3.到着
「あ、あの……、た、助けていただいてありがとうございます」
少女は深々と頭を下げていた。
「気にしなくていいよ。それよりもどうしてこんなところに?」
「は、はい。実は私たちは王都に向かう途中だったのですが、その途中でこの盗賊達に襲われまして……。護衛の方もいましたが全員……」
少女が目を伏せていた。
確かに眠る盗賊達の他にたくさんの人が倒れている。
リルを倒すくらいなんだからかなり強い盗賊だったのだろう。
ただ、全員が命を奪われたわけではなさそうだ。
かろうじて息がある者も何人かいた。
「とりあえず助かりそうな人は治していくよ。その間に君も……と、とりあえず替えの服はないかな?」
レフィは少し顔を赤くしながら少女から視線を逸らした。
少女の格好は盗賊達に破られたのかボロボロで直視できるような姿ではなかった。
そのことに気づいた少女は顔を真っ赤にして、その場に座り込んで手で体を隠していた。
「あとは……土を落とすならこの水を使ってくれていいからね」
極限まで薄めたポーションを渡しておくとレフィはまだ回復できそうな人たちにポーションを飲ませていった。
◇
傷は治り、呼吸も落ち着いてきたが、護衛の人はまだ意識を取り戻さなかった。
「本当に何から何までありがとうございます。このご恩は必ず返させていただきます……」
服を着替えてきた少女が再び頭を下げてくる。
その姿は思わずレフィが見惚れてしまうほどだった。
「き、気にしないでください。僕が勝手にしたことですから……」
「で、でも……」
「それじゃあ僕はそろそろ行きますね。盗賊もしっかり拘束しましたけど、念のために注意を払ってください」
流石に眠らせるだけだと不安なので空気に触れると固まる薬を使って、盗賊達を団子状に固めておいた。顔だけは出してるので死ぬことはないだろう。
「せ、せめてお名前だけでも……」
「僕ですか? 僕はレフィです……」
それだけ伝えるとレフィは少女の前から去っていった。
◇
やっぱりお礼は貰っておいた方がよかったかな。
リルに乗り、近くの町へ向かいながら少し悩んでいた。
「まぁ王都にいる子ならそのうち会うかもしれないし。今すぐにお礼をもらわないといけないわけじゃないもんね」
思わず呟くとリルがにやりと微笑んでくる。
「もっとちゃんとお礼をしてもらえるときにしっかりもらう訳か」
「ちょっと待って! それじゃあ僕が悪者みたいじゃないかな?」
レフィの回答が面白かったのか、リルは大笑いをしながら町へ向かって駆けていく。
そして――。
「あれがそなたの言ってた町だな?」
目の前に大きな町が広がっていた。
レフィが住んでいた町より数倍大きく、遠目から見てもはっきりと栄えていることが見て取れた。
「大きな町だね。それじゃあそろそろ歩いて行こうか。あっ、リルは小さくなっておいてね」
「……わかった」
あまり小さくなることは好きではないのか、しぶしぶ承諾してくれる。
そして、小さく成ったリルは先ほどまでとは逆でレフィの頭の上に乗っていた。
「よし、それじゃあ町に向かって出発だー!」
手を上げたあと、レフィは町へ向かって歩いて行った。
◇◇◇◇◇
「助かった……のか?」
盗賊に襲われた護衛は頭を押さえながら起き上がっていた。
やつのあの能力を考えるとどう考えてもただの盗賊ではなさそうだった。
高威力の魔法を操る大盗賊……いや、下手をすると暗殺集団か……。
「そ、そうだ、ひ、姫様は!?」
護衛が慌てて飛び起きる。
するとそこには無傷で、しかも汚れ一つない少女の姿があった。
「ひ、姫様……、よくぞご無事で……」
まずは少女の安全を喜ぶ護衛。
しかし、それと同時に疑問が浮かび上がってくる。
盗賊達はどこに行ったのだろうか?
「アラン、無事だったのね」
「はっ、肝心なときに姫様をお守りできずに申し訳ありません」
アランと呼ばれた護衛は頭を下げる。
「して、盗賊の連中は……?」
「そこに寝ていますよ。一応拘束もしてあるみたいだから……」
少女に言われて初めて近くに転がっている白い球が盗賊達だと言うことに気づいた。
しかも、彼らは気持ちよさそうにすやすやと眠っているようだった。
「これは……姫様が?」
「いえ、違います。レフィという少年が助けてくれたんですよ……」
少年? もしかして、高レベルスキルを持っている魔法使いなのだろうか?
でも、この能力は一体?
「その少年は魔法使いなのですか?」
「いえ、とてもそういう風には見えなかったです。私が見ていたのは襲われると思ったタイミングで突然盗賊が眠ってしまったのです。そして、何もないところから姿を現したかと思うとみなを回復魔法で治して、私に何もないところから水をとりだしてくれて、その上で盗賊達も拘束してくれたのです」
それを本当に一人の少年が行ったのか!?
今の話を聞く限り、少年が魔法を使ったのなら最低でも四属性の魔法を使ったことになる。
相手を眠らせる風属性魔法。
姿を消す光属性魔法。
傷を癒やす回復魔法。
水を出す水魔法。
しかも、この盗賊を拘束している物体は何だろうか?
見たこともない素材だが、しっかりと拘束されていて盗賊も動けそうになかった。
一人に現れるスキルは一つと決まっていた。魔法の場合だと使える魔法属性は一つだけ……。それだけで現れた少年がとんでもない人物だと判断できた。
「とりあえず、立てるものが全員目を覚ましたら王都に戻りましょう。このことをお父様に話して、是非とも味方になってもらいましょう」
少女が頬を染めながら思い出に浸っていた。
「たしかにこれほどの力を持つ者ならぜひ仲間になって貰いたいですな。しかし、国王様はどう判断されるでしょうか?」
「大丈夫です。私がお父様にしっかり今回の出来事を話させていただきますから……」




