33.八首の龍
回復系の依頼も十分にこなせることをアピールした後、レフィは村を出て行こうとする。
すると村人の一人が慌てた様子でやってくる。
「そ、村長、よろしいでしょうか!」
「何かあったのか?」
体つきのいい男性が前へ出てくる。
「ど、ドラゴンが……。ドラゴンが襲ってきました!!」
「なんだと!? ど、どうして? い、いや、それよりも早く近くの冒険者ギルドに連絡を」
「す、すぐに準備します」
それを聞いて村人は慌てて走って行った。
「御使い様、聞いての通りにございます。もうまもなく、この村にはドラゴンが襲ってきます。急いでお逃げください」
村長が心配そうな表情を見せてくる。
「ねぇ、リル。ドラゴンって僕の爆発ポーションで簡単に倒せたやつだよね?」
「あぁ、私は死ぬ思いをしたけどな」
「それなら今回も同じように倒してあげたらどうかな?」
「わ、私はもうやらないぞ! ば、爆発だと私が巻き込まれる!!」
「そっか……。それなら相手を凍らせるのはどうかな? これを使って」
レフィは氷結ポーションを作り出す。
「これをぶつけると一瞬で凍り付くよ」
「なるほどな。それなら私が巻き込まれることもないな。よし、それで行くか!」
リルの同意を得られたことでレフィは村長に笑みを向ける。
「村長さん、ドラゴン退治なら僕たちに任せてください」
「で、でも、御使い様の身に何かありましたら……」
「大丈夫ですよ、ドラゴンなら昔倒したことがありますから……」
「そ、そうですか……」
村長は心配そうにレフィを見る。
「では、少し行ってきますね」
レフィ達はドラゴンが出たという方向へ向かって歩いて行った。
◇
村を出てすぐにそのドラゴンがいる場所がわかる。
「すごい地響きだね……」
「意外と大きいドラゴンなんだろうな。レフィ、手加減するなよ」
「うん、わかってるよ」
大きくなったリルに乗るとレフィ達は地響きの方へと向かっていく。
するとそこにいたのは首が八つあるドラゴンだった。
体つきは普通のドラゴンと遜色ないのだが、やはり大きな違いはその数多くの頭だ。それぞれに意思があるようで周りをそれぞれが警戒して見渡しているようだった。
しかも、紫の煙のような息を吐いている。
「あの息、死の香りがするね。多分、昨日のやつといっしょだよ」
それじゃあこのあたりに疫病が広がっていたのもこのドラゴンが原因なのか……。
「瘴気が消えていると思ってきたが、どうやら本当に消えているとはな」
ドラゴンが喋りかけてくる。
「あの空気なら僕が浄化しました」
「嘘をつくな。いや、どちらでもいいな。どうせお前は死ぬ。村も滅ぼす。それだけのことだからな」
ゆっくり近づいてくるドラゴン。
「どうする? もっと近づくか?」
「大丈夫、あれだけ大きかったら当てられるよ」
レフィは思いっきりポーションを放り投げる。
「なんだ、この瓶は」
ドラゴンは自身の爪でポーションの瓶を弾く。
その瞬間に瓶が割れ、ドラゴンが凍りつく。
まさか自分がやられると思っていないドラゴンは尊大な態度をとりながら凍りついていた。
「ねぇ、このドラゴンは食べれるのかな?」
以前ドラゴンは美味しいと聞いていたので、リルに尋ねてみる。
「流石に瘴気を吐いていたドラゴンだろう? 毒があると思うぞ」
「そっか、残念だね」
「でも、このまま放っておいていいのか? もし氷が溶けるようなことがあれば危ないんじゃないか?」
「大丈夫だよ、これは絶対に溶けないから」
こんこんと軽く叩いてみせる。
すると氷にヒビが入り、そして、ドラゴンごと粉々に砕け去ってしまった。
「絶対に溶けないんじゃなかったのか?」
粉々になったドラゴンを見ながらリルは呆れた口調で言ってくる。
「うん、溶けなかったけど、割れやすいみたいだね……」
◇
一応ドラゴンを退治した証しとして、体の一部の氷を持って村まで帰ってくる。
「ほ、本当に帰ってこられた! と、どうでしたか、ドラゴンは?」
村長が怯えながら聞いてくるので、レフィは持って帰ってきたドラゴンの一部をみせる。
「しっかり倒してきましたよ。もう大丈夫です」
レフィが笑みを向けると村の人から歓声があがる。
「ありがとうございます。本当にありがとうございます……」
村長から何度もお礼を言われるとレフィ自身も嬉しくなってくる。
「あっ、あとこのドラゴンが疫病の原因だったみたいですから、そちらももう心配しなくていいですよ」
そして、全て解決し終えたので、今度こそ村を出発しようとすると、全員に見送られてしまう。
「御使い様、本当にありがとうございました」
「もし何かありましたら力になりますので!」
そんな声に見送られながら、レフィたちは村を出て行った。




