71話 それぞれの場所で
ルリが誘拐犯と話し始めた頃。
ルクスはフローライトの城の玄関口にいた。
ルリの指示が「城に帰せ」というざっくりしたものだったので、ラウムも「ここなら誰か見つけるかな」ぐらいの感覚で送ったからである。
それはある意味正解だった。ただ、目の前に突然拘束されたルクスに硬直する警備担当騎士を作り上げただけだった。
だが、そこに都合よくイリスが戻ってきた。
「ルクス殿下!?」
「イリスか。」
「‥‥‥。」
そしてルクスの様子を見て色々察したイリスは拘束を解きながら話し掛けた。
「‥‥‥殿下。確認ですが、殿下はルリ姫様と共に捕まり、姫様の精霊術によって助かったということでお間違いないでしょうか?」
「ああ。合ってる。ルリのお陰で助かったし、ルリを助けに行くつもりでいる。精霊に場所を聞いて教えてくれたからすぐに向かえる。だからイリス。私は父上達に報告したら戻ってくるから、その間に我が国の騎士達をここに集めておいてくれ。」
「は!畏まりました。」
そう話している間に拘束が解かれていたので、ルクスはイリスと別々の方向に向かっていった。
公王の執務室に許可を得て入ると、そこにはルリの父でもあるセピオライトの国王もいた。
「ルクス、どうした?ルリ達に街を案内していたんじゃないのか?」
「はい。そうですが、急ぎご報告したいことがあるので参りました。」
と言ったルクスの様子を見て、二人の王の雰囲気がガラッと変わった。
「何があった?」
「公園で休憩していた時です。子供達に連れ出され、イリスが離れた瞬間を狙われて私とルリ姫が誘拐されました。」
「「誘拐!?」」
「‥‥で、ルクスがここにいるということはルリが?」
「はい。自ら囮になって時間を稼ぐと言って、私だけ先に精霊術で送ってくれました。私もついていながら申し訳ありません。陛下。」
「ああ‥‥‥それで、ルクス。どうするんだ?」
「はい。ルリ姫が精霊から場所を聞いて教えてくれましたので、これから救出に向かいます。幸い、イリスも先程戻ってきましたので今、我が国の騎士達を集めてもらってます。必ず私達の手で救い出します。」
「ああ。ルリを、我が娘を頼むな。ルクス。」
「はい。」
そして短い報告を終えて、ルクスは救出に向かうべくさっさと出ていった。
それを見送った二人の王は。
「‥‥‥ルリは勇敢ですね。」
「ああ。ちゃんと判断もできたようだ。」
「というと?」
「まず、ここはルリにとって初めての地。地理は分からんだろ。その点、ルクスなら場所が分かれば助けに行ける。騎士を動かすのも自国の公子であるルクスの方が適任だ。それにルリは一人ならどうとでもなる。精霊術だけではなく、剣術もやってるからな。近衛程の実力はないが、ある程度なら大丈夫だろう。それにいざとなったらルクスを逃がした様に自分も逃げられるからな。」
「すごいですね‥‥‥ルリは。」
「ああ。だから実は大して心配してないんだ。」
「それはそれでどうなんですか?」
「ははは!大丈夫だ。ルリならな。」
「‥‥‥陛下。先程ルクスも申し上げましたが、私も。我が息子がついていながら、ルリ姫を危険に晒してしまい申し訳ありません。」
と公王は頭を下げた。
「ああ。無事に帰ってきたらそれでいいさ。」
「ありがとうございます。」
*****
その頃ルクスは城の玄関口に戻って来ていた。
そこには既にイリスと団長達や騎士達が集まっていた。
「待たせたか?」
「いえ。今丁度集まったところです。」
「まずは、イリス、シュタル団長。貴国の姫を危険に晒してしまい、すまなかった。」
「いえ。殿下。悪いのは私です。姫様達から離れてしまった私の落ち度です。」
「それに姫様は場所を教えてくださったんでしょう?ならばこうしている間にも早急に姫様の救出に向かうべきかと。」
「そうだな。‥‥行くぞ!」
『は!』
*****
一方大事になりつつあることを知らないルリは誘拐犯達の頼みの内容を聞いていた。
「え~。それなら普通に仰ってくだされば行動しましたのに‥‥。」
「え?そうなのか?」
「はい。ちなみに街を歩いてる間、私達を尾行したりしました?」
「あ、ああ。」
「なら私達がちょこちょこ街の人達と話してるの見ましたよね?」
「まあな。」
「なら私達に普通に話し掛けてくだされば良かったのに‥‥。」
「いや、俺達が声掛けたら警戒するだろ。」
「まあ、それは警戒ぐらいするでしょうけど、それは当たり前では?」
「うっ。」
「集団で話し掛けずにお二人で声を掛けてくだされば、警戒はしても話ぐらい聞きましたよ?」
「あの時は焦ってたからな‥‥‥試してみれば良かった‥‥。」
「ですね。今更遅いですけど。」
「「え?」」
「多分ですが、イリスが救出に向かってくれてると思うんですよね~。」
「え?さ、さすがにここの場所はすぐには分からんだろ?」
「さあ~?どうでしょうね~?」
「な、何かあるのか?」
「何かとは?」
「俺が聞いてるんだが‥‥。」
「ふふっ。ありますよ~。で、どうします?もうすぐ来てくれると思いますよ?素直に投降してくださるなら庇いますよ?」
「くっ。なら、騎士達が来る前に逃げるだけだ。立ってくれ。移動する。」
「え?すぐには無理です。」
「なんでだ?」
「ずっと座ってたので足が痺れました。」
「「‥‥‥。」」
「どうしますか~?私の足が治るの待ちます?それとも私を抱えます?抱えたら目立ちますよ~?」
「「‥‥‥。」」
「迷ってる間に騎士達は近付いてきますよ~?」
《ルリ様。先程から犯人達を煽ってどうするんですか!》
返事しないって言ったのに。
確かに遊び過ぎかな。足が痺れたのは事実だけど。
《!‥‥ルリ様。近くまで来てくれた様です。》
私は未だ後ろで拘束されたままの手を動かして、右手の親指を立ててグッと「分かった」と示すと、ラウムも頷いてくれた。
と、そこにダダダダダダとすごい足音を立ててまた一人男性が入ってきた。
「お頭!城の騎士達がきた!」
「なんだと!?」
「どうします?」
「逃げるしかねぇだろ。姫さん、もう動けるか?」
と聞かれたのでゆっくり立ち上がってから
「はい。動けますよ~!」
「よっしゃ。とっとと逃げるぞ!」
「「おう!」」
そしてまた一人男性がきた。
「お頭‥‥‥もう包囲されちまった‥‥。」
「なんだと!?」
「おお~!早いですね~!騎士達優秀ですね~!」
「やっぱり姫さんの仕業か。」
「ふふっ。で、どうします?素直に投降しませんか?連行する前に頼まれたことやりますよ?」
「本当か!?」
「はい。お約束します。」
「‥‥‥分かった。上の奴らに言ってこい。抵抗するなと。」
「は、はい。」
と、ここに知らせにきた一人に指示を出すと
「他国の王女だが信じるぜ、姫さん。」
「ふふっ。ありがとうございます。」
そして誘拐犯達が抵抗をやめたことで、騎士達やイリス、シュタル団長、ルクス、グロス団長達はあっさり中に入ってきたのだった。




