↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
88/134

八一 暗躍する加速する

「うぃー、策は成った、これで」

「第三勢力、生み出したろうぜ」

 義虎と剣虎(コムホ)、誕生も宿命も同じくする虎と虎は、ここに密談を済ませた。

「両界宰相もさんざん企んでいらっしゃるでしょうが」

「知らんちゃよって、ぶっ壊す!」

「うぃー、勘ぐって、ぶっ壊そう」

 巫祚(ムージョ)や温源(オン・ウォン)と拳を突き合いつつ、義虎はうち奮えていた。

 難敵であるはずの骨羅道(ゴルラド)を仲間へ引き入れた。

 剱岳(コムアク)や真武(チン・ム)をも引き入れられるかもしれない。

「任せとけや」

 剣虎が頷いてくれる。

 なぶり合う高句麗(コグリョ)界と開京(ケギョン)界、しのぎ合う大和国(やまとのくに)に黄華国(おうがこく)、燃えたぎる戦国時代をいっそう加熱せんと競合する強大な勢力と思惑が怒鳴り散らし天地が灼け上がるなか、齢二七の社会的弱者が二人、根っこから獄炎を斬り破らんと割って入る。

 __うぃー、興奮しすぎて、おかしくなるわ!

 剣虎が明るい外へ踏み出し、振り向いてくる。

「覚えとる?《仁王(におう)》魏光龍(ウィ・グァンリョン)」

「うぃー、なんと人間道を支配しまくって今まさに将軍たる《大地神》を足止めしまくっとる、凄腕すぎまくる敏腕武官でしょ?」

 にっと、昂ぶり合う。

「オレの刎頸の友な!」

「うぃー、期待する!」

 互いのためなら首を斬られても惜しくはない、そんな友情を刎頸の交わりという。

 剣虎は光龍(クァンリョン)、怪力無双の剛激(カン・ギョク)という三人でこれを結んでいる。かつて義虎は彼らと語り合い、すでに《仁王》であった光龍にちなみ、剣虎へ《伐折羅(ばさら)》、剛激へ《金剛力士》という異名を贈った。仏法教において同一の存在とされる守護神である。

 空はいよいよ陽を頂へ掲げ輝いている。

 ばっと、義虎は猛然として飛び発った。



「超魂顕現『鉄刃戦紅《くろがねやいば・いくさのくれない》』」

 烈風の突き抜けるがごとく森を突っきり、立ちふさがる敵を蹴散らし突き抜け、義虎は開京(ケギョン)界に浮かぶ密友(ミルウ)島を脱出した。目指すは西北西に二〇〇〇キロ、高句麗(コグリョ)界に流れる遼河(ヨハ)江である。

 救うべき大和軍がいたと思われる。

 だが先に、自分を救うため開京界へ突入した高句麗界の《大地神》姜義建(カン・ウィゴン)らを救わねばならない。よって彼が魏光龍(ウィ・グァンリョン)と対峙しているという、密友島を臨む浜辺へ急行した。

 竜胆(りんどう)色の霞が立ちこめていた。

 __人間道の世界種。

 朱剣虎(チュ・ゴムホ)に訊き、覇術の仕組みは知っている。破る自信はある。

 ありすぎて困るくらいにある。だが誰がやろうと時を要する。

 おそらく畜生(ちくしょう)道の世界種に囚われたであろう大和軍は、時間が経てば経つほどに喰われ、貪られ、喪われていくだろう。一刻も早く駆け付けねばならない。

 と、霞が消え始めた。

 __剣虎(コムホ)がやってくれた⁉

 剣虎は光龍(クァンリョン)へ念話し、義虎が行くから義建(ウィゴン)を逃がすよう説得すると言った。しかしこうも言った。

『あいつぁ愚直だし、愚っ直にして、愚ーっ直なもんで、友の頼みなうえ世直しにも繋がると言えど敵将を逃してはならぬのだぁとか駄々こねる可能性がなきにしもあらずやもしれんのではなかろかと邪推せざるを得んのだよマジで』

