32.御使い様現る!?
ようやく村の宿を見つけたレフィたちは部屋でゆっくりしていた。
するとルルカがリルに対して指を突きつける。
「リル、一緒にお風呂に入りましょう」
「嫌だ!!」
速攻で拒否をしてくるリル。
確かに今まですんなりとリルがお風呂に入っている姿は見たことがない。
「駄目よ! あなた、すごく汚れているもの」
「そんなものはレフィのポーションでどうにでもなる!!」
「だからレフィからポーションをもらっているからお風呂に入るの!」
二人で言い争っている最中、レフィは平和だな……、と宿から窓の外を眺めていた。
すると何やら村の人が慌てた様子が目に入った。
「そっちにいたか?」
「いや、こっちにはいなかった。くそっ、どこに行ったんだ、御使い様は」
どうやら偉い人? を探しているようだった。
(行方不明なのかな? 僕たちも探した方がいいのかな?)
少し迷っているとルルカから声をかけられる。
「ねぇ、レフィはどう思う?」
「えっと、……なにが?」
「だから、リルがお風呂に入ることよ。ルルカは絶対に入った方がいいと思うんだけど……」
「レフィならわかってくれるよな? 私には必要ないくらい……」
「あー、うん。入っておいで」
まだ言い争っていたんだ……。
リルももう覚悟を決めたらいいのに……。
「れ、レフィのうらぎりものー!!」
「いってらっしゃーい」
嫌そうに引きずられていくリルに手を振って見送るとレフィは再び窓の外を見る。
すでに村の人はいなくなっており、手伝いそびれたなとレフィは苦笑を浮かべた。
◇
しばらく待っていると満足そうにしたルルカとぐったり疲れた表情のリルが戻ってくる。
「ただいまー!」
「おかえり、お風呂はどうだった?」
「うん、すっごく大きくてね。とっても気持ちよかったよ。疲れもすごくとれるの」
「その割にはなんだかリルは疲れているみたいだね」
「だって、大きくなって逃げようとしたんだもん。無理矢理体を洗っちゃった」
ルルカは舌を出してはにかんでいた。
「こ、これでもう二度と入らなくていいんだな!?」
リルは体を震わせながら言ってくるけど、レフィは首を横に振っていた。
「毎日入らないと駄目だよ。これからはルルカに任せてもいいかな?」
「うん、頑張るね」
「ちょっと待て、せめてレフィにしてくれ……」
リルが頭を下げて必死に頼み込んでくる。
「わかったよ。それじゃあ明日からは僕と入ろうか」
するとリルが目を潤ませながらレフィに抱きついてくる。
「助かった。もうこれであれほど怖い目に遭わなくてすむ。本当にありがとう……」
何度もお礼を言ってくるリル。一体ルルカはどんな洗い方をしたんだろう……。少しだけ気になったが、聞くのはやめておいた。
◇
翌朝、村から出て行こうとしたレフィたちの前になぜか村人たちが立ち並んでいた。
「御使い様! どうか、我々のお願いを聞いてくださらないだろうか?」
もしかして、後ろに誰かいるのかなとレフィは後ろを振り向く。
しかし、そこには誰の姿もなかった。
首をかしげるレフィに対して、昨日の老人が前に出てくる。
「御使い様。あなたが私にしてくださった神の所業を村人たちに教えたところ、ぜひともお願いしたいことがあるということなので、こうして待たせていただきました。お話だけでも聞いていただけませんか?」
つまりこれって……。
「依頼だ!! うん、依頼だよ! もちろんお話を聞かせていただきます」
ようやく初めて浄化以外の依頼が来そうなので、レフィは嬉しくなり、思わず老人の手を掴んで上下に動かしていた。
少し呼び方が気になるけど……。
ただ、それをじっと村人たちに見られていることに気づいて、パッと手を離すと、一度咳払いをする。
「それで、どんなことを僕に頼みたいのですか?」
慌てて依頼を聞く姿勢を取ると村人たちから歓声が上がる。
「おぉ、御使い様がお話を聞いて下さるそうだ!」
「家内を呼んでくる」
妙にざわつき出す。
そこへ老人が声を張り上げる。
「静かにせよ! 御使い様の御前だぞ!」
その瞬間にざわついていた場がピタッと静まる。
「では御使い様、願いを叶える人物を選んでくださいませ」
えっ、この中で一人しか選べないの?
村人の全員が期待のこもった目を向けてくる。
うっ、こんな中から選べないよ……。
レフィはそのまま固まってしまう。
すると代わりにリルが動いてくれる。
「一人しか選べないならこいつでいいだろ」
一番近くにいた少年をあっさり選ぶリル。
すると他の村人からやはり歓声が上がる。
「あの子が御使い様に選んでもらった子ね」
「羨ましいなぁ……」
色んなところから様々な声が上がる。
「それで依頼内容はなにかな?」
せっかくリルが決めてくれたんだからとレフィはそれに乗っかるように話を進める。
「うん、実はお母さんが病気なんだ。回復魔法使いの人も『もう、延命することしかできない』と言ってた病気なんだよ。だから、その病気を治して欲しいんだ」
病気を治せばいいんだね。それならこの病気治療のポーションで……。
そのポーションを少年に渡す。
「これで治るよ」
すると少年は目に涙を浮かべ、嬉しそうに大きくお辞儀をした後、走り去っていった。
そして、数分後、少年が改めて戻ってくる。
「治った。もう絶対に治らないと思っていたのに治った……。本当にありがとうございます。これは大したものではありませんが、もらってください」
少年が取り出したのは気持ちばかりのお金だった。
おそらく無理して集めていたのだろう。そんなものを受け取ってもいいのだろうか?
迷った結果、レフィは差し出されたお金を一枚だけ抜き取る。
「今はこれだけでいいよ。後の分は生活に余裕ができた時にね」
「……あ、ありがとうございます! このご恩は一生忘れません!」
再び少年が頭を下げてくるので、少し居づらくなってきて、レフィは鼻頭をかいていた。




