27話 いざ、街へ。
国王一家に文句を言ってから数日が過ぎた。
最初は抵抗があった姫様呼び。
この数日で気にしたら疲れるだけだと悟り、抵抗を諦めた。
そして、私の専属メイドさん達三人だが少なくとも後、約3ヶ月はお世話になるので、ちゃんと名前を呼びたいと言ったら喜んで名前を教えてくれた。
最初に紅茶を入れてくれたのが、マリーさん。
お風呂の準備をしてくれたのが、クロエさん。
もう一人がアンヌさん。というそうだ。
私はクローゼットにある服もシンプルなやつがいいと言うと、ちょっと散歩に行ってる間に総入れ替えされていた。
‥‥‥はや。
我が儘を言ったと謝るとむしろもっと言ってくれていいぐらいだと言われた。
これ以上どう我が儘を言えと‥‥‥?
そして私を最初に部屋に案内してくれた騎士さんは、なんと近衛騎士団長だったそうだ。
名前はシュタル・ヴィント。
貴族?とリヒトに聞いたらそうだと返ってきた。
そしてこの数日、私は一人でも城の敷地内を歩く様になった。広すぎてたまに迷子になりかけるが、誰かが必ず通るので実際本当に迷子にはまだなっていない。
‥‥‥迷子にならないようにしてくれてるのか?
とか考えつつ、私はリヒトを探していた。
客室にいなかったので、散歩かな?と私も散歩がてら歩いていると。
「あら?ルリ姫様?」
「副団長。こんにちは。」
「はい。こんにちは、姫様。どうされました?」
「リヒト見ませんでしたか?」
「いえ‥‥今日は姿を見ていませんが‥‥。」
「そうですか。ありがとうございます。もう少し探してみます。」
「お供しますか?」
「いえ。お忙しいでしょうから自分で探します。城内を歩くのも探険みたいで楽しいですしね。」
「畏まりました。ご用があればいつでもお申し付けくださいね。」
「はい。」
「では、失礼します。」
今話したのは近衛騎士団副団長のイリス・フォリアさん。
男性の団長より女性の副団長の方がなにかと頼みやすいだろうと団長に紹介された。
たまにこうしてすれ違うと話し掛けてくれる。
というのも、特に用事がなければ騎士から王族に話し掛けるのはよろしくないという考えがあるそうで、他の騎士達や使用人達は一部を除いてすれ違う時はほぼ挨拶や一礼するのみなのだ。
副団長なのでその「一部」の人。
この国に来た初日に団長。この数日で副団長。
国防の要に次々と会った私。
‥‥‥このまま王女に戻らざるを得ない状況に追い込まれるのか?私は。
と、考えつつ歩いていると中庭に出た。
すると、中庭にある東屋のソファーにリヒトが座っていたので。
「リヒト。」
「‥‥‥‥。」
あれ?気付いてない?
近付いて再度呼んでみるが、気付かない。
真横に座って様子をみても変わらない。
‥‥‥‥‥真横に座っても気付いてないって何考えてるんだろ?
