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幸せなポーションライフを  作者: 空野進
1.1.ユーフェリアの町編
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8.会話

 しばらく待っているとようやく人が近づいてくる。

 ただ、外にも聞こえるほど大きな悪態をつきながら向かってきた。


「なんでこの領主たる儂が客の出迎えなんてしないといけないんだ! これもエリックがいなくなったせいだ! 洗剤の作り手を探すと言っておったのにどこで何をしているんだ!!」


 そして、その声が扉の前から聞こえるようになると突然勢いよく扉が開く。


「わっ……」


 レフィは慌てて扉を避ける。

 そんな彼を見た領主は鼻で笑っていた。


「なんじゃ。ただのガキか……。人の家で遊ぶな! あっちに行け!」


 邪魔者を扱うかのような仕草をしてくる領主。


「いえ、僕は領主様にお話があってきたんです。少しいいですか?」

「私はお前と話をしている時間なんてない!!」


 きっぱりと言い放つ領主。もう話すことはないと言わんばかりに館の中へ戻っていこうとする。


「もし、今町で流行っている洗剤のこと……といってもですか?」


 それを聞いて領主は足を止めていた。


「……今なんと言った?」

「この町で流行っている洗剤……といいました。それの作り方を僕は知ってますから」


 すると領主がようやくレフィのことを見てくる。


「……詳しく聞かせろ。いや、ここじゃ駄目だな。中に入れ!」

「それじゃあ失礼します」


 領主の後に続いてレフィも中に入っていく。


「レフィ、気をつけろ。何やらいやな予感がする……」


 リルが注意を促してくる。


「うん、大丈夫だよ。それに地下の気配、そのままにするわけにはいかないんでしょ?」

「そうだな……、人間には違いないがかなり弱っている。私が見落としそうになるくらいだからな。早く手を施さないとまずいだろう」


 領主に聞こえないように小声で話す。

 やはりこの気配の正体は……元領主ってことになるよね。


 レフィは少し考えながら対策を練っていた。


 まず地下への行き方がわからない。

 そして、それだけの人数をあっさり捕らえられるこの領主の力。

 警戒しておいて損はないだろう。


「何かあったときはリル、守ってね」

「あぁ、任せろ!」



 レフィが案内されたのは客間だった。豪華なソファーやテーブルなどが置かれていた広い部屋なのだが、その中に二人だけでいるとさすがに不気味な気がする。


「そこに座るといい」


 領主が促してくるので、レフィはソファーに腰掛ける。


「ちょうどこの真下だな。気配があるのは……」


 つまり、この部屋には何か仕掛けがあるんだな。

 あとはそれを発動してもらえれば――。


 領主がその向かいに座ると身を乗り出すように聞いてくる。


「それで洗剤のことだ! さっきは何を言おうとしていた?」

「実はあの洗剤は僕が作ったものなんですよ。あの何でも屋は場所を借りていただけで無関係ですよ」


 一応老人には迷惑がかからないようにそこを強調して伝える。

 ただ、そう簡単には信じてもらえなかった。


「言葉だけじゃ信じられないな。いや……、お前どこかで会ったことないか?」


 領主がじっくりレフィのことを見てくる。

 男爵家の五男だったわけだからどこかで会っていてもおかしくないが……。


「気のせいだな」


 あっさりそう結論づけていた。

 レフィ自身も覚えていないくらいだから仕方ないだろう。

 それよりも話を進めよう。


「これを見てください」


 レフィは汚れ落としのポーションをテーブルに置く。


「これは洗剤と言っていますけど、正式名称は汚れ落としのポーションです」


 じっくりポーションを見る領主。


「確かに本物だな。だが、それをお前が作った証拠はないだろ?」


 実際に目の前で作って見せてもいいんだけど……。

 ちらっとリルの方を見ると首を横に振っていた。

 どうやらスキルを使うところは見せるなと言っているようだった。


「えぇ、確証はないです。だから信じてもらうしかないですね……」


 領主はレフィのことを食い入るように見つめてくる。


「わかった。お前の言うことを信じてやろう。だから私のために洗剤を作るといい」


 領主の目が怪しく光る。

 その瞬間にパッと人くらいのサイズまで大きくなったリルが前に出てレフィを守る。


「おい、今何を発動しようとした?」


 鋭く領主を睨みつけるリル。すると領主は手を顔に当てて急に笑い出す。


「くくくっ、気づかれたか。もう少しで私のスキルを使えたんだがな」

「……大方催眠系のスキルなんだろ?」


 リルが見破ってくれてよかったかもしれない。

 一応何があっても自分を治せるように対策はしてきたのだが、それはあくまでも一度食らった上で治すわけだから、身動きが取れなくなる催眠系のスキルとは相性が悪かった。


「まぁチャンスはいくらでもある。それまではそこでおとなしくしてるといい」


 領主が立ち上がったかと思うと、壁に隠されたボタンを押していた。

 その瞬間にレフィの足元にポッカリと穴が開き、落ちていった。


 ◇


「こうも狙い通りに行くとはね」


 地下に落ちたレフィは嬉しそうに微笑んでいた。


「まだこれからだ。どうやらここはほかの奴らがいる場所とは違うようだ」


 リルの言うとおり、落ちた先は出口のない密閉された空間だった。レフィと少し大きくなったリルだけで身動きがとれなくなるほど狭い場所。

 しかも、周りは石の壁で覆われて力では壊せそうになかった。


「私が大きくなって抜け出そうか?」

「リルが大きくなったら挟まって余計抜け出せなくなるんじゃないかな?」

「……」


 今もレフィ一人が立っているのがやっとの場所なのだから元の大きさのリルが動けるのは思えない。


「それよりもここからどうやって気配のした方向へ行くか……だよね」


 動ける範囲で壁を叩いていく。

 しかし、返ってくる音はどこも同じだった。

 つまり、何も隠されてはいなさそうだ。


「うーん、どうしようかな」


 抜け出す方法はいくつかあるけど、どれを取ろうかなと考えていると再びリルが言ってくる。


「この壁の隣から何かの気配がするな」


 どうやらそこに気配がした人たちがいるようだった。

 でも、すぐ近くにいるなら爆発させて壁を壊すわけにもいかない。


 第一、そんなことをしたら壁に密接してるレフィ自身も反動を受けてしまう。


「それならあまり派手に壊す方法は使えないね……。これならどうかな」


 レフィは新しくポーションを作り出した。

 そして、それを壁にかけるとゆっくり溶け始めていた。


「石を溶かす薬だよ。ちょっと危険だから絶対に触らないでね!」


 ゆっくり前足を伸ばしていたリルに注意を促す。

 すると慌ててそれを引っ込めていた。



 しばらくして、壁を完全にとかし終えると隣は少し大きな……、逃げ道のない部屋に続いていた。


「おや、君は……確かアールデルス家の?」


 そして、そこには何人かの男女が捕らえられているようだった。

 近くにいた初老の男性がレフィに対して話しかけてくる。

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