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幸せなポーションライフを  作者: 空野進
1.1.ユーフェリアの町編
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7.領主

 一応レフィは自分の考えがあっているかを何でも屋の老人に確認した。


「あの大きな館の主? 確かにあそこは領主様の館じゃが悪いことは言わん、近づかない方がいいぞ」


 老人は心配そうにレフィのことを見ながら言ってくる。


「あまりいい人ではないのですか?」

「あぁ……。ただ、あまり大声で言う出ないぞ。とにかく金に汚く、欲しいものは手に入れないと気が済まない質の人物じゃ。前の領主様は温和で優しい方であったのだが、一月ほど前から行方不明でな。代わりに息子が領主様となっているが、家臣の人たちも嫌気がさして逃げ出してるともっぱらの噂なんじゃ」


 老人はレフィに近づいて小声で教えてくれる。


「それで洗剤も無理矢理買っていったのですね」

「……やはり気づいておったか。そういうことじゃ。領主様に逆らってはこの町に住んでいられなくなるからな。儂みたいな老人は追い出されたら野垂れ死ぬしかなくなってしまう……」


 それで渡したくはないけど、いやいや洗剤を渡したんだな。


「わかりました。僕の方でも何か対策を考えてみますね」

「い、いや、絶対に手を出すんじゃないぞ!? 領主様相手に何かできるはずがないからな」


 心配そうに言ってくる老人。ただ、レフィはどうやって領主を懲らしめるかと考えてその言葉は耳に入らなかった。



 翌日、レフィはいつもと同じように汚れ落としのポーションを販売していた。


「いらっしゃいませー。とってもよく落ちる洗剤ですよー!」


 大きな声で宣伝していると昨日の男性が店に近づいてくる。


「店主はいるかー!!」


 レフィのことを無視して、店の中に入って大声を上げる。


「なんじゃ……。あ、あなたは……」

「何でも屋、お前は領主様への謀反の疑いによりついてきてもらう!」

「えっ……、それはどういうことじゃ?」


 あまりに突然のことに困惑する老人。

 しかし、男は口元をつり上げて答える。


「お前はたくさんある洗剤をあたかも少量しかないようにごまかして領主様へ売りつけた。これは謀反と言わずに何という!」

「そ、そんな……」


 顔を青ざめる老人。

 さすがに今のは無理がありすぎるのではとレフィは老人と男の間に入る。


「ちょ、ちょっと待ってください! 洗剤を持ってきたのは僕ですよ? この人は関係ないです!」


 すると男は信じられないものを見る目でレフィのことを眺めてくる。


「ほう……、では老人は捕らえ、お前には一緒に来てもらおうか!」


 老人を縛り上げる男。どうやらまともに話にならないようだ。


「どうするのだ? 私がやろうか?」

「リルは見てて。このくらいなら僕だけで大丈夫だから……」


 仕方なくレフィは黙って従うように見せかけて男の側に寄っていく。


「そうだ、素直に言うことを聞けば悪いようにはしない」


 にやにやと笑う男。

 大方、領主の元にレフィを連れて行って褒められることを考えているのだろう。


(まぁ、僕もいい扱いは受けないだろうな)


 男に見えないように苦笑を浮かべるとレフィは一本のポーションを作り出しておいた。

 ただ、男は素直に従っていると思い、そのことに気づいた様子はなかった。


 そして、男のすぐ側まで寄ったタイミングでポーションの蓋を開け、男に振りかけた。


「な、何をする……ん……だ……」


 ポーションを駆けられた男は一瞬慌てたが、すぐにその場に倒れてしまった。


「今のは眠り薬か?」


 男を店の奥に隠している時にレフィが聞いてくる。


「違うよ。あれはただの臭い薬だよ。まともに浴びたら気絶してしまうほどのね」


 軽く舌を出すレフィ。

 それを聞いてリルは男に向けて鼻を近づけるがすぐに離してしまう。


「くさっ!!」

「でしょ。これなら別のところに行こうとしても臭いで気づくし、これからすることの邪魔もできないだろうからね」

「なるほどな……」


 必死に鼻をそらしながら話すリル。

 そして、男をとりあえず隠し終えるとしっかり拘束のポーションをかけて動けなくした上で老人の側に近づいていった。


「大丈夫ですか?」

「あぁ、儂は大丈夫じゃが……、問題はお主じゃ!」


 老人の拘束を解くとレフィに向けて心配そうな顔をする。


「とにかくすぐにこの町を出るんじゃ。領主様の家来を倒してしまったのじゃからきっと極刑に処されてしまうぞ」


 顔を青くする老人。

 しかし、レフィは安心させるように笑みを見せる。


「大丈夫ですよ。今から領主とは話をつけてきますから……」

「一体何をするんじゃ……」


 老人が声をかけるが、レフィはそれ以上何も言わなかった。



 そして、レフィはまっすぐに領主の館へとやってくる。


「まっすぐに来てよかったのか?」

「うん、本当ならあの人にしたことを領主にしようとしたんだけどね」


 あの臭いはしばらく取れない。

 だからこそ領主にはちょうどいいと思ったんだけど。


「僕のお世話になった人を困らせるなら仕方ないよ」

「……無理はするなよ。そのときは私が元の姿に戻るからな」

「はははっ……、善処するよ」


 リルの注意を聞き流すとレフィはノッカーをならす。


 コンコン……。


「……」


 しばらく待つが誰も出てこない。


「あれっ?」


 首をかしげるレフィに対してリルが答える。


「館の中には一人しかいないぞ? いや、地下に数人の気配もあるな」

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