7話 私の力
一方ルリがリトを両親の元に送り届けていた頃。
リヒトは化け物達との戦いが続いていた。
ルリとあの子‥‥逃げられたかな‥‥俺もそろそろ逃げないとまずいかな‥‥。
さっきの背中に受けた傷‥‥‥これがないならな‥‥すぐにでも動けるんだが‥‥‥
そう考えている間も化け物を剣で倒し続けていた。
すぐに逃げられなかった理由はルリ達が去った後、時間稼ぎをしている間に化け物に取り囲まれたからだった。
くそっ!数が多いな‥‥‥あれ、調整が難しくてあんま得意じゃないんだけどな。でも道を作る為にもやるか。
「【ウォーターバレット】」
この攻撃で一瞬化け物達が消えて道が出来たので、その瞬間走り出そうとしたが、すぐにまた囲まれ逃げ損なった。
くそっ!駄目か‥‥‥どうするかな‥‥‥
と再び剣で戦いながら考えていると、
「リヒトさん!」
「え!?」
今の声、ルリだよな?
くそっ!こいつらが邪魔で見えない!
「リヒトさん!無事ですか!?」
やっぱりルリか。
「ルリ!無事とは言えないが、生きてはいる!それより何で戻ってきたんだ!」
「!‥‥良かった‥‥リヒトさん!さっきの子は避難させてきました!」
「それは良くやったと言いたいが、だから何で戻ってきたんだ!」
「む。リヒトさんが心配だったからに決まってます!」
「だからって!‥‥‥‥‥くそっ!切りがない!」
リヒトさん‥‥‥姿が見えないけど、もしかしてあの化け物達の中?
とその瞬間、化け物の内の数体がルリの方を向いた。
「「え?」」
そしてルリの方を向いた化け物達は一斉にルリに向かって来た。
「え?嘘‥‥‥こっちにくる‥‥」
「ルリ!逃げろ!」
「え‥‥あ、あれ?‥‥動けない‥‥さっきは動けたのに」
「くそっ!させるか!」
私に向かって来た化け物達をリヒトさんが後ろから剣で倒していったが、残りの一体がそれを気にすることなく私に向かって来た。
「や、やだ‥‥‥動いてよ!私の体!‥‥あ‥‥」
「ルリ!」
ここからはスローモーションを見ている様だった。
気付けば化け物は目の前にいて「あ、まずい‥‥」と分かっても動けなかった私と化け物の間にリヒトさんが入り込んだ。
そして私が受ける筈だった攻撃をリヒトさんが受けて、それと同時に化け物を剣で倒していた。
「ぐぁ!‥‥」
リヒトさんの苦悶の声で現実に戻った私は倒れてきたリヒトさんを咄嗟に受け止めようとしたが支えきれずに私は座り込み、リヒトさんを抱き抱える状態になった。
「リヒトさん!」
「‥‥くっ‥‥ルリ‥‥無事か?」
「リヒトさん‥‥‥‥ごめんなさい‥‥私のせいで‥‥足手纏いでごめんなさい‥‥‥」
「泣くな。しょうがないだろ?だが‥‥さすがにこれ以上は俺も戦えないからな‥‥ルリ。俺を置いて逃げろ。」
「そんな事できる訳ないじゃないですか!私、目的地の場所も知らないんですよ?今生き残っても時間の問題です!」
「だが‥‥ほら、さっき俺が倒したとはいえまた押し寄せてきてる‥‥‥逃げ‥‥て‥‥くれ。」
「リヒトさん?‥‥‥リヒトさん!」
嘘‥‥返事がない‥‥‥
「リヒトさん!‥‥‥やだ‥‥一人にしないで‥‥」
「‥‥‥‥」
「リヒトさん!‥‥‥嫌ゃゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
その瞬間ルリの周りに光の柱が生まれた。その光は広がっていき、やがて街を覆い尽くした。
それに合わせて化け物達は次々と光に呑まれて一瞬で消えていった。
その事にリヒトの首元に顔を埋めて泣いていたルリは気付いていなかった。
やがて光が終息していくと‥‥
「ルリ‥‥‥苦しいんだが‥‥」
声が聞こえて顔を上げると、リヒトの目は開いていた。
「え?‥‥‥リヒトさん?」
「はは!‥‥やっぱりルリが力使ったらすごいな。」
「え?」
「ほら、見てみろ。あれだけいた化け物達が全ていなくなってる。」
「え?‥‥‥‥本当だ‥‥‥え?な、なんで?」
「だから、ルリの力だって。」
「え?で、でも私の力は人を傷つける‥‥」
「何があったか知らないけど、化け物達を倒してくれたのはルリの力だぞ。」
え?‥‥‥じゃあ‥‥「あれ」もできるのかな?
なら、泣いてる場合じゃない!
涙で濡れていた目を袖で拭ってから。
「リヒトさん。」
「なんだ?」
「私を信じてくれますか?」
「ん?よく分からないが信じるぞ?」
「躊躇なしですか‥‥‥どちらにしてもこのままだとリヒトさんの命は無いですよね?」
「そうだな。実際、今は喋ってるのがやっとだ。多分、このままの状態で次気を失ったら今度は起きれないだろうな。」
「じゃあ、私が今からやろうとしてることが失敗しても文句ないですよね?」
「おう。」
「そこまで信じてもらえるとは‥‥‥とりあえず頑張ってみます!久しぶりなので大いに不安ですが、リヒトさん。失敗しても一緒に死にますから。」
「何するか知らないが、是非とも成功させてくれ!」
さて、あの時以来だけど、やってみるか!