45.神罰
やっぱり教祖もただ聖女と御使いの名前を使いたかっただけのようだ。
それにしても昔に聖女と御使いと呼ばれた人たちがいたんだ……。どおりでその名前にやけにこだわっていたわけだ。
(やたら僕のことを聖女と呼んでいたのも僕が他の人の依頼をこなしていたからなのかも。村とか町の方で御使いと呼ばれたのは単に性別による所なのだろう。つまり、この人たちの目的を防いで、もう僕たちに付きまとわせないようにするには、教祖たちが嘘を吐いている。ということを知らしめればいいかな)
「それならやっぱり信者の人が集まるお披露目のタイミングだよね……」
やるならなるべく派手に……。ただ、怪我人だけ出さないようにしないとね。
レフィは色々考えながら他の場所も見ていった。
◇
ついにお披露目の日がやってきた。
神殿の中にはたくさんの信者たちが集まっていた。
そして、教祖や神官長が長々と挨拶をしていた。
そんな中、ミシェルが顔を青ざめながら話しかけてくる。
「さ、さすがにこれだけ人が多いと緊張するな」
「大丈夫ですよ。安心してください」
レフィも緊張はしていたものの、ミシェルの青ざめ具合を見てると自然と落ち着いていた。
そして、ついにレフィたちが呼ばれる。
「では、聖女様と御使い様にお越しいただきます!」
その言葉を聞いてレフィたちはゆっくり教祖の隣へと向かう。
「ではお一人ずつお話をしていただいてもよろしいでしょうか?」
ただ、青ざめてとても話せそうにないミシェル。
「わかりました。では、僕から――」
まずは自分の気持ちを落ち着かせるために深呼吸をする。
そして、ニヤニヤと笑う神官長や表情が変わらない教祖。
「まず挨拶を始める前に教祖さんと神官長さんに尋ねたいことがあります」
「何でしょうか?」
無表情を装いながらも少し苛立ちが見える神官長。
「聖女と御使いを探し出してきたのはもちろん信者のため……。つきましては神様のためでしょうか?」
「当たり前だ!」
神官長が声を荒げて言ってくる。その隣にいる教祖は澄んだ表情を見せていた。
「では、僕の方を見ても同じように言えますか?」
じっと神官長の目を見る。
すると神官長は一歩後ろに下がり、怯んでいた。
「も、もちろんこの儂が嘘をつく必要があるはずないだろ!」
「本当に神の前に誓えますか? 嘘をつくと神罰が下りますよ」
「くどいっ!!」
怒りのあまり声を荒げる神官長。
その瞬間にレフィは指を鳴らすと神殿の壁が激しい音を鳴らして大穴を開けていた。
(これだけじゃ弱いかな)
さらにレフィはもっと神罰に見えるように落雷が起きるポーションを使う。
それを放り投げると神殿に大きな雷が落ち、屋根に大穴を開けていた。
神殿内に悲鳴が響く。
「な、なんだ!?」
「どうやら神様は嘘を吐いてる神官長に対してお怒りのようですね」
レフィはにっこり微笑みながら答える。
すると聖女たちを見にきた信者たちがざわつき始める。
「神罰だ……。神罰が下ったぞ!」
「で、でも、神官長も教祖様も嘘を吐いてないって……」
「さ、さっきの言葉が嘘ってことは神官長たちは……」
信者たちから疑惑の目を向けられる神官長は顔を青ざめていた。
「そ、そんな……、わ、儂は嘘なんて……」
「ではもう一度試しますか?」
レフィが笑みを浮かべて手を上げていた。
すると神官長はさらに真っ青な顔になり、頭を地面につけていた。
「や、やめてくれ。わ、儂が悪かった……」
必死に謝ってくる神官長。
隣にいる教祖も顔色を悪くしていた。
「まさかあなた様は聖女で神の御使い様……。どちらも兼任されているお方なのか!?」
「えっと……、違いますよ。僕はただの人ですよ……」
微笑むレフィを見て、自分たちではどうすることもできない相手だと悟り、ガックリとうなだれていた。
◇
これでもう教祖たちから聖女の勧誘がされることはないだろう。
少し安心したレフィはこの場から去っていこうとする。
すると信者たちが声を上げてくる。
「せ、聖女様、待ってください!」
信者の一人に止められる。
ただ、レフィは足を止めなかった。
「僕は聖女じゃないですよ。神の御使いでもないです……」
「そ、それでも、お礼くらい言わせてください。本当に……、本当にありがとうございます。おかげさまで悪事を働いていた神官長たちを反省させることができました……」
お礼を言われるとどうしてもむず痒くなってしまう。
レフィは頭を軽くかく。
「いえ、気にしないでください」
それだけ言うとレフィは町の外へ向かって歩いていった。
「無事に終わったんだな……」
入り口付近で子犬サイズになっているリルと会う。
「うん、それじゃあ王都に戻ろうか」




