3話 旅の始まり
当初は世界を移動したタイミングでルリの名前表記をひらがなからカタカナに変えましたが、読みにくいと思い、最初からカタカナ表記に書き変えました。
翌日、早朝。
私なりに早めに起きるつもりだったのだが、それでも遅かったらしく、心臓に悪い起こし方をされた。
「ルリ、起きろ。」
「ん~‥‥」
「ルリ、俺も可愛い寝顔は見ていたいが起きてくれ。」
ん?この声、誰?義父さんでも義兄ちゃんでもない?
私がゆっくり目を開けると、目の前にめちゃくちゃ綺麗な顔が!
「!!!!‥‥‥‥‥‥‥リヒトさん?」
「おう。起きたか?ルリ。」
「‥‥‥‥はい。その綺麗な顔のお陰で。」
「お、おう‥‥‥そうか。」
「リヒトさん。私の寝顔見てたんですか?」
「ま、まあな‥‥。」
「リヒトさん。女の子が見せたくない姿っていくつかあるんですが、分かりますか?」
「へ?ごめん。分からない。」
「その一つは寝顔です。自分がどんな顔して寝てるか分からないから恥ずかしくて見せたくないんです。」
「もしかしてルリ、怒ってるか?」
「はい。怒ってます。寝顔は見られるし、リヒトさんは自分の顔がいいことを自覚してないみたいですしね。」
「お、おう。なんかごめん。」
「いえ。着替えるので出てください。」
「ああ。分かった。先に下に降りてるよ。」
「はい。分かりました。」
そしてルリの部屋から出たリヒトは。
な、なんだ‥‥‥あの可愛さは‥‥‥
ルリ、自分こそ可愛さを自覚してくれ。
寝顔‥‥‥可愛かったな‥‥‥俺、変じゃなかったよな!?
と心の中で呟きながら一階に降りていった。
そして早い朝食後。
「さて、そろそろ行くか。ルリ。」
「はい。」
私は何を持って行ったらいいか分からなかったので、結局義母さんに手伝ってもらって準備した。
勿論部屋は自分で片付けたよ?
そして義母さんが準備してくれたリュックを背負って玄関に向かったのだが。
「ルリ。靴持ったら戻るぞ。」
「へ?」
と言って本当にリヒトさんは靴を持って中に戻っていった。
訳が分からないまま言われた通り靴を持って戻ると、とあるところに向かった。
それはこれまで一度たりとも入ることを許されなかった地下室だった。なのでその手前で私は立ち止まり思わず聞いてみた。
「え?地下室行くの?私も入っていいの?」
「うん。いいよ。むしろ今日の為に入ることを禁じていたんだよ。」
「え?義父さん、どういうこと?」
「行けば分かるから。」
「う、うん。」
そして再び歩き出し、地下室の扉を開けるとその先にもう一つ扉があった。みんなは手に持ったままだった靴を履いて地下室の中に入っていった。
「ルリ?靴を履いてルリも入っておいで。」
「え?う、うん。」
そして私も靴を履いて中に入ると、
「ルリ。この扉の向こうを旅した先に本当の両親がいる。頑張るんだよ。」
「え!?‥‥え?旅?」
「そうよ。こっちから向こうに行く時はランダムの場所に出るらしいのよ。」
「は!?いやいや義母さん。さっきから色々疑問しかないんだけど!」
「それは向こうでリヒトさんに聞きなさい‥‥ほら!」
と言って義母さんは私の背中を押して扉の前に出した。
「わっ!‥‥‥義母さん?」
「リヒトさん。ルリをお願いしますね。」
「はい。お任せ下さい。行こうか。ルリ。」
「え?‥‥え?ここでお別れ?」
「そうよ。元気でね、ルリ。」
「え?‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥はい。みんな、今までお世話になりました。」
『うん。』
「両親に会えることを願ってるわ。帰ってきたくなったら帰ってきていいからね。」
「!‥‥‥うん!行ってきます!」
『!! いってらっしゃい。』
そしてリヒトさんが扉を開けると、光っていてその先は見えなかった。
「怖いか?ルリ。」
「怖いですけど、大丈夫です。」
「よし。行くぞ。」
「はい。」
そして扉を通って光の先に出ると、そこは何もないただの草原だった。
「え?‥‥‥うそ‥‥本当に知らないところに出た‥‥扉も消えてる‥‥。」
「ああ。ここが俺達の故郷がある世界だ。」
「え?世界?‥‥‥え?地球ですらないってことですか?」
「おう。」
「え!?‥‥‥‥マジか‥‥‥。」
「おう。マジだ。」
「ところでルリ。いい加減敬語やめないか?」
「え?だって年上ですよね?」
「ああ。でも俺は16歳だから2個しか違わないぞ?」
「でも年上には違いないじゃないですか。」
「そうなんだが‥‥‥俺としては呼び捨て敬語なしがいいんだけどな。」
「‥‥‥‥‥すぐには無理です。」
「そうか。じゃあいつかそうしてくれると期待して強制はやめとく。」
「ありがとうございます。」
「とりあえず、現在地だな。【ワールドマップ】」
と、リヒトさんの目の前に地図画面が出てきた。
「え!?それ‥‥‥この世界の地図ですか?」
「ああ。ルリもいつか使える様になるぞ。」
「え?そうなんですか?」
「ああ。で、現在地は‥‥‥‥げっ!」
「? よろしくない場所だったんですか?」
「ああ‥‥‥むしろ敵地の中だと言っていい場所だ。見つかる前に動くぞ。」
「え!?は、はい。」
と言ってリヒトさんが走り出したので私も慌てて後を追った。
「敵地の中とは言ったが、端の方だ。見つかることは‥‥」
リヒトさんが不自然に言葉を切って立ち止まったので、私も止まった。そしてリヒトさんの後ろから覗くと、何故かあの化け物がここにも現れていた。今度は熊の姿をしていた。
「‥‥こいつが出てきたか。ルリ、動くなよ?」
「は、はい!」
「いい返事だ。すぐに終わらせる!」
と言った瞬間リヒトさんは走り出していて、帯剣していた剣を引き抜き、目の前の熊の化け物を真っ二つにした。
「すごっ!」
そして熊の化け物もまた砂の様になってさらさらと風に乗って消えていった。
そして剣を鞘に戻したリヒトさんが戻ってきた。
「ルリ。お待たせ。行くぞ。」
「は、はい。」
「ん?どうかしたか?」
「い、いえ。すごいなぁって思っただけです。」
「え!?‥‥‥‥そうか?」
「あれ?照れてます?‥‥‥照れてますね!」
「照れてない!行くぞ!」
「はーい!」
とりあえずリヒトさんが一緒なら大丈夫そうだな。