107話 復興の進む街
翌朝。
まだテント内。
「ルリ。起きろ。」
「‥‥ん‥‥?」
「朝だぞ。」
「朝‥‥?」
そして、ルリがゆっくり目を開けると、やっぱりリヒトの顔があって、
「おはよう、ルリ。」
「‥‥‥綺麗な顔の笑顔の破壊力たるや‥‥」
「え?」
「‥‥‥この笑顔に慣れてきた自分が怖い‥‥。」
「んん?」
「‥‥リヒト。」
「ん?」
「おはよう。」
「ああ。」
そして私は体を起こして、リヒトに視線を戻してから
「また寝顔見てた‥‥?」
「‥‥‥はい。」
「正直でよろしい。私の寝顔見て、本当に飽きないの?」
「ああ。可愛いから見飽きない。」
「‥‥‥文句言っても無駄な感じ?」
「ああ。」
「そうですか‥‥じゃあ、諦めるか‥‥いずれ毎日見られるらしいし。」
「やった!」
「‥‥‥‥‥で、リヒト。今日中にはリト君と会った街に着くかな?」
「ああ。多分、着くと思うぞ。」
「地毛のままだと私のこと分からないかな?」
「あ~戸惑いはするだろうな。」
「直前でカツラ被るかな‥‥」
「持ってきたのか?」
「うん。折角前と同じ髪色だし、日本に置いてても使う人いないでしょ?だから持ってきた。」
「あ。確かにそうだな。」
「リヒトの黒髪も一応私が持ってるよ。リヒトは被らなくてもいいけど。」
「そうだな。」
その後朝食をとって、テントをリヒトが異空間収納に入れてから再び歩き出した。腕を組んで。
「‥‥ルリ、聞いていいか?」
「ん?なに?」
「夜、見張りをしてくれてる時に何か考えごとしてたよな?」
「うん。あれはリヒトが何で異空間収納使えたのかな?って考えてた。」
「それで、思い当たることは?」
「多分ね、私達が精霊達と契約した時に精霊達の力をもらってるからそれを使ってるんじゃないかなって。」
「ああ!なるほどな。考えたことなかったな‥‥。」
「まあ、こういう時じゃないと魔族の地を歩いたりしないしね。」
「だな。」
そして途中で休憩や昼食を挟んで歩き続け、ようやく。
「あ。ここじゃない?」
「ああ。「ライムント」。街の名前がリト君の家名みたいだな。」
「あれ?そうなの?」
「ああ。」
「あ。カツラ被らないと。街中にもあの時挨拶した人達もいるだろうし。」
「だな。」
そしてルリがカツラを被ったところで、腕を組んでいたのをやめて街に入ると。
「「おお~!」」
二年前に魔物の集団に襲われた街の復興は大分進んでいた。
「‥‥本当はこんな感じの街だったんだよね‥‥。」
「ああ。多分な。俺達が見たときは火の海だったからな。」
「だね。頑張ったんだね、みんな。」
「そうみたいだな。」
それから街を見ながら並んで歩いていると、
「もしかして、リヒトさんとルリさん!?」
「「え?」」
呼ばれて左を見ると、果物もある八百屋さん風のお店だった。どうやら店の中から話し掛けられた様だ。
「はい。あ!領主様と一緒に避難されてた方ですよね?」
「はい。お久しぶりです。」
「お久しぶりです。お元気そうで良かったです。」
「はい。おかげさまで。街も大分復興したでしょう?」
「はい。驚きました。」
「あれから陛下を始め、兵士の方々も忙しい合間を縫って来てくださって、復興の手伝いをしてくださったんですよ。」
「「へ~!」」
「あ。お引き留めしてすみません。よろしければこちらを。」
と差し出してくれたのはりんごだった。
「え?いただけるんですか?」
「はい。お二人ですから2個差し上げますね。」
「あ、ありがとうございます。」
その後。
領主館の場所を教えてもらい、向かうと
「‥‥やっぱり領主館って大きいんだね‥‥」
「ん?そうか?こんなもんじゃないか?」
「‥‥さすが産まれも育ちも王子‥‥。」
さすが領主館というべきか、門があって、そこに警備の人が二人いた。
「リヒト。こういう時ってどうしたらいいの?」
「ん?じゃあ、見ててくれ。」
「うん。」
そして二人で警備の一人に近付くと
「突然の来訪すみません。約束もありませんが、領主様にお会いできればと。可能か否か聞いて頂けませんか?リヒトとルリが来たと言ってみてください。」
「はぁ‥‥分かりました。少々、お待ちください。」
と言って警備の人が中に入っていき、少しすると警備の人だけじゃなく領主一家も出てきた。
「「リヒトさんとルリさん!?」」
「あ!本当にリヒトお兄ちゃんとルリお姉ちゃんだ!」
「あの方々はリトとこの街の恩人だ。入ってもらってくれ。」
「は、はい。畏まりました。」
