1話 送別会
「もうすぐ誕生日かぁ‥‥‥この生活ともさよならなんだな‥‥‥。」
と言いながら自宅に帰ってくると、義理の家族が出迎えてくれる。
「おかえりなさい。ルリ。」
「ただいま。義母さん。」
「大丈夫だった?」
「うん。今日も何も出て来なかったよ。」
「そう。なら良かったわ。もうすぐ晩御飯出来るわよ。着替えてらっしゃい。」
「はーい。あれ?義兄ちゃん達まだ帰って来てないの?」
「うん。もうすぐ帰ってくるわよ。」
「そうだね。」
と言って私は制服から着替えるべく二階にある部屋へと向かった。
そして着替えながら姿見に映る自分を見て、
やっぱり赤の他人だから全然似てないな‥‥。
日本人に目の色が青い人なんていないもんね。
髪も茶髪だし。私、本当に血の繋がった両親に会えるのかな?
『ただいま。』
『あら、おかえりなさい。』
『ルリは?』
『帰ってきてるわよ。もうすぐご飯だから着替えてらっしゃい。』
『はーい。』
あ、義兄ちゃんも帰ってきたな。
そして着替え終わった私は自分の部屋から出て一階に降りてリビングに向かうと、お義兄ちゃんは既に着替え終わってリビングに来ていた。
「おかえり、義兄ちゃん。相変わらず着替えるの早いね。」
「そうか?俺は早い自覚はないけどな。あと、ただいま。」
『『ただいま~。』』
「あ、義姉ちゃん達も帰って来たね。」
「ああ。」
そしてリビングの扉が開くと、
「「ただいま~。」」
「「おかえり。」」
「義姉ちゃん達。着替えておいでよ。もうすぐご飯だって。」
「「はーい。」」
と言って二人共去っていった。嵐の様な二人だ。
『ただいま。』
「あ、義父さんも帰ってきたね。」
「そうみたいだな。」
そして同じくリビングの扉が開くと。
「ただいま。」
「「おかえり。」」
「もうすぐ晩御飯できるって。」
「そうか。」
「私、義母さんの手伝いしてくる。」
「「ああ。」」
これで今の私の家族は全員。義理の両親と義理の兄妹。
ちなみに全員黒髪黒目。私だけ違う。
そして両親は私が10歳の時にその話をしてくれた。大半、意味が分からない話だったけど。
その時の両親との会話は。
「実はね、ルリはうちの子じゃないの。」
「だろうね。」
「「!」」
「いや、分かるでしょ。髪も眼も色違うし、義母さん達と全く似てないじゃん。」
「それもそうね。でね、ルリの本当の両親は遠くにいるの。ルリが14歳になるまで代わりに育ててって頼まれたからルリはここにいるのよ。」
「へ~。私の本当の両親、生きてるんだ‥‥‥ん?14歳まで?」
「うん。14歳まで。」
「14歳から私はどうなるの?」
「ルリの両親の代わりの人が迎えに来るわ。」
「代わりの人なの?」
「うん。ルリの両親は忙しい人でね、遠くまで動く訳にはいかないのよ。」
「‥‥‥‥それで代わりの人?」
「そうよ。14歳までだから高校受験もしなくていいわ。」
「‥‥ん?高校受験しなくていいって国が変わるの?私。」
「国‥‥‥そうね、国‥‥まあ、とにかく14歳になったら誰かが迎えに来るってことだけ覚えてて。」
「うん?‥‥‥分かった‥‥。じゃあ私がこの家の家族でいられるのはあと4年ってことか‥‥。」
「‥‥‥そうなるわね。」
「ルリ。」
「何?」
「あと4年、しっかり楽しめよ。」
「?‥‥‥うん‥‥。で、さっきから思ってたけど、話が曖昧過ぎて分からないよ。詳しく話してくれないの?私の本当の両親が何してる人かとかさ。」
「そのルリの本当の両親からね、自分達で話したいから言わないでって言われてるの。ごめんね。今話したことまでで止めてって言われてるのよ。」
「‥‥‥‥‥納得いかないけど分かった。じゃあ聞かない。で、その迎えの人は私が14歳になったら来るんだよね?」
「うん。14歳の誕生日当日に合わせて来てくれるそうよ。」
「私、どうやって判断したらいいの?」
「さすがにちゃんと名乗ってくれるわよ。」
「それもそうだね。」
そしてそれで両親との話は終わり、自室に戻ってから思い返していると色々不思議で‥‥
それにしても楽しめって何を?義父さん何が言いたかったんだろ?
