みっつのたねあかし
20.ソナタのぎもん
それからはおおさわぎでした。
やっと、年が明けたのです。
みんなで楽しくお祝いです。
お空に虹の橋をかけて、ぶじにお日さまを交代させてくれた、ソナタたちはすっかりえいゆうです。
みんなにたくさんほめてもらえて、うれしさいっぱいです!
それでも、それでもです。
ソナタは、どうしてかわかりません。
どうして、カナタお兄ちゃんはマイクをくれたんだろう?
どうして、わたしがうたを歌ったら、砂漠が森になったんだろう?
どうして、コユキちゃんは、それをわかっていたんだろう?
そのばん、ミソラさんに質問してみたら、答えはこうでした。
「ソナタちゃんと、カナタくんちはね。
もともと、『光の森』をまもる、とくべつな一族だったの。
そして『光の森』はね、一族のだれかがずっと歌いつつけていないと、一日で消えてしまう、まぼろしのもりなの。
それはあまりにたいへんだ、ということで、どうしてもひつような時にだけ、うたを歌って森をだしてもらうことになっていた。
ソナタちゃんも、いちにんまえの妖精になったら、このお話を知らされていたことよ。
……って、あの時わたし、ソナタちゃんに言ったはずだけど。
ソナタちゃん。もしかして、わたしのお話ちゃんと聞いてなかったでしょ?」
そういわれてみれば、そうでした!
ミソラさんにみとれてしまって、おはなしが耳をすどおりしてしまっていたのです。
ソナタははずかしくって、まっかになってしまいました。
でも、それをソナタからきかされると、ミソラさんも赤くなってしまいました。
21.みんなのおもい
「あれっ、でも……」
けれど、ミソラさんのお話を聞いたら、ソナタにはもうひとつ、ぎもんがわいてきました。
「それなら、カナタお兄ちゃんがいっても、よかったはずよね?
だって、お兄ちゃんはもう、りっぱなクラフターだもの!
いろんなどうぐも作れるし、力もあるし、お歌だって上手だわ!」
「それはね、ソナタ」
すると、ソナタのうしろから、優しい声が聞こえてきました。
ふりかえるとそこには、にこにこ笑うカナタお兄ちゃんがいました。
新年のお祭りのためにと、クラフター工房から、里帰りしてくれたのです!
カナタお兄ちゃんは、ソナタのあたまをやさしくなでながら、こういいます。
「ソナタの歌で、この島がすくわれたら……
ソナタはりっぱな歌姫として、みんなに認められるようになるよね。
つまりこれは、ソナタのゆめがかなう、ぜっこうのチャンスだ。
ミソラさんとおれたちは、そう考えたんだよ。
ソナタは、たしかにちょっとちいさいけれど、たよりになる仲間がいる。
コユキちゃん、ヒトミちゃん、シュナちゃん。
だから、だいじょうぶだって思ったんだ。
それはきっと、ティアラさまもそう思ったんだろうね。
だから、ソナタに夢のお告げがきたんだよ」
22.カナタお兄ちゃんのうちあけばなし
「だけど……」
それでも、おばけたちはけっこう、こわかったのです。
ソナタはちょっぴり、ふくれてしまいますが、カナタお兄ちゃんはいたずらっぽくわらいます。
「ソナタ。お兄ちゃんたちがまだちいさい、かわいい妹たちを、あぶないところにほっぽりだしたりするとおもう?
おれたちは、こっそりあとからついてってたんだよ。
ソナタたちにばれないよう、とくせいの『かくれマント』で、身をかくしてね。
鳥さんが来たときにはびっくりしたけど、イツカが先回りして、じじょうを確認してくれたんだ。
山道のおばけはちょっとしつこかったから、おれがめっ! てにらんで、おっぱらったんだけどね」
ソナタはおこったらいいのか、よろこんだらいいのか、もうわかんなくなってしまいました。
だからとりあえずカナタお兄ちゃんに、むぎゅううっとちからいっぱい、だきつきます。
そのとき、ドーンと大きな音がして、空に花火があがりました。
ふるいお日さまへのかんしゃと、あたらしいお日さまへのかんげいのきもちをこめた、光のはなたばです。
ソナタとカナタお兄ちゃんの見上げるさきで、月のしずくのようにキラキラかがやく花火が、いくつもいくつも、島の夜空をいろどるのでした。
おしまい