38.手紙
「えっと、その手紙には何が書かれてるの?」
「近くの盗賊たちとのやりとりが書かれた手紙とか誘拐の指示とかそう言ったものですね」
これ以上ないくらいの証拠だった。
「よくこんなもの残っていたね」
「いえ、これはまだ実行されてないものですから証拠として残していたのでしょうね」
ミリーナが一枚の手紙を見せてくる。
そこにはレフィの誘拐指示が書かれていた。
「レフィさんを誘拐しようなんて許せないです!」
ミリーナが手をぎゅっと握りしめて、怒りのあまり震えていた。
ただ、そんな彼女の手にはミリーナ自身を誘拐しようとしてる指示書もあるのに。
「と、とにかくこれで領主さんを捕まえることはできるの?」
「もちろんです。あとは私に任せておいてください!」
ミリーナが笑みを見せてくる。
彼女だけで大丈夫かなと思ったけど、後ろにはどこかで見たことある人たちが何人かいた。
確か王城に行った時に会った兵士の人かな?
おそらくミリーナの護衛についているのだろう。
「ミリーナ様、国王様にはこのことを報告しておきました。直に兵士達がくると思います」
「わかりました。ありがとうございます」
どうやら領主の件はこれで解決しそうだった。
そう思って空になった箱を返してもらうとまだ中に何か残っていたようで、一冊の本が地面に落ちる。
「なんだろう、これ?」
レフィが本を取ろうとするが、その前にミリーナが奪い取ってしまう。
そして、顔を真っ赤にしてすぐに隠してしまう。
「れ、レフィさんにはこの本は早すぎます!」
「えっ!?」
困惑するレフィをよそにミリーナは恥ずかしそうに首を振っていた。
◇
「あっ、お兄ちゃん、こんなところにいた! 探したんだよー!」
服を買い終わったルルカ達が戻ってくる。
「見てよ、リルの服。すっごく可愛いよ!」
ルルカが得意げに言ってくる。
その後ろには着心地悪そうに服の裾をめくったり、スカートをめくろうとしているリルの姿があった。
「あーっ、リル! またスカートをめくろうとしてる! ダメだよ、そんなことをしたら!」
「いや、なんか気になるんだ。このひらひら。これは必要なものなのか?」
「もちろんだよ!」
またおかしな言い合いをしている。
「そうだ、レフィに決めてもらったらいいんだな。どうだ、レフィ! 私にこのひらひらはいらないだろう?」
「そんなことないよね? お兄ちゃんならわかってくれるよね?」
二人が詰め寄ってくる。
(えっと、ぼ、僕はどっちの味方をしたら良いのだろう?)
どちらにも良い顔をしたくてあたふたとするレフィ。
少し考えた結果、結論を出す。
「ぼ、僕には良いかどうかはわからないけど……、でも――」
「でも?」
リルが期待をこもった目で見つめてくる。
「リルは服を着てないとダメだからね」
「……レフィの裏切り者」
脱ぐという選択肢を失わされたリルは絶望にうなだれてしまった。
◇
「あらっ、そちらの子たちは?」
ミリーナがレフィたちの会話に入ってくる。
「えっと、みんな会ったことなかった?」
リルは会ったことがあるし、ルルカは……。
「そっちの子は見たことがありますけど、もう一人の……獣人の子は初めてですよ?」
ミリーナは不思議そうにリルのことを見ていた。
「おかしなことを言うな。私とは何度もあったことあるだろう?」
「えっ、その声はもしかして、レフィさんと一緒にいた神狼さん?」
「そうじゃ。リルという」
驚きを見せるミリーナ。しかし、すぐに頬を膨らませて、レフィに近づいてくる。
「もう、レフィさんは。私というものがありながらこんなに女の子たちに囲まれて……。(あれっ、でも、レフィさんの能力を考えると妾は必要ですもんね。そうなるといずれはこの子達とも一緒に暮らすようになるのですね)」
ミリーナはにっこりと笑みを見せながらリルと握手をしていた。
「これからもよろしくお願いしますね、リルさん」
「……なんだか目が笑っておらぬぞ?」
「あははっ、そんなことないですよ……」
なんだか遠目で見てるとバチバチと火花を飛ばし合ってるように見えて近寄りがたかった。
すると、ルルカが服を引っ張ってくる。
「お兄ちゃん、向こうの方に美味しそうなご飯のお店があったよ? 一緒に行かない?」
「でも、ルルカはご飯を食べれないよね?」
「あっ!?」
普段の生活に慣れすぎたのか、ルルカは驚く。
そして、泣きそうな表情を浮かべていた。
でも、幽霊のルルカにご飯を食べられるようにするなんて……そんなのできるはずないよね。いくら実体を生み出せたポーションの力でも……。
ポンッ。
「えっ!?」
まさか本当にポーションが生まれるなんて……。
でも、これなんていう名前のポーションなんだろう。
ご飯が食べられるようになるポーション?
とにかくこれさえあればルルカも一緒に食事ができるようになるんだね。
「ルルカ、これを飲むと良いよ」
「うん、でもこれはどんなポーションなの?」
ポーションを飲みながら聞いてくる。
「食べ物が食べられるようになるポーションだよ。これでご飯も食べに行けるね」
ルルカに向けて笑みを見せると、ルルカは驚いたあと、嬉しそうに飛びかかってくる。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
すると、遠くの方から「あっ、わ、私ですらレフィさんに抱きついたことないのに!」という声が聞こえてくる。
(ちょっと待って! 姫様に抱きつかれるなんて、後から絶対に国王様に殺されるやつだよね? そんな怖いこと考えないで!)
内心ヒヤヒヤとしながらミリーナの動向を窺っていた。




