5話 二転三転する会話
そして再び歩き出した私達。
しばらく無言が続いたことが気になったのか、リヒトさんが話し掛けてくれた。
私は無言でも平気なんだけど。
「なあ、ルリ。」
「はい?」
「日本にいる時の事、聞いていいか?」
「はい。いいですよ。」
「両親の他に兄妹がいただろ?何歳差だったんだ?」
「ああ、まず一番上の義兄が4歳上の高校3年生。2人の義姉は双子で2歳上の高校1年生です。なのでリヒトさんと義姉達は同い年ですね。」
「へ~。高校生って学生だよな?」
「はい。そうです。私はまだ中学生だったので学校は違いますけどね。」
「へ~。ルリは学校に友達とかいたんだよな?」
「はい。あ、幼なじみもいましたよ。」
「幼なじみ?男か?」
「はい。そうですよ。彼氏だったこともありますね。」
「え!?」
「え?」
「いや‥‥ん?彼氏「だった」?まさか俺と来る為に別れたのか?」
「ああ‥‥違いますよ。去年、数ヶ月だけの彼氏です。とっくに別れてました。ただその人、雅って名前なんですが、優しい人で。その後は友達に戻ってくれたんです。(私、ひどいことしたのに‥‥)」
「ん?最後、聞き取れなかった。」
「いえ。大したことではないので。」
「そうか?」
そこでまた会話が途切れた。
ルリはとりあえず聞きたいことがなくなったのかな?というぐらいにしか捉えてなかったが、リヒトの心の中では。
ルリ、彼氏いたのか!?聞いてないぞ!?
幼なじみならお互いのことを知り尽くしてるってことだよな?
‥‥いいな‥‥‥。
でも何でたった数ヶ月で終わったんだろ?お互いのことを分かってる筈だからよっぽどのことがないと別れないよな?
‥‥‥よっぽどのことがあったのか?
聞きたいけど、聞いていいんだろうか?う~ん‥‥‥
そしてその後も無言が続き、夕方になってきた頃。
「リヒトさん。」
「‥‥‥‥。」
まだ心の葛藤を繰り返していたリヒトであった。
「リヒトさん!」
「わっ!な、何だ?」
「何だじゃないですよ。もう夕方ですよ?寝る場所の確保とかしないとじゃないんですか?」
「あ。確かにそうだな。」
「もぅ‥‥‥私、野宿とかしたことないんです。今後の為にも教えてもらえますか?」
「ああ。勿論。ちなみにテントがあるぞ。さすがに女の子に雑魚寝させる訳にいかないしな。」
「え?どこにあるんですか?テントってわりと大きいですよね?」
「ああ。それは後で見せるとして、問題は場所だな。」
「‥‥‥そうですね。」
一応私達は街道を歩いていた。勿論、森が側にあったりする。
「それにしても街道を通ってるのに馬車が一台も通らないのはおかしいな‥‥‥。」
「あ、やっぱり馬車なんですね。」
「ん?」
「リヒトさんも私を迎えに来てくれた時見ましたよね?日本では移動は車とか自転車とかだったので、こっちの世界はどうなんだろ?と思ってたところだったんです。」
「ああ。確かに見たな。いろんな形のに人が乗ってたやつだろ?」
「はい。」
「で、それはいいとしてどこで寝るかだが‥‥」
「休憩場所とかないんですか?」
「あ。あるな。あともう少し歩いたらある筈だから、そこで休もう。」
「はい。分かりました。」
そして歩き続けていると、馬車を街道から避けられるスペースがあった。休憩スペースだ。
「ここですか?」
「ああ。誰もいないし、この広さを堂々と使うか。」
「そうですね。」
「さて‥‥‥あ、言うの忘れてたがテント一つしかないから一緒に寝ることになるからな。」
「え!?」
「とりあえず出すな。よっ‥‥‥っと!」
リヒトさん何もないところからテントを出すと、そのまま固定し始めた。
「え‥‥え!?」
「ん?どうした?ルリ。」
「い、今何もないところからテント出しましたよね?」
「ああ。これは異空間収納だよ。だからテントを立てたまま出しただろ?出したら固定させるだけって素晴らしいよな。」
「‥‥‥‥‥何から聞いたらいいんだろ‥‥‥。」
「ん?どうした?」
「いえ‥‥。」
「? とりあえず固定し終わったから中、見てみるか?」
「はい。」
そしてテントの中に入ると、私はまた固まった。
え?これ、テント?テントの中にベッドって入ってるものだったかな?しかも2つも‥‥‥そんな訳ないよね!?
