70話 覚悟と口戦
翌日。
私は午後から宣言通りイリスを連れて城下の公都の街に来た。
ちなみにセピオライト、ラズライトで国民に囲まれたあれはここ、フローライトでもあった。
ただ、あっという間に去ってくれた。
何故か。ある意味守護神?がいたからだ。
ルクス殿下である。何故かついてきてくれた。そして「観光案内したいから通してくれ」と言ってくれた。
いや、「案内がいた方がいいだろ?」って言ってくれたな。
確かにフローライトの地理に詳しくない私を案内してもらえるのは有難い。イリスもそこまで詳しくないって言ってたしね。
ただ、この後起きたことを思うと、やっぱりついてきてもらわない方が良かったかな~とちょっと思う。
ちょっとというのは一人になっても希望が持てたからだ。
*****
街を歩きながらルクス殿下が「あっちの店は~」「この店は~」と色々説明してくれた。普段から私みたいに街に来てるのか?と疑うくらい街のことに詳しかった。
そしてことが起きたのは歩き回って休憩しようと公園のベンチに座った時だ。イリスは子供達に「遊んで~」と連れていかれ、私とルクス殿下は「ここにいるから相手してあげて~」とイリスを見送った。その後、そのまま二人で休憩していたら不意に背後から首に(多分)手刀を食らわされた。
薄れていく意識の中で殿下も倒れていくのが見えた。
次に目が覚めたのは薄暗い空間だった。手足を後ろで縛られて身動きができない様にされていたが、特に外傷とかもなく服も誘拐される前のままだった。それを確認し終えたあと、状況を把握しようと床に転がされていた体を何とか反転させてみると、そこには綺麗な顔が!!‥‥‥って殿下だった。
無事っぽいので安心できたが、さてどうするかなと思っていたら殿下も起きた。
「ん‥‥‥うわっ!」
「(殿下。お静かに!)」
「(あ、ああ。すまん。ここがどこかは‥‥‥‥分からないな。)」
殿下は周りを見渡しながら答えた。
「(殿下もご存知ないですか‥‥‥とりあえず殿下が起きてくださって良かったです。これで行動できます。)」
「(ん?何か策でもあるのか?)」
殿下がこちらに顔を向けて聞いてきた。
「(ふふっ。巫女を舐めてもらっては困りますわ。)」
にっこり笑顔で答えました。
「(その笑顔。余程自信があるんだな。)」
「(ええ。口を塞がれなくて良かったです。ただ、殿下には先に城に帰って頂きます。)」
「(え?)」
「(先に城に帰って、私を助けに来て下さい。)」
「(それはいいが、どうやって場所を特定するんだ?イリスもさすがに俺達を追えてないだろう?)」
「(でしょうね。ですが、問題ありません。巫女の実力の一旦、お見せしますわ。)」
「(あ、ああ。そうか‥‥分かった。ただ、これだけは約束してくれ。俺達が来るまで無茶しないでくれ。)」
「(それは難しい相談です。誘拐犯が何もしないとは言い切れませんから。)」
「(そうだが!)」
「(殿下。申し訳ありませんが、こうして話してる間に気付かれるかもしれません。行動を開始させて頂きますね。)」
「(‥‥‥。)」
「(ー空間を司りし精霊ラウム。巫女ルリの名の元にその姿を現せー)」
「!!!」
《お呼びですか?ルリ様‥‥って何してるんですか?》
「(見て分かるでしょ?捕まったの。それよりラウム。ここがどこか分かる?)」
《え?えっと‥‥‥はい。公都の西にある寂れた区域の一角ですね。わりと大きめの建物の地下ですよ。》
それを殿下に伝えると。
「(その場所なら多分分かる。ちょっと時間は掛かるが、なるべく速く行動してみせる。)」
「(お願いしますね。‥‥ラウム、殿下だけフローライトの城に送って差し上げて。)」
《殿下だけ?ルリ様は?》
「(残って時間稼ぎするの。危なくなったらラウムが私も城に送って。それならいいでしょ?)」
《‥‥‥畏まりました。》
そう言って(納得いかないって顔のまま渋々)殿下の下に空間移動のための裂け目を作ってくれた。