 霞は無事に消えきった。

 __うぃー、我がマシンガントーク記録を塗り替えられたかと思ったわ。

 赤い陣羽織をひるがえし、義虎は歩み出る。

 __無事だったようで……いや。

 義建の側近と思しき武官らが憔悴している。光龍の配下と思しき兵たちも疲弊している。しかしその奥に、仁王立ちする光龍へ毅然として向かい合い、焦茶色の薄片鎧(はくへんがい)を固める偉丈夫が立っている。

 即座に察した。義建であると。

 __仁王に己を認めさせたか。

「大和国大将軍《猛虎》空柳義虎にござる」

 そこへ踏み入る。振り向かれ微笑まれる。

 光龍には睨まれている。もとより実は好かれていない。剣虎曰く、世直しを切願する同志ではあるが、心優しく正義感に溢れ、戦を望まぬ穏健派である。義建と同志にならぬはずがない。逆に、戦の臭いが付きまとう義虎のことは快く思えないのだろう。

 かっと、義虎は眼を見開く。

「仁王よ聴け、ただちに去れ」

 そもそも念のため、高句麗軍への援軍である義虎が、高句麗将である義建の前で、開京将である光龍と同志ぶることはできない。

「戦うとあらば斬る。大地神将軍、参りましょう」

「はい、大将軍(イェー、テジャングン)。よくぞご無事で……皆騎馬せよ、急ぐぞ」

「「はい、将軍(イェー、チャングン)‼」」

 __うぃー、いかにも急がねばならんよ?

 義建が戻るべき関弥(クァンミ)城は両界の境を守っている。昨日は開京軍の先鋒(せんぽう)を務める骨羅道(ゴルラド)に攻めたてられ、義虎が加勢し追い払ったが、次は本軍が押し寄せてくる。すでに多くの部隊が先行し、城を囲い込まんと迫っているだろう。関弥城が封じられれば、他の城も続々と攻撃されていく。

 全軍を率いるは、開京界最強と目される、老練なるコモドドラゴンの獣人である。

 大将軍《雲師(ウンサ)》桓龍開雲(ファン・リョンケウン)。

「それがしは大和軍を救いに行かねば」

「本官からもお頼みいたす。ご武運を」

「将軍方も、くれぐれもお気を付けて」

 ばっと、義虎は疾走する列を離れ、西北西へ舵を切る。

「髄醒顕現『鉄刃空紅戦人《くろがねやいば・そらくれないのいくさびと》』」



 〈千里眼視〉という覇能がある。

 幽体離脱して意識を飛ばすかのように、付近から遠方まで順に俯瞰して見ることができる。

 義虎と謀り、三五〇〇キロの彼方にいながら高句麗界の土流(トリュ)道へ嵐を起こした淵太祚(ヨン・テジョ)や、義虎を嵌めるため、猿虎合戦において遠く離れた城地間での空間転移を使ってみせた公孫驁広(こうそん・ごうこう)などが有している。

 碧を始末せんと暗躍する沙朝(さあさ)が捕縛した、驁広である。

「あ、ありました、兵糧庫のようです、この奥なら……」

「見張りは何人いて、障害物と距離はどれくらいある?」

「ええと、四人いま……」

「さあちゃん、人が来る」

「あいちゃん、猿ぐつわ」

 さっと、沙朝は暗い獄舎の天井へ跳び移り、腹心の中級武官・武道藍冴(ぶどうあいさ)が驁広の声を封じるのを見届ける。通路を曲がり獄卒が現れ、それを見て驚いたその瞬間、跳び下り後頭部を殴打し気絶させ、帯を掴み無音で横たわらせる。

「どれくらいある?」

 驁広のもとへ戻り猿ぐつわを外し、再び脇差(わきざし)を突き付ける。

「はい、え、ええと、俵が積まれています、人の背丈より高く、ええと五列あります……あぁ一列の幅がええと、人一人が両手を広げたぐらいですっ」

「転移する時に音はする?」

「ええと、ガラスのように空間が割れますが、音量は今話している程度でっ」

「見張りから一番離れた列の最奥に飛んで。あいちゃん、ジャミングお願い」

「天満月(あまみつつき)か朔(さく)か問おう 鬨(とき)がはしゃげば霧襖(きりぶすま) 筆は足らぬぞ四三七一 仗(じょう)もて黙らし 超(こ)ゆらば囲え 醒(さ)ますに動かず標(しるべ)に描(か)かん」

