絵画を探す猫 3
夕食はこれまた豪華だった。
良い焼き色の肉と、未だ新鮮さを感じさせるサラダ。
それに加えて、猫屋敷さん達のお肉と違い、僕の皿に盛り付けられているものはすでにカットされているという心遣い。非常にありがたい。
「さて」
夕食が終わり食後の甘味も楽しんだところで、猫屋敷さんがそう切り出した。
「マリー嬢、二つ聞いておきたいことがあるんだけど、良いかな」
マリーさんは上品に口元を拭い、猫屋敷さんを見る。
「ええ、もちろん。
何なりと」
「ありがとう。まず大したことではないんだけどね、君の叔父上がこの家をどんな理想のもとで建てたのか知りたいんだ。絵画好きな人間が自分の家を建てる時、何かしらの理想があったんじゃないかと思うんだけど」
言っていることはわかるけれど、それが今回の依頼にどう関わっているのかはさっぱりだ。
マリーさんも若干困惑気味である。
「え、ええ。
確か、自分だけのアトリエ、だとか。
いえ、アトリエではなく、そうです、美術館だと言っていました」
そうだったわね、と彼女の後ろに控えているメイドさんに聞く。メイドさんもこっくりと頷く。
美術館という発想には納得だ。
確かに自分のコレクションを集めたくもなるだろうし、それを手元に置いて鑑賞する場所も欲しいだろう。
さすが金持ちだというほかない行動力ではあるけれど。
しかし、こんな質問に一体何の意味が。
またも困惑する僕をよそに、猫屋敷さんは二つ目の質問を繰り出す。
「夜も少し遅いけど、できればこの後二階の探索をしたいんだ。
よければ許可をもらえないかな」
マリーさんは特に嫌な顔もしない。
おそらく早く絵画を見つけたいのだろう。
「もちろん構いません。こちらでできる限りの協力はします」
「おそらくだけどね、二階に上がればすぐにでも見つかると思うよ」
猫屋敷さんが言う。もちろんマリーさんはびっくりだろう。
自分たちがいくら探しても見つからなかったのだから。
「本当ですか、情報屋さん」
「保証する、とまでは断言できないけど。
だけど、見当はついた。
今考えてみるとヒントはいくらか残されていたし」
ヒントが残されていたと言う猫屋敷さんはあっけらかんとしたものだ。
優雅な所作で紅茶のカップに口をつけている。
「そのヒントって、何なんですか、猫屋敷さん」
抑えきれず口を開いてしまう。
助手としてはあまり良い態度ではないが、思わず疑問が口をついて出てしまう。
「私にも教えていただけますか。
いくら探しても見つからなかったのです、それをどうしてこの短時間で手がかりまで見つけてしまえるのか、ぜひお聞かせください」
マリーさんも同意見のようだ。
猫屋敷さんは再び話し始めた。