そこから下に落ちながら「(すぐに来る。)」そう言って殿下は消えた。
「(ラウム。裂け目消しといて。気付かれるとまずいから。)」
《はい。》
「(あと、しばらくラウムとは話せないだろうけど見守っててね。)」
《勿論です。いざという時はルリ様の判断を待たずにお送りします。》
「(うん。それでいいよ。ありがとね。)」
《いえ。》
そして少し経った頃に誰かが入ってきた。
手に松明を持った細身の人と大柄な人。その二人の男性が中に入ってきたが、他にも後ろに数名の人がチラッと見えた。チラッとなのは入ってきた二人がそこで扉を閉めたからだ。
「お。起きてらっしゃいましたか。姫君。」
と細身の人。
「こんな薄暗いところまで連れてきてすいませんね。」
と大柄な人。
ふむ。私が王女と知ってて誘拐したと。
「謝って頂けるならまず、足の拘束を解いてくださいませんか?この態勢疲れてきたので、座りたいです。」
「まあ、それぐらいなら。」
と大柄な人が私に近付いて足を拘束していた紐を解いてくれて、しかも肩を掴んで起こしてくれた。
「あら、起こしてまで頂いて。ありがとうございます。」
「い、いや。それはいいが姫さん、あんた誘拐されたって分かってるよな?」
「ええ。勿論。でも話ぐらいは聞いてみようかと。私は昨日フローライトに着いたばかりで道に詳しくありません。逃げても無駄かなと思いますから。」
「肝の座った姫さんだな‥‥‥って殿下がいねぇじゃねぇか!どういうことだ!?」
と細身の人に向かって怒鳴った。
気付くのおそっ!
「し、知りませんよ!ここから逃げるなんて不可能です。ずっと地下の入り口は見張ってましたから逃げようとしたら分かりますって!」
「それもそうか‥‥ならなんで殿下だけ消えた?」
「さあ?」
「‥‥‥まさか姫さんの仕業か?」
「知りませんわ。というか、殿下もここまで一緒に連れてきたんですか?」
私がというより、ラウムに頼んだからね。
とりあえずできるだけ知らんぷりだ。
「‥‥‥一緒に入れたよな?」
「‥‥‥はい。」
素直か!
「あの、とりあえず何故私は誘拐されたのか教えて頂けませんか?」
「ん?まあ、まだ時間あるしいいか。姫さんにやってもらいたいことがある。」
「なんでしょう?聞くだけ聞いてみたいです。」
「‥‥‥姫さんに危機感ってもんはないのか?」
「それを誘拐した方が仰るのですか?」
「まあ、確かにな。」
「‥‥‥父様に‥‥」
「え?」
「父様。いえ、陛下に言われてますから。私は昔と違ってこれからは命を狙われてもおかしくない立場になると。そしていざとなったら国民の剣となり盾になると。だから今日も護衛のイリスと一緒にいたんですから。」
「そうか。覚悟はあるってことか。」
「黙ってやられるつもりもありませんよ?あ、先に質問よろしいですか?」
「え?‥‥なんだ?」
「イリスを私から離す為に子供達を利用したんですか?」
「脅してはないし、誰も殺してないぞ?姫さんに話がしたいから騎士を連れていってくれないか?って言っただけだ。」
「では、本当に子供達に害を与えたとか脅したりはしてないのですね?」
「ああ。」
「とりあえずそれならいいです。」
「‥‥‥やっぱり一国の姫だな。他国とはいえ自分より子供の心配か。」
「あなたも誘拐犯にしては優しい方ですね。足だけでも拘束解いてくれましたし、ちゃんとお答え頂けてますし。」
「まあ、強引なやり方しちまったが、俺達は姫さんに頼みがあるだけだからな。殿下は巻き添えだったが、二人共傷付けるつもりはない。」
「あれ?そうなんですか?」
「ああ。俺達が頼みたいのは‥‥」
と話してくれたことは‥‥
ルリが言った国王との会話ですが、実はこういう覚悟の話もしてたっていうのがあるんですが、本編に書き損ねてます。
いつかどこかのタイミングで閑話として載せられたらなと思います。




