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幸せなポーションライフを  作者: 空野進
1.1.ユーフェリアの町編
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4.町の散策と売れそうな薬

 町の中に入るとその栄え具合はより一層わかった。

 地面は町一面に石畳がひかれ、行き交う人々は楽しそうな表情を浮かべ、建ち並ぶ建物は堅固さと装飾性を兼ね備えた作りとなっていた。


「まずは宿を探さないとだね」


 町の中を見ながらリルに話しかける。


「でも金はあるのか? 確か宿に泊まるには金がかかるんだよな」

「大丈夫、ポーションを売ってなんとか稼ぐよ……」

「こんな平和な町でポーションが売れるとも思えないが?」


 確かに町中でポーションが要りそうなイメージが湧かなかった。


「だ、大丈夫だよ……。ま、まずは薬屋に行ってみよう……」


 少し慌てた様子のレフィは必死に町の中を探して、細い路地の奥にようやく薬の看板がかけられた店を発見する。


 やけにボロボロな店で、客が入っているように見えない。


「く、薬屋には違いないよね」


 不安な気持ちに襲われながらもレフィは店の中に入ろうとする。


「あ、あれっ?」


 扉を開けようとするけど、鍵がかかっているようで中に入れなかった。


「そこの薬屋ならもう閉店してるよ。今時薬屋は売れないからね」

「えっ!?」


 すぐそばにいた親切な女性が教えてくれる。

 ただ、流石に店自体が閉まっているのは予想外だった。


「どこか怪我したなら大通りに出てすぐの所に回復屋があるからそこで回復魔法をかけてもらうといいよ」

「ありがとうございます」


 女性にお礼を言ったあと、大通りの方へ向かって歩いて行った。


 ◇


 大通りにはたくさんの店が並んでいた。

 武器屋、防具屋、回復屋。

 他にも宿屋、冒険者ギルド、料理屋などの店が並んでいるがどこにもポーションが置かれている様子はない。


「どこにもポーションが置いてあるお店はないね。ちょっと人に聞いてみるよ」


 周りを見て、聞きやすそうな人に聞いてみる。


「すみません、この辺りでポーションが売れそうな場所ってありますか?」

「ポーション? いや、流石に売れないと思うぞ」


 あっさり売れないと言われてしまう。


 それを聞いてレフィは唖然としてしまった。


「どうしても売りたいと言うのならこの道の先にある何でも屋に行ってみるといい。あそこの老人なら一つくらいは買ってくれるかもしれないぞ」


 重要そうなことも教えてもらった。


「あ、ありがとうございます……」


 レフィは深々と頭を下げると、早速教えてもらった何でも屋へと向かって行った。


 ◇


 教えてもらった何でも屋は本当に色んなものが置かれていた。

 ただ、そのほとんどがレフィから見れば何の用途のものかわからなかった。


「すみません、誰かいませんか?」


 店内に入ると声をかけるが反応がなかった。

 もしかして、また閉店してるの?


「奥から人の気配がするぞ」


 リルが小声で教えてくれる。


 そのまま奥へと進んでいくと老人が何かを磨いていた。


「すみません、すこしいいですか?」


 よほど磨くことに集中してるのか、反応がない。

 ただ、近づいたことで何を磨いているのかわかった。


 大鍋の中が焦げてしまったようで、それを磨いているようだった。


「くっ、厄介な焦げじゃ。これが簡単に落ちる洗剤でもあればいいのに……」


 老人がつぶやく。

 もしかして、そんな薬を使ったら話を聞いてもらえるのだろうか?


 早速どんな汚れも落とすポーションを生み出す。


「これを使ってみますか?」


 老人の目の前にポーションを差し出してみる。


「なんじゃ、お主たちは?」


 ようやくレフィたちに気づいた老人。


「それよりその汚れを落とすんですよね。これを使ってみませんか?」

「……それは?」

「これは洗剤ですよ。その汚れにも効くと思いますけど」


 その言葉を聞いた瞬間に老人はポーションを受け取っていた。

 そして、それを一滴。鍋の中に落とし込むとすぐにその表情が驚きのものに変わる。


「な、なんじゃこれは! こ、こんなものがあったとは……」


 老人の目の色が変わり、一心不乱に鍋を洗い始めた。

 それをレフィは終わるまで眺めていた。


 数分が過ぎると老人が持つ鍋はまるで新品のように光り輝きていた。


「信じられん……。一体どんな薬だったのじゃ?」


 老人が鍋を見ながら驚きの表情を浮かべていた。


「無事に汚れも落ちましたね。それで僕のポーションを売りたいのですけど――」


 老人に普通のポーションを渡そうとする。


「そんなものはどうでも良い。今さっきの洗剤は……、洗剤はもっとないのか!?」

「あ、ありますけど……」


 突然詰め寄られて驚きながら話す。


「それを一本売ってもらえないか。金は銀貨一枚……いや、二枚だそう。どうじゃ?」


 この洗剤の価値がどのくらいなのかわからないため、反応がしづらかった。


 とりあえず今の目的は宿屋だもんね。


「この町の宿屋っていくらくらいですか?」


 老人にとっては唐突に聞こえたかもしれないが、この洗剤の値段を告げる上で非常に良い重要な部分になるので聞いてみる。


「そうじゃな。多少の増減はあるが、だいたい銀貨一枚じゃ」


 流石に数日くらいは宿を借りておかないとまずいよね。

 レフィは老人の目の前に先ほどの汚れ落としのポーションを三本出した。


「じゃあこれ三本で銀貨六枚……ならどうですか?」


 老人に逆に提案してみると「いいのか?」と逆に聞かれてしまった。

 レフィが頷いたのをみると老人はすぐに銀貨六枚を渡してくる。


「ありがとうございます」


 レフィはポーション三本渡すと頭を下げていた。


「いや、わしの方がありがたい。また何かあったらいつでもうちの店へ来てくれ」


 嬉しそうな老人に見送られてレフィは宿屋を探し始めた。

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