6.日常へ……
翌日、ユリウスはすこし慌てていた。
確かに効果の大小はあるものの今まで洗脳の魔法が効かなかったことはない。
それが急に一切使えなくなってしまったのだ。
いや、正確に言えば確かに洗脳の魔法はつかった。
そのはずなのに誰一人操られることなく、様子すら変わることがなかった。
ど、どういうことだ? ……あいつか!!
ユリウスの頭の中にレフィの顔がよぎる。
こんなことができるのはあいつを置いて他をいない。
十二分に警戒はしていたはずなのだが、それでもその隙を突いて、一切気づかせることなくポーションを使ってくる。
敵対する相手を間違えたか……。
ユリウスはがっくりと頭を下げていた。
◇
「ふわぁぁぁ……、今日はだいぶのんびりとしているね」
「あぁ、怪しい気配がないからだろうな」
「うん、ちょっと色々としておいたからね」
「お前が色々というとすごく怖いんだが――」
リルがすこし眉をひそめながらレフィのことを見てくる。
ただ、レフィはそれを気にした様子はなく、笑みを浮かべながら言う。
「それよりも久々にちょっと散歩でも行かない?」
「一帯どういう風の吹き回しなんだ?」
「別にたいした理由はないよ。ここ最近バタバタしていたからのんびりしたいなって。町にいるより外で散歩した方がのんびりできるでしょ?」
「そういうことが。いいぞ。我もたまには元の姿に戻りたいからな」
「元の姿?」
レフィが首を傾げるとリルが怒った表情を見せてくる。
「我は元々このサイズの体じゃないぞ?」
「そういえばそうだったね。最近いつもその姿だから忘れてたよ」
「これは一度我の本当の姿をじっくり思い出させる必要があるな。よし、早速出かけるぞ」
「ちょっと待って。まだ朝ご飯が――」
「そんなもの、外でも食える」
「わ、わかったよ。だから押さないで!」
レフィはリルに押されるがまま町の外へ向かって出かけていった。
◇
「どうだ、これが本来の我の姿だぞ!」
町の外へ出るなり、リルは巨大な神狼の姿へ変わっていた。
ただ、その姿は前と比べるとどこか変だった。
自慢の白銀の毛並みはそのままだし、大きさも変わっていない。ただ――。
「リル、もしかして太った?」
「……!?」
なんだかリルの体は丸くなっていた。
それはそれで可愛らしいのでありだけど、姿が以前とは違っていたので思わず聞いてしまった。
するとリルが口をぽっかりと開けて呆然としていた。
「ま、まさか、我は神狼だ。そんな太るなんてことは――」
リルが自分の体をじっくり見ていく。
そして、自分の体が以前に比べてはるかに大きくなっていることに気づき、思わずうな垂れていた。
その体勢のままリルは呟く。
「乗れ……」
「えっと、何?」
「乗れ。思いっきり走り回るぞ!」
リルがレフィの体を掴みあげるとそのまま力の限り駆け出していた。
全ては痩せるために……。
(一応痩せるポーションも作れるけど……、それはリルには黙っておこう)