それになに‥‥この広さ。あのテントの見た目と中の広さが一致しないんだけど、どうなってるの!?
固まった私を見たリヒトさんは満足気に話し出した。
「驚いたか?一緒に寝るって言ってもベッドはちゃんと分けるに決まってるだろ?」
「リヒトさん。私が驚いてるのはそこじゃありません。何ですか。この広さ。どう考えても外観と中の広さが一致してませんよね?それにこのテント自体いきなり異空間収納?から出したとか言われても意味不明なんですよ!日本にそんな能力のある人なんかいません!さっきから私は疑問しかないんです!」
「お、おぅ‥‥ごめん。」
「はぁ‥‥戦ってる時は格好良かったのに‥‥‥変なところで天然出さないで下さい‥‥‥。」
「え!?」
「‥‥何ですか?」
「格好良かった‥‥‥のか?」
「‥‥‥‥‥はい。」
「そ、そうか。」
「て、照れてる時じゃありません。夕食どうするんですか?」
「お、おう‥‥。夕食も異空間収納にあるから大丈夫だよ。」
「え?」
「今出すな。」
と、言ってリヒトさんはまず椅子とテーブルを出した。
テーブルの上に野菜サラダやステーキ、スープを出していった。
「‥‥‥‥」
「ルリ。色々聞きたいだろうが、とりあえず食べようか?」
「‥‥‥‥‥はい。そうします。」
そして2人共椅子に座った。
「「いただきます。」」
そしてまた無言になり食べ終わった後。
「ごちそうさまでした。」と私が言うと、
「なあ、ルリ。「いただきます」と「ごちそうさま」ってなんで言うんだろうな?」
「えっと、確か「いただきます」の方は動物の肉や魚だけじゃなくて野菜とかにも命はあるって考え方からきてると聞いたことがあります。「命を頂きます。」ってことで「いただきます」だったと思います。なんか他にも意味があったような気がしますが。あと、「ごちそうさま」は忘れました。」
「へ~。意味があったんだな。じゃあ手を合わせるのも?」
「はい。命に対する感謝の意味があったと思います。これも他に意味があったと思います。」
「へ~!」
「‥‥‥‥私達、話が二転三転し過ぎじゃないですか?」
「‥‥‥‥‥確かにな。」
「それで、とりあえず明日には街に着く予定なんですよね?」
「ああ。ただ、人間の国より安全とは言ったが、元は人間や狭間の者に対する差別があった国だ。王が代替わりして良くなってきたといってもまだ完全に差別がなくなった訳じゃないから、気をつけた方がいいのは変わらない。」
「そうですか‥‥‥見た目で気付かれる可能性はあるんですか?」
「いや。魔族も人間と見た目はあまり変わらない。」
「え?見た目変わらないのに差別されるんですか?」
「ああ。見た目は同じでも考え方や能力、寿命とか違う部分は幾つかあるんだよ。だからお互いに差別し合うんだ。」
「そうですか‥‥。」
「ルリ。とりあえず今日は早めに寝よう。一日中歩きっぱなしだったからな。それも初めてだろ?ゆっくり休んでくれ。」
「はい。そうします。」
そしてルリが寝始めたのを確認した後。
いつまた襲われるか分からないとリヒトは寝ずの番をしていた。
早速失敗しました。
こっちは19時の定時でアップするつもりだったのに‥‥‥。
今後は19時定時にアップしていきます。
それ以外の時間にアップしてたら間違えた時です‥‥‥。