リヒトは腕を組み、背凭れに背中を預けた状態で上を向いて天井を見ていた。
‥‥‥‥気付いてないならちょっと仕返ししてみるか。
そう思った私は横から、座ってるリヒトの頬に触れるだけのキスをしてみた。
「ルリ!?」
「ふふっ。何回か呼んだのに気付かないからだよ。驚いた?」
「あ、ああ。ど、どうした?」
「動揺がすごいな。」
「そりゃルリからされたの初めてだったからな。頬だったのが残念なぐらいだ。」
「嬉しかった?」
「勿論。」
「じゃあ何考えてたか教えて。」
「うっ。」
「何考えてたの?」
「どうやったらルリはこの国の王女に戻ってくれるかな?って。」
「本当に考えてたの、それ?」
「‥‥‥‥いえ。帰るのが少し恐いなと。」
「だよね~。嘘は駄目だよ~?リヒト。」
「うっ‥‥‥で、どうした?ルリ。」
「城下の街を歩きたいから一緒に行ってくれないかな?って聞きに来た。」
「ああ。いいよ。早速行くか?」
「うん。」
そして私達は城門に向かって歩き出した。
「そういえばルリ。このまま向かっていいのか?」
「うん。陛下にはリヒトを誘って行くって言ったらあっさりいいよ。って許可してくれたよ。」
「そうか。俺への信頼か?」
「かもね。私が一番安心出来て尚且つ腕が立つのがリヒトだからかな。」
「‥‥‥そ、そうか。」
「何照れてるの~?」
「仲がよろしいですね。姫様、殿下。」
「あ。団長。ちょっと城下を歩いてきますね。」
「はい。お気をつけて。」
「はい。行ってきます。」
「いってらっしゃいませ。」
そして城門も通って私達は数日ぶりの城の外に出た。
街に出てすぐ一人の女性がおずおずと話し掛けてきた。
「あ、あの。もしかして、ルリ姫様でいらっしゃいますか?」
「え?私のことご存知なんですか?」
「やっぱりそうなんですね!我々国民はルリ姫様のお帰りをずっとお待ちしていたんですよ。」
「え?そうなんですか?」
「ええ。ルリ姫様が産まれてすぐに別の所に避難したと知らされてからずっと。」
「‥‥‥‥国民の方全てに私の存在は知られてるということですか?」
「はい!」
え‥‥‥マジか‥‥逃げ場なくなってきてる。
外堀埋められてる‥‥。
「ですが、陛下は姫様がこの国に残りたくないと言えばそれを尊重するとも仰ってました。」
「え?」
本当に選ばせてくれるんだ‥‥‥。
「私としてはルリ姫様に残って頂きたいです。」
『我々もです!』
え!?いつの間にこんなに集まった!?
いつの間にか私達は街の人達に囲まれていた。
「えっと‥‥‥今日初めてお会いしたのに何故残ってほしいと?」
「今少しですが、お話させて頂いて思いました。ルリ姫様はお優しい方だと。本来、我々国民から王族の方に話し掛けるのは不敬に当たることなのですが、それを咎めるどころか普通に接して頂いて。しかも私が申し上げるのは失礼に当たりますが、ルリ姫様は可愛いらしい方で‥‥もっと話していたくなるんです。」
「え?本来は私から話し掛けないと普通に話せなかったんですか?」
「はい。」
「知りませんでした‥‥‥。」
「ふふっ。それを知っても尚、変わらずいてくださるのが嬉しいです。」
「えっと‥‥育った環境が皆さんに近いので、むしろ王族の生活の方が違和感あるんですよね‥‥。」
「まあ、そうなんですか?」
「はい。なので、私が例え王女として残る決断をしても皆さんには変わらずいてほしいです。気にせず話し掛けてほしいです。」
「よろしいんですか?」
「はい。他の王族が何か言ってきたら私が許可したと言い張ってもらって構いません。」
「嬉しいです!ありがとうございます!」
「いえ。私も皆さんと話してると残ってもいいかなって思えてきたので。」
『本当ですか!?』
「わっ!びっくりした‥‥‥えっと、皆さん私が残ったら嬉しいですか?」
『勿論です!!』
「そ、そうですか。あの、とりあえず散歩したいんですがいいでしょうか?」
「はい。勿論です。引き止めて申し訳ありません。」
「いえ。では、参りましょうか?王太子殿下。」
「ルリ。いつも通り名前で呼んだらどうだ?」
「ふふっ。そうだね。リヒト、行こ。」
「ああ。」
そして私達が歩き始めると道を開けてくれて、通り過ぎるまで全員に礼をされた。
その後、背後から聞こえたのは‥‥
「い、今。殿下と姫様。お互いに呼び捨てでしたよね?」
「ええ。しかも敬語もなくて。もしかして既にいい仲なのかしら?」
「そうかもしれないわ!」
「楽しみだな。」
「ああ。」
というような声だった。
突然ですが、今日と明日は3話ずつ投稿していきたいと思います。