 感知妨害が広がるや沙朝は合図する。

「超魂顕現『滅離開扉(めつりかいひ)』!」

 沙朝は、あらかじめ藍冴を黄華国へ潜入させ聞き込ませ、孫悟空(そん・ごくう)の巻き添えとなり捕まった驁広が、どこへ投獄されているかを探り出させていた。そして合流し、官吏に化けて彼を連れ出しその覇玉も入手し、正体を明かして脅し、千里眼視を使わせ安全な転移先を選ばせ、今、遥かなる高句麗界の遼東(ヨドン)城へと転移した。

「待ってて。あいちゃん、行くよ」

 見張りの高句麗兵へ忍び寄り、峰打(みねう)ちして回る。

「着替えるよ。どこかの森にでも飛んで」

 二人して倒した四人を引きずって戻り、転移させ、悠々と変装を済ませ、官吏の服と半裸の兵たちは置き去りにして、再び転移させ兵糧庫へ舞い戻る。そして藍冴と驁広に見張りを演じさせておき、自らは碧を捜しに乗り出した。



 切り立つ断崖へそびえる遼東(ヨドン)城へ向け、黄華軍が出陣した。

「超魂顕現『蓮花宝貝(れんかパオペイ)』!」

 先陣をきるは、ちゃいちゃい哪吒(なた)ちゃんこと将軍《毘沙門天(びしゃもんてん)》李哪吒(り・なた)である。

「一騎討ちしよ《風の巫女》鳥居ミジメちゃん、ちゃい!」

「ん、惨めじゃないしミゴトな碧だよ頭無問題(もーまんたい)? 出るね」

「「え⁉」」

 ポニーテールをなびかせ飛び出して、蜜柑(みかん)色のチーパオに蓮華の腰布を重ね、燃えながら宙を走る二つの車輪、風火二輪(ふうかにりん)に両の素足を立て滑空し、火を噴く槍、火尖槍(かせんそう)をかまえ城壁へ突っ込んでくる哪吒へ向かい、碧は真っ向から進み出る。

「超魂顕現『碧巫飆舞《あおいしかんなぎ・つむじかぜのまい》』」

 ポニーアップをなびかせ飛び出して、白衣(びゃくえ)に赤い差袴(さしこ)を重ね、碧色に唸り逆巻き舞い上がる風を纏い滑空し、風に乗り飆回する鎖鎌をかまえ突っ込んでいく碧へ向かい、麗亜たちは揃って驚呼する。

「一つ目・疾風(はやて)の舞」

 風と炎が激突し爆ぜる。

「将軍の放つ一撃と互角を張るとは、美しい」

「おぉー、って言ってないで加勢しなきゃ!」

「おいどんらだけで、だべ」

 麗亜と妖美に振り向かれる山忠が、断崖のふもとを指さした。

「登れもしねえのに一〇〇〇人は来とるべな。なーんか企んどるべ」

「登られた場合に備え、味方ほとんどの手を空けておくと。美しい」

「でも一〇〇〇って、少ないよね」

「それが登らせれる限界なんだべ」

 碧が身をひるがえし、突きかかってくる哪吒をかわし距離を取る。だが火尖槍の柄には、碧の操る鎖が絡まっている。見とめるやいなや麗亜が動く。

「超魂顕現『空色彗星(そらいろほうきぼし)』!」

 それを見とめるやいなや碧が急降下し、哪吒が引っ張り落とされる。

「きえーっ!」

「ちゃい!」

「四つ目・鎌鼬(かまいたち)の舞」

 空色に光り剣圧が飛び、蜜柑色に燃え業火が奔り、激突し爆ぜる。

 同時に碧が畳みかけるも、哪吒は柄を掲げ鎖を引き上げ、ほとばしる風の刃への盾とし砕き、拘束を逃れ高笑いする。

 その間、黄華軍は隊列を整えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★ 書籍化! Amazonに並んでいます 「第一章」  「第二章」★   ★ 公式HPできました! 『狂え虹色 戦国志』★   ★ YouTubeあります! 「大将軍のえのき」チャンネル★
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。