仲間たちをたずねて
6.ソナタとコユキの旅立ち
「……ソナタ、仲間たちといっしょに、『月の涙』をとってきてくれる?」
「はいっ!」
気がつけばミソラさんが、ソナタの手をにぎってこういっていました。
ソナタはちからづよく、へんじをします。
そうしてソナタは、お日さまと島をすくうためのたびに出たのです。
ソナタについて来てくれるのは、お友だちのコユキちゃん。
ソナタとおない年ですが、おしとやかでしっかりしている、シマエナガの妖精です。
by 金目猫さま!
コユキちゃんは、ソナタのかよう魔法学校の、クラスメイトでもあります。
身をまもるための魔法や、ケガの手当てもじょうずな、たよりになる女の子です。
ふたりはこれから、島のべつの場所で修行をしている、ふたりの仲間と合流して、『光の森』をめざします。
まずは、草原の近くのクラフター工房にいる、ヒトミちゃん。
つぎに、海ぞいのハンター道場にいる、シュナちゃん。
ソナタとコユキちゃん、ヒトミちゃんとシュナちゃんは、小さいころから大のなかよしでしたが、かおを合わせるのは、しばらくぶりです。
「ふたりっとも、元気にしてるかな?」
ソナタがそういうと、コユキちゃんはせなかの白いはねをぱたぱた。
きれいな黒髪をゆらして、にっこり笑います。
「ええ、きっと。
ヒトミちゃんも、いろいろな道具がつくれるようになったみたいだし……
シュナちゃんは、練習試合で優勝した、って手紙に書いてあったもの。
わたしももっともっと、まほうの勉強をがんばらなくっちゃ!」
そんなふうに話しながら歩いていると、クラフター工房がみえてきました。
7.クラフター工房の、カナタお兄ちゃん
「ソナタ!」
クラフター工房のまえでは、ソナタによく似た、でもずいぶん大きい、たれ耳うさぎの妖精がまっていました。
ソナタのお兄ちゃん、水色うさぎの、カナタお兄ちゃんです。
5つ年上のカナタお兄ちゃんは、そろそろ工房を卒業です。
卒業試験のためにいそがしいこんなときでも、だいすきな妹のためならば、お兄ちゃんはこうして、まっていてくれるのです。
「カナタお兄ちゃーん!」
もちろんソナタも、そんなお兄ちゃんのことがだいすきです。
ソナタがうれしくなってとびつくと、カナタお兄ちゃんはしっかりうけとめて、よしよしと頭をなでてくれました。
「先生から、はなしはきいたよ。
ヒトミちゃんをつれて行くんだね?」
「うん!」
「わかった。気を付けてね。
はい、これ。『月の砂漠』にはいったら使うんだよ」
そうしてソナタに、両手にのっかるくらいの、小さな箱をわたしてくれます。
と、そのときでした。
「わあああちこく、ちこくー!!」
大きな声といっしょに、コロコロコロ! なにか、ちゃいろくてオレンジのかたまりが、すごいいきおいでとびこんできました。
8.シマリスの妖精、ヒトミ
カナタお兄ちゃんがえいっとうけとめてみると……
それはちゃいろいかみのけの、一人の妖精の女の子でした。
ちっちゃなからだに、おっきなちゃいろいしましましっぽ。
背中には、ぱんぱんになったオレンジのリュック。
「あれっ、もしかして……」
ソナタの声に、えへへっ、と顔を上げたのは、やっぱりヒトミちゃんでした。
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ヒトミちゃんは、シマリスの妖精です。
ソナタたちよりふたつとししただけど、手先がきようでもの作りがとくい、ちゃめっけたっぷりでいたずらもとくい。
でも、ちょっとだけおっちょこちょいで、ときどきこんなふうに、あわててコロコロしちゃうのです。
ソナタとコユキちゃんで、けががないかを見てあげます。
「だいじょぶ、ヒトミちゃん?」
「どこか、いたむところはない?」
「だいじょうぶ!
ゴメンね、あれもこれもっていろいろつくってたら、ついついねっちゅうしちゃって!