そして今の私は13歳。もうすぐ14歳になる。
私が14歳になったらこの家を去ることは義兄達も知っている。
その日が近付いてるからか、家族で夕食を食べながらもその話題があがる。
「もうすぐルリも14歳になるのね。」
「うん。あ、そういえば義母さん。私の誕生日って本当の両親に聞いたの?」
「そうよ。」
「じゃあ一度はここに来たことがあるんだね。」
「うん。」
「どんな人だったの?」
「とりあえず二人共美形だったわ。」
「‥‥‥‥終わり?何してる人か聞いちゃ駄目って言ってたから聞かないけど、雰囲気的なこととか性格とか他に私に話せることってないの?」
「ないわ。」
「‥‥‥‥。」
無いんだ‥‥‥
「ルリ、準備は進んでるのか?」
「うん。一応ね。学校も最後の登校日の誕生日に送別会してくれるって。」
「そうか‥‥‥寂しくなるな。」
「もう!私だって言うの我慢してたのに!義父さん先に言わないでよ!」
「おう‥‥。すまん。」
「ごちそうさまでした。私、部屋に戻って続きするね。」
『うん。』『ああ。』
続きって言っても元々物が少ないのであまりすることがないんだけどね。
そして数日後。
私の誕生日当日。そして最終登校日の朝。
いつも通りの道を歩きながらしみじみと思っていた。
あ~あ‥‥この道を通るのも今日で最後か‥‥
そして一日の授業が終わり、放課後になり送別会が始まった。
「なあ、ルリ。明日からどうするんだ?」
「前に言ったでしょ。雅。私の本当の両親のところに向かうの。」
「どこだよ?」
「知らないわよ。今の両親に本当の両親が口止めしてるらしくて教えてくれなかったから。」
「じゃあどうやって行くんだよ?」
「両親の代わりの人が向かえに来るらしいよ。誕生日当日に合わせてくるって言ってたから家に帰ったらいるんじゃない?」
「ふ~ん‥‥。」
「何?そんなに幼なじみがいなくなると寂しいの?雅君。」
「うるせえ!寂しい訳ねぇだろ!清々するわ!」
「あっそ。」
「素直じゃねぇな~雅。一度は彼女だった子に清々するはないだろ。」
「だよな~。雅、最後なんだから素直に寂しいって言えばいいじゃねぇか。」
「‥‥‥‥寂しいって言って何か変わるのかよ?」
『え?』
「だから!寂しいって言って、ルリがここに止まるのかって言ってんだよ!」
「止まらないね。私も一度は本当の両親に会って文句も言ってやりたいからね。」
『‥‥‥‥』
「私も不安がない訳じゃないよ。今までの家族と離れて知らない人と知らないところに行くんだよ?本当はすごく怖い。でも私の二組の両親が信じる人が向かえに来るなら信じて行ってみる。絶対文句言ってやるわ!」
『うん。』『ああ。』
「頑張れよ、ルリ。」
「うん。ありがとう。」
「‥‥‥‥‥帰ってきてもいいからな。」
「!‥‥‥うん。ありがとう、雅。」
「おう‥‥‥。」
『ぷっ。』
「な、なんだよ!?」
「み、雅が照れてる‥‥ぷっ。貴重なの見た!いい置き土産ありがとな。ルリ!」
「ふふん!どういたしまして!」
「てめぇら‥‥‥」
『あはははは』
あ~あ‥‥‥楽しかったこの光景も見納めかぁ‥‥‥
「ルリ?」
「な、何でもない!」
「な!ルリ、泣いてるじゃねぇか!どうした?」
「‥‥‥‥寂しいのは私の方みたい‥‥。」
『‥‥‥‥』
「でも、泣いてちゃ駄目だよね‥‥‥ちょっと待って。」
すぅ~‥‥はぁ~‥‥すぅ~‥‥はぁ~‥‥
「大丈夫?」
「‥‥‥うん。ありがとう。」
ガラッ
「お前らいつまでやってんだ?名残惜しいのは分かるが、そろそろ解散しろ!」
『はーい!』
「戸隠。」
「はい。」
「元気でな。」
「はい。」
「先生、もう少し何かないの?」
「うるさいな。外野は黙ってろ!」
『ぶー。』
「はぁ‥‥‥戸隠、明日から頑張れよ。頼れる人は頼れ。自分に負けるなよ。」
「はい。ありがとうございます。先生。」
そして私の送別会はお開きになり、帰り道。
「嘘‥‥‥‥ずっと出て来なかったのに何で今更‥‥‥?」
私の目の前には化け物がいた。
はじめまして、満月の名前で投稿させて頂いてます。
他にも「転生できたので自由に生きたい」という話も投稿してます。合わせてよろしくお願いします。
※実はこの話は作者が夢で見たことを想像で広げたものです。