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幸せなポーションライフを  作者: 空野進
1.1.ユーフェリアの町編
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5.大流行

「ふわぁ……、柔らかい布団だー」


 宿をとったレフィは、部屋に置かれたベッドへダイブしていた。

 しっかり綺麗にされていた布団からは太陽の香りのようなものを感じた。


「やっぱりベッドはいいよね」


 ベッドの上でゴロゴロ転がっているとリルが呆れたような声を上げてくる。


「そんなことをしていていいのか? 今回手に入れた金は六日分の宿代だけだろ?」

「でもそれだけの日にちがあればいろんなものを売ることができるよ。とにかく今は疲れをとる方が大切だよ。リルもゆっくり休もうよ」


 レフィは自分の隣をポンポンと叩く。


「ふぅ……、仕方ないな」


 リルは叩かれた場所へと移動すると一緒に眠りについた。



 翌日、レフィはお金を稼ぐ方法を考えて昨日の何でも屋へと足を運んでみた。

 結局昨日はポーションを売ることができなかったもんね。今日こそは一つくらい売らないと……。

 そう思っていたのだが、何でも屋に着いた瞬間にそんな考えは消し飛んでしまった。


「そ、そなたは昨日の……。ま、待っておったぞ!!」


 何でも屋に入った瞬間に老人が目の色を変えて近づいてくる。


「ど、どうしたのですか?」

「き、昨日の洗剤じゃ。あ、あれはもうないのか?」


 三つ渡したはずなのにもうなくなったのかな?


「一応ありますけど……」

「売ってくれ……。昨日の倍……、いや、三倍の値段を出す……」


 さすがにこの様子はおかしい。何かあったのだろうか。

 リルも警戒している様子だったし……。


「とにかく落ち着いてください。詳しく話を聞かせてもらってもいいですか?」


 それからレフィは老人から話を聞いた。


「それがあの洗剤じゃが、魔法を使うより汚れが落ちるのじゃ……」


 普通、かなり汚れが溜まってきたら魔法使いに頼んで掃除をする。

 そのときに呼ばれるのは水魔法のスキルを持つ魔法使いなのだが、あくまでも高威力の水で汚れを落とすだけ……。

 その範囲は狭く、また、その魔法使いを雇うための費用もかなりかかる。一人雇うのに最低でも金貨数枚……。スキルレベルの高い者になると十数枚に届く場合もあった。

 しかも、完全に汚れは落とすことができないらしい。


 確かにこの町にひかれた石畳も少しくすんでいるように見える。これも汚れてるからなのかもしれない。


 レフィが用意した汚れ落としのポーションは魔法使いを雇うより安価で簡単に汚れを落としてしまうことで、老人が持っていたポーションも一瞬で売れてしまったようだ。


「本当なら儂一人で使うつもりじゃったのだ。ただ、あまりにきれいに汚れが落ちるからつい自慢したくなってな。しばらくいろんな人に自慢をしているとこの洗剤を買いたいという人物が現れたのじゃ。しかも相手が……な。どうしても断れない相手で金もしっかり払ってきては断り切れなくて――」


 老人は奥におかれた金貨の方に視線を向ける。

 断れない相手……貴族が無理やり買っていったのかもしれない。

 ふと、レフィは自分を追い出した両親のことを思い出したが、首を振ってそのイメージを振り払う。

 それと同時にある考えが浮かんだ。


 この汚れ落としのポーションでかなりお金を稼ぐことができるんじゃないかな?

 何をするにもお金は必要になるんだし、ここで稼いでおくのも悪くないかも……。あとは……意趣返しかな。貴族の人が自分だけ使おうと無理やり買っていったみたいだけど、それが普通に売られるようになったら面白いよね……。


 レフィはニヤリと微笑むと老人に話しかける。


「わかりました。ただ、僕のお願いも聞いてもらってもいいですか?」



 しばらくの間、老人の店を借りて本格的に汚れ落としのポーションを売ることになった。

 何に使うかわからない道具は奥に片付けて、店の前にはポーションだけ並べていた。


「いらっしゃいませー! 何でも落とす不思議な洗剤ですよー! 是非見ていってくださいー!」


 大声を上げてレフィが客引きをする。


 老人に提案したことは二つ。本格的にこのポーションを販売するから場所を貸してほしい。売り上げはレフィがもらう代わりに老人には汚れ落としの洗剤を毎日五本ずつ渡す。


 本当なら売り上げは折半にしようとしたのだが、老人の方がそれよりも洗剤の方がほしいと言ってきたので、こういう提案になっていた。

 早速今日の分のポーションを渡すと訳のわからない道具とともに奥へと引っ込んでしまった。

 どうやらそれらの道具の汚れを落としているみたいだ。


 怪しげな表情を浮かべながら……、ただ嬉しそうに洗剤を使っていた。


「……中毒性はないはずなんだけどね」


 老人の姿を見ていると少しだけ不安になる。


 ただ、そちらを見ないようにしながら店先で声を上げていると早速近づいてくる女性が現れる。


「それ、洗剤らしいけど、一体どのくらいの汚れが落とせるの?」


 その質問を聞いてレフィはにやりと微笑んだ。


「では、少し試してみますね。例えば、町中に張り巡らされた石畳。長年の汚れで少しくすんでいますけど、この洗剤を一滴垂らしてみると――」


 レフィがポーションを石畳にかけるとまるで新品みたいに輝き始める。


「このとおりです。一瞬で新品同様に早変わりです。一本銀貨四枚です。どうですか?」


 昨日老人に売ったときの値段は銀貨二枚。ただ、これはお店に売ったときの値段……ということを考えると販売価格はこのくらいかなと思ったのだが――。


「えっ、そ、そんなに安いのですか? とりあえず十本ほどいただいてもよろしいですか?」


 その言葉を聞いてレフィは驚いてしまう。

 まさかこんなに一瞬で売れてしまうなんてさすがに予想外だった。

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