4.店
ようやくユーリばあさんの店……と言っていた場所へたどり着く。
「いらっしゃい。何か物入りかな?」
店に入ると老婆が声をかけてくる。
「あっ、いえ、僕はこの町に来たばかりでこのあたりにあるお店を見に来ただけなんですよ」
「そうかい……。それならゆっくり見ていくと良いよ」
それだけ言うと老婆は側に置かれた椅子に腰をかけていた。
そして、レフィは店内を眺めていた。
(やっぱり品揃えは王都の方がいいね……)
「坊やはどこからきたんだい?」
品物を眺めていると老婆が声をかけてくる。
「僕は王都からやってきました」
「それならこの店の品揃えはかなり悪いだろう。それに値段もどうしても割高になってしまう……」
「いえ……」
なんとか否定しようとするが老婆が首を横に振っていた。
「いいんだよ。事実だからね。それにこの町は基本皆が自給自足をしているのでな。この店の品が必要になることもほとんどないのじゃ」
確かにこの町の人はみんな畑を耕しているところしか見かけなかった。
「まぁこの店は儂の趣味のようなものじゃからな。気が向いたら寄ってくれ」
◇
店を出てくるとレフィは再び振り返って店の方を眺めていた。
「なんとかこのお店の建て直しとかは出来ないのかな?」
「止めておけ。余計な騒ぎを起こさないのだろう?」
「うん……」
少し顔を伏せるレフィに対して、リルはため息を吐きながら答える。
「それにレフィが買い物に行けば少しは楽になるだろう?」
「そ、そうだね。必要なものはあの店で買うことにするよ!」
すっかりレフィは機嫌を戻していた。
そして、家へ向かって戻っていくと途中でミシャが街道を歩いているのに気づく。
彼女はレフィに気づくと嬉しそうに側へと近付いてくる。
もう体は大丈夫そうなんだ……。
「レフィ様、あのときはありがとうございました」
ミシャが頭を下げてお礼を言ってくる。
「いえ、気にしないでください。それよりももう体は大丈夫なんですね」
「えぇ、すっかりよくなりました。これもレフィ様のおかげです」
確かに顔色を見る限りすっかり元気を取り戻している様子だった。
「それでレフィ様は何をされていたのですか?」
「僕はこの町へ住むことになったからまわりを見て回ろうかなって思ったのですよ」
「それなら私が案内してあげましょうか?」
「それじゃあせっかくですからお願いしても良いですか?」
「はいっ」
嬉しそうに笑みを返してくれる。
そして、さりげなくレフィの手を掴むとそのまま町を案内してくれる。
◇
「あそこはマイコスさんの畑でとっても美味しい果物を作っているんですよ。その隣にはライズンさんの畑。ただ、あの野菜、私は少し苦手かな……。あっ、そっちには可愛い小鳥を飼ってるニグリットさんの家があるんですよ。少し寄っても良いですか?」
あっちへ行ったり、こっちへ行ったりと少し騒がしく動き回るミシャ。ただ、彼女はすごく楽しそうで、それにつられるように町の人も笑顔を見せてくれていた。
「ミシャ様。もう体は元気になったんだな……」
「はいっ、レフィ様のおかげですっかりよくなりました。ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした」
ミシャが頭を下げると彼はポンポンッと彼女の頭を叩いていた。
「もう、病気になんてなるんじゃないぞ。町のみんなで心配したんだからな」
「大丈夫です。この町にはレフィ様が住んでくれていますから」
笑顔で答えるミシャ。
「そういえばそっちのレフィ……? だったな。医者なのか?」
「いえ、お医者さんではないですよね?」
ミシャがどう言って良いのか少し困っている様子だった。
「えっと、僕は便利屋をしているレフィと言います。よろしくお願いします」
「そっか。俺はカインツ。主に飼育を担当している」
「カインツさんのところにはとっても可愛い動物達がたくさんいるんですよ……」
ミシャが嬉しそうに答える。ただ、カインツは頭をかいて眉をひそめていた。
「うちの動物は主に食料になるんだがな……」
「大丈夫ですよ。それもわかっていますから」
そう答えるミシャはどこか寂しそうではあった。
「仕方ないこと……なんですもんね。生きていく上では……」
彼女の悲しそうな顔を見たくないレフィはグッと手に持っているポーションを握りしめる。
「お、おいっ、それは私のポーションだぞ!!」
小声で注意をしてくるリル。レフィも声を落として答える。
「うん、わかっているよ」
「何が大丈夫なのですか?」
突然すぐ側まで近付いてきたミシャに声をかけられて思わずポーションを落としてしまう。
「あっ!?」
リルが声を漏らすが、レフィが手に持っていた肉を生み出すポーション……と思われるものが地面に落ち、瓶が割れて薬をあたりにまき散らしていた。
「とりあえず効果を消さないと!!」
レフィが慌てて効果消しポーションを作り出そうとするがそのときには既に地面から何かの芽が出てきていた。