はいこれ、おやつのくるみクッキー。それと、ケガしたときのよくきくおくすり。それとこっちは……」
ヒトミちゃんはげんきげんき。どうやらだいじょうぶそうです。
お気に入りのリュックから、いろんなものをとりだしてわたしてくれます。
それをひとつずつありがたくもらって、それぞれのリュックにしまうと、ソナタたちはふたたび出発しました。
カナタお兄ちゃんや、工房のみんなに見送られ、いってきまーすと手をふります。
つぎにむかうのは、海のちかくのハンター道場です。
ぶじ、三人になったソナタたちは、元気に歩いてゆくのでした。
9.ソナタのうたごえ
今日はこのころにはめずらしく、とてもいい天気。
『小さな女の子たちが、自分のためにがんばってくれているのだ。』
そのことを知って、お日さまもきっと、はりきっているのでしょう。
そして、へいわな島の中には、ほとんどこわいものもいません。
三人は急ぎ足で、でもにぎやかにおしゃべりをしながら、あるいていきます。
「コユキちゃんはもう、じゅうぶんすごいと思うけどなー。
ソナタなんて、守りの魔法もケガの手当ても、ぜんぜんだもん」
「ソナタちゃんは、歌がじょうずじゃない。
すてきな歌で、みんなを元気にしてあげられる。
そのほうが、ずうっとすごいチカラだと思うわ」
「えへへっ。ありがとう!」
ソナタはまっすぐな女の子です。ほめられたら、すなおにそう思ってしまいます。
てれて笑うソナタをみて、コユキちゃんもにこにこ笑います。
ヒトミちゃんもにこにこして、こんな提案をします。
「ねえねえ、ちょっとだけうたってみてよ!
ソナタちゃんの歌声がきこえたら、シュナちゃんも『ソナタちゃんがきた』って、わかってくれるし!」
「うん、わかった!」
そうしてソナタはうたいだします。
しおのかおりの風にのり、きれいな歌声が広がっていきます。
「あ、ソナタちゃんだ!」
ハンター道場の近くで練習をしていた、みんながうれしそうに走ってきます。
でも、そのなかにシュナちゃんはいませんでした。
10.ハンター道場と、イツカお兄ちゃん
「こんにちわ!
ねえみんな、シュナちゃん知らない?」
ここにいるのは、ほとんどみんな、同じ島のなかまたちです。ソナタはこわがることなくきいてみます。
お返事は、すぐそばの木の上から聞こえてきました。
「シュナちゃんだったら、しばらくしたら戻ってくるぜ」
「あ、イツカお兄ちゃん!」
そこにいたのは、カナタお兄ちゃんと同じくらいの大きさの、黒ねこの妖精。
カナタお兄ちゃんの『あいぼう』の、イツカお兄ちゃんでした。
村にいるころは、いつもいっしょに遊んでくれた、元気でやさしいお兄ちゃんです。
ソナタがうれしくなってかけよっていくと、イツカお兄ちゃんもぽんっと木からとびおりてきました。
「けさ早くおつかいに行って、そのあとにミソラさんからの手紙が来たから、すれ違いになっちまったんだ。
おつかいから戻ったらすぐ追っかけてもらうことにして、三人は先に進んだ方がいいんじゃないか?」
たしかに、シュナちゃんは足がはやいです。
三人が少しぐらい先に進んでいても、あっという間に追いついてくるでしょう。
そういうわけで、イツカお兄ちゃんに伝言をお願いして、三人は再び出発しました。
『光の森』は、島のまんなか、『月の砂漠』と言われるところにあります。
そのへんは島の中でもとくべつで、そこだけには、こわーいおばけもでるのです。
ちょっとおっかないけれど、これはしかたのないこと。
もしも悪いやつが入ってきて、森の宝を持ち出したなら、大変なことになってしまうからです。
だから、おばけたちをやりすごせるのは、ソナタたち――『星の子』と呼ばれる、どうぶつの妖精たちだけになっているのでした。