人達、私達が街を歩いているのを見ていたそうなんです。あの時私達は街の人達と普通に話していました。なのに犯人達が言ったのは「話し掛け辛かった」です。何故か分かりますか?」
『‥‥‥?』
全員きょとん。
「街の人達は殿下が一緒だったので話せてました。ですが、犯人達にとって用事があるのは私。見た目もあって警戒されることを恐れたのと、私は他国の王女であり人柄を知らない。確実に話を聞いてもらうなら連れていった方が早い。私が気付いたのはそこでした。実際、私があっさり「言ってくれれば普通に動いたのに」と言うと、素直に声を掛けてみれば良かったと、殿下は巻き添えだったと、犯人達はそう仰ってました。」
『‥‥‥。』
一先ず最後まで聞いてくれる感じかな?
「それに私は無傷でした。拘束された手首は痛かったですが、それだけです。そして寝転がってるのが疲れたから足の拘束だけでも解いて座りたいと言ったら、あっさり解いてくれて体を起こしてくれました。私の質問にも答えて下さいました。話してて思いましたが、そもそも誘拐するつもりじゃなかったと思います。あの地域の人達を心配して奔走しただけの優しい人達です。そんな人達を断罪するんですか?森の異常を知らせてくれたのに?私が治癒を使えると、どうやって知ったかは知りませんが、それでも怪我を治してもらう為ならと動いた人達ですよ?」
「‥‥‥ルリが自分が戻るまで犯人達の罪を勝手に決めるなと言ったのはこの為か?」
「はい。そうです。‥‥‥ルクス殿下。」
「なんだ?」
「殿下も誘拐の被害者です。殿下も罪を決める権利があります。‥‥‥犯人達を断罪しますか?」
「‥‥‥。」
「陛下、ルクス殿下。失礼を承知で申し上げてもよろしいでしょうか?」
「ああ。」
「私の話を聞いてもまだ犯人達を断罪すると仰るなら、私はお二人を軽蔑します。」
「「!!!」」
「‥‥‥‥国王陛下。第二王女殿下は立派な方ですね。」
「ああ。最初は何を言い出すのかと思ったが、言うだけの理由はあったな。」
「私も最初は驚きましたが‥‥ルリ。私も罪を与えるつもりはない。」
「‥‥本当ですか?」
「ああ。確かに手首とかは痛かったが、他は怪我とかしてないしな。私はさほど被害は受けてないし、誘拐された時に犯人達の顔を見てないし、ルリと犯人達のやり取りとか見て、本当に誘拐犯か?と疑った程だ。私には罪を与える理由がない。‥‥という訳で父上。私とルリの被害者両方が無罪を望んでいます。それでも罪を与えようなどとは申しませんよね?」
「!!‥‥‥ふっ‥‥ああ。私の負けだ。無罪放免とする。国王陛下も異論ございませんか?」
「ああ。ルリがやめろと言うなら構わんよ。」
「やった!あの優しい人達に罪を与えるとか申し訳ないですからね。気さくで話しやすい人達でしたし。‥‥‥あ。そういえば陛下、どうして魔素溜まりに気付けなかったんですか?」
「ああ。子爵家のことは聞いたか?」
「はい。あの地域は子爵領だったのが、先月当主様が亡くなって後継ぎがいなかったから公家の直轄地になったとルクス殿下が教えてくださいました。」
「ああ。元々、公都に領地があること自体が珍しいだろ?」
「そうですね。普通は領地がある貴族家が公都にも屋敷を構えるだけですよね?領地を持ってなくても屋敷だけの筈ですし。」
「その通りだ。あの子爵家が特別だったんだ。公都の中に森がある時点でずっと危険視されていてな、代々あの子爵家が見張りをしていて森の様子を定期的に報告してもらっていた。子爵が亡くなってすぐ騎士達を向かわせたが、現地の者達と折り合いが悪かったみたいでな、ちょっと苦慮していたままだったんだ。最後の子爵の報告で既に魔素溜まりができつつあるかもしれないと報告があったから余計にな。」
ん?
「えっと‥‥‥陛下?今のお話しですと、陛下は魔素溜まりの可能性をご存知だったと?」
「ああ。可能性だったからそれの確認段階で止まってしまった。」
「‥‥‥陛下。陛下も何故、私に仰ってくださらないんですか?」
「確かにな‥‥確定してから相談しようとしていたのが甘かったらしい。まさか自分の目で見にいく訳にもいかないからな。」
「結果的に現地の人達と協力や連携が上手くいかない間に魔物達に襲われ、怪我人が出てもすぐには城に報告がくることなく、都合よく街を歩いていた私達が誘拐されることになったと。」
「そうなる。」
「‥‥‥やっぱり無罪放免以外ないじゃないですか。」
「‥‥‥だな。」
「‥‥‥今回のことで私は二つのことが分かりました。一つは王族に民から話し掛けては不敬だという風潮は時に邪魔になるということ。もう一つは‥‥私はもっと強くならないと駄目だということですね。」
『え?』
「ルリ、一つ目は同意するが、二つ目は何故だ?ルリは十分、強いだろ?」
「いいえ。殿下、森に入った時にオリジンが言ってました。あの魔素でも軽い方だと。でも私の目標は魔素の塊を破壊することです。今回の軽い濃度の魔素を消しただけで3日も寝るようじゃ、塊を破壊するなど無理でしょう。」
『塊?』
フローライトの方々のみがきょとん。
「あれ?父様。私の話したことをフローライトの皆さんにお伝えしてないのですか?」
「ああ。ルリが口頭で話した方がいいかと思ってな。」
「そうでしたか‥‥陛下、妃殿下。20年前ぐらいにあったでしょう?魔素の塊。」
「あ、ああ。」
「妃殿下が壊したと思っていただろうその塊は扉の向こうにあります。」
『え!?』
「私が育った世界、しかもわりと住んでいた近くに空から落ちてきました。」
「そうなの!?被害は!?ないの?」
「はい。幸い死者は出ていません。私が扉を通ってこちらに来るまではですが。」
「そう‥‥良かった‥‥。」
妃殿下が本当にホッとした顔をしながら呟いた。
「一先ず、ルリの無事が確認できて良かったよ。」
「そうだな。とりあえずルリの回復のためにも今日は解散するか。」
『はい。』
そして話は終わったと各々、部屋を出ていった。
もっと強くならないとな~。でも、どうやったら強くなるんだろ?
私はそんな事を考えている間に眠りについていた。