という玄関口での会話が僅かに聞こえた。
そして改めて、中に入れてもらえた私達は丁重にもてなされた。
部屋を用意すると言われ、宿に泊まるつもりだと言っても恩人にそんなことさせる訳にはいかないと押しきられたのだ。
そのまますぐに応接室に通され、
「背、伸びたね。リト君。」
「うん!ルリお姉ちゃんはきれいになったね。」
「え?そ、そう?」
「うん。僕が大人になったらお嫁さんにきてほしいぐらい。」
「え!?えっと‥‥その前にリヒトお兄ちゃんのお嫁さんになってるから駄目かな。ごめんね。」
「そっかぁ~でもリヒトお兄ちゃんならしょうがないか。」
『『この二年で何があった!?』』
と心の中で戸惑ったルリとリヒトだった。
その後、夕食をいただいたり、お風呂まで入らせてくれたあと、再び応接室。
リトは部屋で寝ているが、ここには領主夫妻とリヒトとルリだけで集まっていた。
「改めて、お久しぶりです。そして、突然押し掛けてしまったのに色々良くして頂いて‥‥ありがとうございました。」
「いえいえ。これぐらい構いませんよ。ところで、お二人は何故ここに?」
「また旅をしてまして、久しぶりに街の復興の様子を見に来てみたんです。」
「そうでしたか。当時は事情があって家名は言えないと仰ってましたが、今も?」
「う~ん‥‥お二人ならいいかな‥‥ルリどう思う?」
「「え?」」
「ちゃんと名乗ってもお二人なら秘密にしてくれるんじゃない?」
「だな。‥‥前回は家名を名乗らず失礼しました。私はここより南にあるエヴァンジル大陸の三国の一つ、ラズライト王国王太子のリヒト・ラズライトと申します。」
「同じくセピオライト王国第二王女のルリ・セピオライトと申します。」
「「王太子と王女!?」」
「「はい。」」
「そんな方々が何故‥‥?」
「それが「事情」の部分ですよ。俺はとある家に預けられていたルリを両親である国王夫妻の元に送り届ける途中だったんです。」
「当時は私も自分が王女とは知らなかったんです。両親が自分たちで説明したいからとリヒトにも口止めしてまして。」
「なるほど。それで‥‥それだけ聞かせて頂いただけで十分です。立場上、お互いにこれ以上の個人情報を話すべきではないでしょうからね。」
「そうですね。ありがとうございます。」
「勿論、お二人の立場を触れ回ったりなども致しません。恩人に仇を返すつもりはありませんから。」
「「ありがとうございます。」」
「あ。折角なので私の地毛もお見せしますね。」
「「え?」」
私がカツラを取ると
「「!!」」
「ルリさん‥‥可愛いらしいお色の髪になったんですね。髪も伸びて、可愛い‥‥。」
「あ、ありがとうございます。この地毛のままで来たら戸惑わせてしまうかと思ってこうしてましたから、ちゃんと本来の私の地毛もお見せしておこうかと。」
「信頼して頂けて嬉しいです。」
「とりあえず、旅の途中であればお二人共お疲れでしょう。休みましょうか。」
「ええ。」
そして領主夫妻と分かれ、私達も客室に案内された。
メイドさんは私達を案内してくれたあと、すぐにいなくなってしまった。しかも案内されたのは一部屋のみ。
ということは‥‥
「同じ部屋なんだ‥‥」
「ん?俺が同じ部屋でいいって言っといたぞ?」
「‥‥‥リヒト。」
「ん?」
「私が言えることじゃないけど、もう少し王族の自覚を持とうよ‥‥もしくは思い出して。」
「お、おう‥‥。」
そして二人で中に入ったあと、
「で、良かったの?同じ部屋にして。最近、理性との戦いって言ってなかった?」
「は!‥‥そういえば‥‥。」
「ふふっ。いいよ~?私は。リヒトになら何されても。でも、あとでバレた時に責められるのはリヒトだよ?」
「‥‥つまり自分の首を自分で閉めてしまったと。」
「そうなるね~。どうする?私に手、出す?」
「‥‥‥出してしまいたいが‥‥ルリを大切にしたい気持ちの方が勝ってるから出さない。」
「そ、そう‥‥テントでもそう思ってくれてたの?」
「ああ。勿論。」
「ふふっ。やっぱりリヒトは優しいね。試す様なこと言ってごめんね。」
「‥‥試さないでくれ‥‥頼むから。」
「ふふっ。まあ、リヒトになら何されてもいいっていうのは本当だけどね。」
「な!」
「おやすみ。」
「ルリ‥‥」
そしてルリはさっさと二台並んだベッドの一つに入ってしまった。
その様子を見ていたリヒトは「頼むから煽らないでくれ‥‥」と声にならない呟きを落とした。




