1.貴族の娘
レフィたちは盗っ人に教えてもらった貴族の館を目指して出発した。
「大まかな場所しか聞いてないけど、それで場所ってわかるかな?」
「行ってみたらどうにかなるだろう」
元の体に戻ったリルに乗るとその領主がいる町へ向かっていく。
「でも、僕たちが行くときには治し終わってるかもしれないよね」
「いや、相手が貴族と考えると簡単に治せるものならそもそも治療できる人物を探したりしないと思うぞ。つまり、回復魔法の使い手や手持ちの薬はすでに使って、その上で治せなかったと見るべきだろうな」
「それじゃあ簡単に治せない病気なんだ……」
それじゃあ自分のポーションでも治せないんじゃないだろうかとレフィは少し不安になる。
ただ、それはあっさりリルが否定する。
「レフィのポーションなら治せるぞ。頭がおかしいレベルのポーションだからな」
「そ、そんなことないと思うよ。た、たしかにEXレベルのポーション作成能力だけど、どんなものでも作れるなんて……いや、ポーションならどんなものでも簡単に作れるね」
「だろう。つまり、どんな病気でもレフィなら治すことができるんだ」
(それならいいけど、僕自身が力の限界を調べた訳じゃないからなぁ……)
レフィは苦笑を浮かべながらリルの言葉を聞いていた。
◇
しばらくすると初めて来た町が見えてくる。
「この町がそうなのかな?」
「おそらくな。奥にある大きな館が貴族の館じゃないか?」
貴族がいる町にしては今までの町に比べると町の整備が行き届いていない。
街道はむき出しの土だし、発達した町というより田畑が多い農村といった雰囲気に近い。
ただ、そのおかげで町の中は穏やかな雰囲気が流れていた。
町を行き来する人たちは農具を持って、ゆっくり田畑へ向けて歩いている。
レフィたちとすれ違うと軽く頭を下げてくれる。
「なんか平和な町だね。本当にこの町で合っているのかな」
「奥の館に行けばわかるだろう。早速行ってみるか?」
「そうだね」
レフィ達は大きな館を目指して歩いて行く。するとその途中で畑を耕していた人に声をかけられる。
「そっちは貴族様の館だぞ。何か用があるのか?」
「えぇ、この貴族の娘さんが病に倒れていると聞いてきたのですが……」
「あぁ、回復魔法使いの方ですか……。それならよろしければ案内しましょうか?」
男の人はやっていた畑作業の手を止めて近づいてくる。
「あっ、いえ、そこまでしていただかなくても……」
「お気になさらないでください。領主様のお嬢様を救っていただこうという方なのですから出来ることはさせてください」
どうやらこの町の領主は町の人から慕われているようだ。
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えさせていただきます」
男の人に頭を下げて領主の館へと案内してもらう途中に領主の娘の症状について詳しく教えてもらう。
「領主様のお嬢様はいつも私たちにも笑顔で挨拶をしてくれる心優しいお方でした。それが突然なんの前触れもなく苦しみ出されて、部屋から出られなくなられたのです」
やっぱりこの町の貴族は誰かに迷惑をかけるようなことはしてないんだな……。
レフィは今までであった貴族を思い出して苦笑いをする。
「お願いします。お嬢様を救ってあげてください」
男の人に両手を握られる。
「大丈夫です。できることはさせていただきます」
「ありがとうございます」
男の人は嬉しそうに微笑むと、そのまま貴族の館へと向かって進んでいった。
◇
「それじゃあぜひよろしくお願いします」
館の前にたどり着くと男の人は一礼すると畑に戻っていった。
「それじゃあ僕たちは中に入ろうか」
「あぁ、そうだな」
レフィは扉のノッカーを叩くと中から返事が聞こえてくるのを待った。
「はい、どちら様でございますか?」
中から男の人の声が聞こえてくる。
「こちらの娘さんが病気だと聞いてきたのですけど……」
「なるほど、治療ができる方ですか。では、少々お待ちいただいてよろしいでしょうか?」
「はい、わかりました」
◇
しばらくすると玄関のドアが開かれる。
そこには執事服姿の男性が出迎えてくれる。
「お待たせいたしました。お館様がお会いになってくださるそうです。こちらにお越しください」
執事の人に案内されて、レフィ達は客間へとやってくる。
そこには中央に豪華なテーブルとソファーが置かれており、疲れ切った初老の男性が座っていた。
その向かいの席に促されて、席に着く。
「随分と若い方ですが、本当に我が娘を治してくれるというのか?」
「はい、おそらく治療できると思います」
「失礼かもしれませんが、我が娘を治せるほど高名な回復の使い手の少年……、私は一度も名前を聞いたことがないのですが、お名前を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」
「僕はレフィと言います。王都で解決屋をしています」
レフィの名を聞くと領主は首を傾げていた。
「レフィ……。その名前どこかで……」
じっくりレフィの顔を覗き込んでくる領主。そして、何か思い出すようにハッと口を開けていた。
「も、もしかして、アールデルスのところの子か!?」




